この記事はこんな方におすすめ
- 「内航船員の給料って実際いくらなの?」と気になっている方
- 「船乗りは稼げる」と聞いたけど本当か確かめたい方
- 船種や役職で給料がどれくらい変わるか知りたい方
- 面接で給料について何を確認すべきか分からない方
結論:内航船員の給料は「船種×役職×会社規模」で決まる





筆者は無資格の未経験から内航船員になり、3社を渡り歩いて5年になります。最初の手取りは20万台後半。そこから免状を取り、転職を重ねて今は手取り40万ほどです。
この記事では、掲示板に寄せられた500件超の現役・元船員の声と海のハローワーク掲載求人1,662件の独自分析、そして筆者の3社経験をもとに、内航船員の給料事情を解説します。統計データではなく「現場のリアルな数字」と「実際の求人票の数字」の両面で構成しているので、他のサイトでは見えない情報が詰まっています。
【一覧表】船種×役職の給料マトリクス
内航船員の給料は、船種と役職の組み合わせでおおよそのレンジが決まります。以下の表は、掲示板500件超の書き込みと筆者の経験をもとに作成した目安です。
■ 手取り月額の目安(万円)──現場の声ベース
| 船種 | 未経験部員 | 6級職員 | チョッサー/機関長 | 船長 |
|---|---|---|---|---|
| 大型タンカー(白油) | 25〜30 | 30〜38 | 38〜45 | 45〜55 |
| ケミカルタンカー | 25〜30 | 33〜43 | 40〜48 | 45〜55 |
| 499カーゴ(鋼材・バラ積み) | 22〜28 | 28〜35 | 35〜45 | 40〜50 |
| 749以上カーゴ | 22〜27 | 27〜33 | 33〜42 | 42〜58 |
| 199小型船 | — | 30〜38 | 38〜45 | — |
| セメント船 | 22〜28 | 28〜33 | 33〜40 | 38〜48 |
| ガス船(LPG等) | 25〜30 | 30〜35 | 35〜43 | 42〜52 |
| RORO・コンテナ | 22〜27 | 27〜33 | 33〜40 | 40〜50 |
| フェリー(長距離) | 20〜25 | 25〜32 | 32〜45 | 50〜70+ |
| タグボート(港湾) | — | 30〜40 | 40〜55 | 55〜75+ |
| バンカー船・平水カーゴ | — | 28〜35 | 35〜42 | — |
| 官船(取締・調査等) | 20〜25 | 28〜35 | 35〜42 | 40〜50 |
この表の読み方
- 金額は手取り(税金・社会保険料控除後)です。額面ではありません
- 同じ船種でも会社によって10万円以上の差が出ます。上記はあくまでレンジです
- データの根拠は5ch掲示板500件超の給料に関する書き込み+筆者の3社経験です
- 199小型船は基本的に免状保有者のみの乗船です。未経験部員の欄は「—」としています
- タグボートは海員学校の新卒求人で人気が高く、外部からの転職は難易度が高めです
- バンカー船・平水カーゴは東京湾など特定港湾に限られ、求人数自体が少なめです
■ 求人票1,662件のデータで検証する
上の表は「現場の声」をもとにした目安です。では、実際の求人票にはどんな数字が載っているのか。海のハローワークに掲載されている求人1,662件(2026年3月時点)を独自に集計した結果が以下です。
| 船種 | 部員 | 6級職員 | チョッサー/機関長 | 船長 | 求人数 |
|---|---|---|---|---|---|
| タンカー | 29万(61件) | 35万(90件) | 43万(84件) | 50万(29件) | 264件 |
| ケミカルタンカー | 30万(5件) | 42万(20件) | 45万(29件) | 53万(9件) | 63件 |
| カーゴ | 25万(42件) | 36万(86件) | 42万(155件) | 45万(48件) | 331件 |
| ガス船(LPG等) | 28万(3件) | 39万(27件) | 45万(35件) | 52万(9件) | 74件 |
| セメント船 | 28万(13件) | 33万(23件) | 42万(22件) | 48万(6件) | 64件 |
| ガット船 | 31万(9件) | 40万(25件) | 40万(24件) | 40万(5件) | 63件 |
| RORO・コンテナ | 29万(16件) | 35万(25件) | 41万(19件) | 42万(6件) | 66件 |
| フェリー | 23万(18件) | 30万(13件) | 35万(5件) | — | 37件 |
| ハーバータグ | 30万(3件) | 26万(8件) | 30万(17件) | 35万(3件) | 31件 |
| 曳船 | 28万(19件) | 30万(30件) | 35万(30件) | 30万(16件) | 95件 |
| バンカー船 | 25万(5件) | 25万(5件) | 28万(11件) | 32万(4件) | 25件 |
※金額は各カテゴリの中央値。海のハローワーク掲載求人1,662件(2026年3月18日時点)を独自集計
2つの表の読み比べ方
未経験部員の給料は、船種と航海数でも差がつきます。






































































































いくつかの船種を補足します。
199小型船は穴場です。定員が少ない分、職員一人あたりの給料が高くなりやすい。































































































































































































































































ただし199は即戦力が前提です。一人ワッチ・自炊が基本なので、未経験者がいきなり乗る船ではありません。船主船長の2000万はあくまで「経営者+船長」を兼ねた特殊ケースですが、199は職員クラスで45〜52万という声が複数あり、穴場という評判は数字で裏付けられています。
タグボートは内航トップクラスの高収入ですが、採用枠が限られています。

























































































































































毎日帰れる・港に近い生活ができるのもタグの魅力ですが、時間外100時間超えもあり得ます。求人票では手取り30万前後に見えても、実際の年収はそこから大きく上振れするのがタグボートの特徴です。楽して高給というわけではありません。
長距離フェリーは船長クラスで飛び抜けるのが特徴です。



















































一方で若手のうちは低め。求人データでも部員の中央値は23万と内航の中で最も低い水準です。役職が上がるまでの「下積み期間」が長い船種です。
RORO船はラッシング手当の有無が大きな分かれ目です。筆者調べでは、中小のROROで一航士がラッシング手当込み月46万。ラッシング手当だけで月20万以上、部員でも手取り50万を超える会社もあります。一方、大手のROROはステベ(港湾作業員)と船員の作業が規約上分かれていてラッシング手当がつかない場合があります。求人票の数字だけでは分からないポイントです。
セメント船は意外と高いのをご存じでしょうか。筆者調べでは、新卒で手取り33万、一航士55万、船長68万という会社もあります。ボーナスは基本給2ヶ月×年2回、退職金あり。求人データの中央値(部員28万、船長48万)よりかなり上振れする会社が存在します。
なお、船種を変えると給料が変わるのは覚えておくべきポイントです。



















































タンカーからカーゴに移ると手取りが下がるケースは珍しくありません。逆に、カーゴからケミカルやガス船に移って上がることもある。転職時は「船種間の相場差」を意識してください。
東京湾のバンカー船や平水カーゴは「日帰り船」の穴場です。毎日帰れる代わりに連続休暇が取りにくいという特徴があります。






































































































タグボートほどの高収入ではありませんが、陸と同じ生活リズムで働けるのは大きなメリットです。
司厨は海技免状が不要で、陸上の調理経験だけで応募できる唯一のポジションです。求人データ72件を分析した結果がこちらです。
■ 司厨長・司厨員の給料データ
| 職名 | 求人数 | 手取り中央値 | 年収推計 | 手取りレンジ |
|---|---|---|---|---|
| 司厨長 | 46件 | 30万円 | 456万円 | 20〜40万円 |
| 司厨員・司厨手 | 26件 | 25万円 | 390万円 | 18〜45万円 |
※海のハローワーク掲載の司厨求人72件(2026年3月18日時点)を独自集計。年収推計は手取り×12+手取り×賞与月数で概算
全求人の手取り中央値35万円に対して司厨は30万円と5万円低い水準ですが、これは免状なし・部員扱いという前提での数字です。陸上の飲食業の平均年収(約370万円)と比較すると、司厨長の年収推計456万円はむしろ高い水準にあります。
求人72件のうち海上実歴不要が44件(61%)。応募条件が「調理経験あり」だけという求人も珍しくありません。船種別ではタンカーが29件で最多です。大型船ほど司厨の乗組みが法令で義務づけられるため、タンカーやLPG船に求人が集中します。
賞与の中央値は2.75ヶ月ですが、組合船の大手では4〜7ヶ月の支給実績があり、年収600万超えの求人も存在します。上位5件の年収推計は550〜730万円。航海士・機関士の中堅クラスに匹敵する水準です。
一方で注意点もあります。求人データ全1,662件のうち、司厨がいない船は53%です。つまり半分以上の船では乗組員が自炊で食事を賄っています。「司厨として乗る」側ではなく「司厨がいない船に乗る」側になった場合、飯当番のストレスは覚悟しておいてください。
司厨員の仕事内容・きつい点・食事事情の詳細はこちらで解説しています。
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司厨員の仕事内容・給料・きついこと|船の食事事情まるわかり
司厨員は船で3食を作る仕事です。1日の流れ、きついこと、給料相場、食材の仕入れ方から、司厨がいない船の自炊事情・時化の日の食事術まで、元司厨の現役船員が解説します。
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各船種の特徴や仕事内容の詳細は、以下の記事で解説しています。
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内航船の船種別きつさランキング|ガット船・RORO船・タンカー・セメント船のリアル
フェリー・タンカー・カーゴ・コンテナ・ガット・RORO・タグボートなど18船種の働き方を比較。乗船サイクル、荷役の負担、仮バースの有無、面接で聞くべき8項目まで、3社経験の現役船員がまとめました。
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「手取り」のワナ──船員の給料がややこしい理由
内航船員の給料で最もトラブルになるのが「手取り」の定義が会社によってバラバラという問題です。求人票に「手取り40万」と書いてあっても、実態は大きく異なることがあります。
乗船中と休暇中で給料が変わる
内航船員の給料は「基本給+各種手当」で構成されています。乗船手当・航海日当・時間外手当などは乗船中のみ支給されるため、休暇中は基本給だけになる会社が大半です。
たとえば「手取り40万」の内訳が基本給20万+手当20万だった場合、休暇中の手取りは20万前後まで下がります。求人票の「手取り40万」は乗船中の金額であって、年間の平均月収ではないのです。






































































































休暇中の基本給がゼロという会社は少数派ですが、実在します。面接で「休暇中の給料はいくらですか」と聞くのは必須です。
組合船の「標令給」と未組織船の違い
組合船(全日本海員組合に加入している会社)の給料は、標令給+職務給の二層構造が基本です。



















































一方、未組織船(組合に入っていない会社)は給料の決め方が会社ごとにバラバラです。基本給に手当を含めていたり、残業代を最初から固定していたり。「手取り35万」の中身が全然違うということが普通に起きます。



















































求人データでも、労働協約(組合)ありの求人は全体の27%(449件)にとどまります。残りの73%(1,213件)は未組織船です。未組織船のほうが求人票上の手取りは高めですが(未組織36.9万 vs 組合33.0万)、これは残業代込みで見た目の数字を盛っているケースが含まれるためです。長期で見ると組合船が逆転することが多い点は、後ほど詳しく解説します。
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組合船と未組織船の違い|給料・休暇・転職を現役船員が比較
組合船と未組織船では給料の決まり方、休暇日数、退職金が根本的に違います。年齢別のおすすめ、額面だけでは比較できない理由、面接で確認すべき7項目まで、両方を経験した船員の声とともに解説します。
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ボーナスの「基本給」定義トラップ
「ボーナスは基本給の2ヶ月分」と言われても、その「基本給」に何が含まれるかで実額は大きく変わります。基本給に手当を含めている会社なら額は大きくなりますが、純粋な基本給だけならボーナスが思ったより少ないということが起こります。
「ボーナス○ヶ月」の数字だけでなく、「基本給の定義は何ですか」まで確認しないと比較になりません。
旅費と生活費──額面に表れないお金
上下船の旅費を全額支給しない会社は要注意です。旅費は会社のホワイト度を測るリトマス紙と言っていい。一方、乗船中は光熱費ゼロ・家賃ゼロなので、陸の生活より確実に貯まります。額面以上に「貯まる」のが船員の給料の隠れた特徴です。
求人票の「手取り○万」を年収に換算する
求人票に書いてある「手取り○万」は、乗船中の月額です。これをそのまま12倍しても年収にはなりません。内航船員の年収を正しく比較するには、以下の式で計算してください。
年間実収入の計算式
たとえば、以下の2社を比較してみます。
| 項目 | X社 | Y社 |
|---|---|---|
| 乗船中の手取り | 40万円 | 35万円 |
| 休暇中の手取り | 20万円 | 35万円 |
| 乗船/休暇サイクル | 3ヶ月乗船/1ヶ月休暇 | 2ヶ月乗船/1ヶ月休暇 |
| ボーナス | 基本給1ヶ月×年2回(計40万) | 基本給2ヶ月×年2回(計140万) |
| 旅費 | 一部自己負担(年6万) | 全額支給 |
X社の年間実収入:40万×9ヶ月 + 20万×3ヶ月 + 40万 − 6万 = 454万円
Y社の年間実収入:35万×8ヶ月 + 35万×4ヶ月 + 140万 = 560万円
「乗船中の手取り」はX社の方が5万高いのに、年収ではY社が100万以上上回ります。求人票の月収だけで決めると外しやすいのは、こういう構造があるからです。最低でも「乗船中の手取り」「休暇中の手取り」「年間ボーナス実績」の3点セットで年収を自分で計算するクセをつけてください。
会社の見分け方を詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
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乗ってはいけない船会社の見分け方|求人票で分かるブラックサインと面接チェックリスト
旅費を全額出さない、手帳を預けさせる、乗船延長が常態化──ブラック船会社に共通する11の特徴と見分け方を、3社経験の現役船員がチェックリスト形式でまとめました。求人の落とし穴と自衛策も解説します。
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ボーナス・退職金の実態
ボーナスは会社間の格差が最も大きい項目です。求人データでは賞与年2回の求人が1,325件(82%)で圧倒的多数。賞与なしは37件(2.3%)のみでした。ただし「年2回」でも、金額は10万〜100万超まで大きく開きます。


















































































































































































































































































































ボーナスの目安として「月給×14ヶ月=年収」ならまずまず優良、「月給×13ヶ月」が中央値のイメージです。求人票に「賞与あり」とだけ書いてある場合は、昨年の支給実績(金額)を面接で聞くのが鉄則です。
組合船は景気に左右されにくいのが強みです。



















































組合船の大手では、退職金も手厚い場合があります。



















































別の組合船員からは、さらに具体的な構造が語られています。






































































































組合船は年間昇給が6000〜8000円ずつ積み上がるため、長くいるほど差が開きます。一方で免状なしの部員でも勤続年数が長いと、中途入社の職員より年収が高くなるケースもあります。
ここで重要なのが、「免状を取って転職で上げる」か「1社で長期勤続して積み上げる」かという選択です。掲示板でもこの二択は意見が割れます。

























































































































































転職で短期的に手取りを上げるか、1社に残って退職金3000万を狙うか。これは船員のキャリア戦略の最大の分かれ道です。正解は一つではありませんが、少なくとも「自分がどちらのルートにいるのか」を意識しておく必要があります。
ただし組合船は「若いうちの給料が安い」というデメリットもあります。30歳以上で中途入社すると標令給が低いままスタートするため、最初の数年は未組織船より手取りが低くなるケースもあります。
免状と給料の関係
内航船員の給料を上げる最短ルートは、海技免状を取ることです。免状なしの部員と、免状を持った職員では年収に100万単位の差がつきます。






































































































この差は求人データからも明確に読み取れます。保有免状ごとに「応募できる求人数」と「給与の中央値」を集計した結果が以下です。
■ 保有免状別の応募可能求人数と給与
| 保有免状 | 応募可能件数 | 全体に占める割合 | 手取り中央値 |
|---|---|---|---|
| 免状なし | 359件 | 21.6% | 28.0万円 |
| 6級 | 804件 | 48.4% | 32.0万円 |
| 5級 | 1,262件 | 75.9% | 35.0万円 |
| 4級 | 1,520件 | 91.5% | 35.0万円 |
※海のハローワーク掲載求人1,662件(2026年3月18日時点)を独自集計。応募可能件数は累積(上位免状は下位免状の求人にも応募可能)
免状なしだと応募できるのは全体の2割、中央値は28万円。6級を取ると応募可能な求人が倍増し、中央値も4万円上がります。免状を1つ取るだけで「選べる船」と「もらえる金額」の両方が劇的に変わるのが内航の世界です。
しかも6級でも船種次第で手取りはさらに上がります。



















































ケミカルタンカーのような危険物を扱う船種は、6級でも手取り40万超えが普通にあり得ます。中央値32万はあくまで全体の真ん中であって、船種選びで大きく上振れする余地があるということです。
免状を取れば選べる船も増え、給料交渉でも強気に出られるようになります。筆者自身、6級を取って職員に上がったタイミングで手取りが月10万近く上がりました。取得にかかった費用は、受験料+登録免許税で約1万円、講習費(レーダー観測者・消火・救命)で約10万円、交通費・宿泊費で約5万円、テキスト代は中古で1,500円。合計で約16万円、すべて自腹でした。
月10万アップなら2ヶ月でペイする計算ですし、求人データの中央値ベース(月4万差)で見ても4ヶ月で回収できます。取ってすぐ「元が取れたな」という感覚がありました。16万円の投資で年収が数十万変わるのですから、内航で最もコスパの良い自己投資です。
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6級海技士は意味ない?求人1,662件分析でわかった本当の価値
6級海技士の合格率は100%の年もあり、海技士試験で最もやさしい資格です。独学の費用・養成講習との比較・求人データから見た市場価値・航海と機関の判断基準まで、現役船員がデータ付きで解説します。
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ただし、免状がなくても部員のまま年収を上げるルートが一つだけあります。組合船でボースン(甲板長)まで上がる道です。



















































800万か1200万かは議論が分かれますが、組合船の甲板長なら免状なしでも700万以上は現実的です。ただしこれは「同じ会社に20年以上勤める」前提の話であり、ショートカットはできません。
内航で年収1000万は可能か?
結論からいえば、可能です。ただし条件があります。






































































































年収1000万に到達しやすいルートは、大きく3つです。
① 大型組合船の船長──749GT以上の組合船で船長まで上がれば800〜1000万が見える。ただし到達までに15〜20年かかる。
② タグボートの船長──港湾タグ大手なら40歳前後で1000万超えも。ただし採用枠が少なく入社自体が難関。
③ 長距離フェリーの船長──1500万超えの報告もあるが、船長になるまでの競争が激しい。
現実的に多いのは「10年で700〜800万」のラインです。未組織の中小でも700万は十分射程圏内。「10年以内に800万」を目標にするなら、免状取得と転職のタイミングが鍵になります。
注意点として、6級だけで月50万を期待するのは非現実的です。






































































































免状のグレードと経験年数に見合わない希望額を出すと、そもそも相手にしてもらえません。相場を正しく知ることが大事です。
免状取得の全体像はこちらで解説しています。
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3級と4級で迷っている方はこちら。
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1年目〜10年目の年収シミュレーション
未経験から内航船員になった場合、おおよそ以下のようなカーブで年収が上がっていきます。
■ 未経験スタートの年収目安
| 年数 | ステータス | 年収目安 |
|---|---|---|
| 1年目 | 無資格・甲板員/機関員 | 350〜450万 |
| 2〜3年目 | 6級取得・当直部員 or 職員 | 450〜550万 |
| 4〜5年目 | 4級取得・二航士/二機士 | 500〜650万 |
| 6〜8年目 | 一航士/機関長 | 600〜750万 |
| 9〜10年目 | 船長 or 好条件の会社へ転職 | 700〜850万 |

























































































































































一方で、4級を取っても会社選びを間違えると伸び悩むケースもあります。



















































4級機関長で手取り39万・ボーナス年1ヶ月分は、相場から見るとかなり安い水準です。求人データでも機関長の中央値は43万。この差は「会社選びの差」であり、免状を取ることと良い会社を選ぶことはセットです。






































































































23歳で一航士43万という声がある一方、40代の司厨長で年収500〜550万という声もあります。職種による差も大きいですが、司厨長は「未経験・中年からでも入れる」という強みがあり、年収500万は陸の同条件と比較しても悪くない水準です。
年収カーブは免状取得の速度に大きく左右されます。「尾道卒業→6級取得→4級筆記先行→実免取得→転職」のルートが最も効率的で、10年で800万は現実的な目標です。
ただしこれは「免状を取り続ける前提」の話です。免状なしのままだと、何年経っても年収400万台から抜け出せません。
なお、給料と休暇はトレードオフです。手取りが高い船は休暇が少ない傾向があるので、給料だけで会社を選ぶと後悔します。比較するときは「年収÷年間拘束日数」で日給換算するのがおすすめです。
たとえば、年収600万で年間休暇90日(拘束275日)の会社と、年収500万で年間休暇120日(拘束245日)の会社を比べると、日給はそれぞれ21,818円と20,408円。数字上は600万の会社が上ですが、差は1日あたり1,400円程度です。「30日多く拘束されて100万多くもらう」のが割に合うかどうかは、人それぞれです。この計算をしておくと、「高給だけど休みが少ない会社」と「少し安いけど休みが多い会社」を冷静に比べられます。
船上での1日の流れを知りたい方はこちら。
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船乗りの1日の過ごし方|航海中・停泊中・船種別に現役船員が解説
船乗りの1日は「航海中」と「停泊中」でまるで違います。ワッチの仕組み、甲板部・機関部・司厨の動き方、タンカーやフェリーなど船種別の忙しさの差まで、現役船員が解説します。
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「船員の給料は安い」は本当か?
「船乗りは稼げる」と言う人もいれば、「割に合わない」と言う人もいます。どちらが正しいのでしょうか。































































































































































































































































厳しい意見ですが、一面の真実です。額面だけを陸と比較すれば「高い」。でも拘束時間や家族との時間を考慮すると「割に合わない」と感じる人はいます。「初任給が高い=生涯稼げる」ではなく、昇給カーブが緩やかな未組織船では陸の同年代に中長期で追い抜かれることもあります。
ただし、免状を取って職員に上がれば話は変わります。時給換算でも陸の平均を上回り、光熱費ゼロ・食費補助の貯蓄力も加わる。「安い」と感じるかどうかは、免状を取る前と取った後で大きく変わるのが内航の世界です。
「やめとけ」と言われる理由を整理した記事はこちら。
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休暇のリアルはこちらで解説しています。
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「3ヶ月乗船1ヶ月休暇」は額面通りにならないケースが多いです。船種別の乗船/休暇比率、乗船延長が起きる構造的な理由、有給買取の実態、面接で確認すべき5項目まで解説します。
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面接で確認すべき給料関連の項目
ここまで読んでもらえれば分かるとおり、内航船員の給料は「聞かないと分からない」ことだらけです。ただし、面接に進む前に求人票の段階でかなりの情報を読み取れます。
面接の前に──海のハローワーク求人票で見るべき7項目
海のハローワークの求人票には、労働協約の有無・給与規定・固定残業制・加入保険・休日数・乗下船サイクル・補足事項まで記載する欄があります。
求人票で最初に見るべき7項目
- ① 労働協約の有無:組合船か未組織船かの判断材料。組合ありなら昇給・ボーナスの最低ラインが協定で守られている
- ② 給与規定の有無:賃金ルールが整備されているかの目安。「なし」の場合は社長の裁量で決まるリスクがある
- ③ 固定残業制の記載:手取りに残業代が最初から含まれていないか。「固定残業○時間分含む」と書いてある場合、見かけの手取りは高くても実質時給は低い
- ④ 加入保険:雇用保険・厚生年金・船員保険がきちんとあるか。ここが欠けている会社は論外
- ⑤ 休日・有給休暇:年間の休みの見込み。記載が曖昧な会社は実態がもっと少ないことがある
- ⑥ 乗下船サイクル:「2ヶ月乗船/1ヶ月休暇」なのか「3ヶ月乗船」なのかで年間の拘束日数が大きく変わる
- ⑦ 補足事項:Wi-Fi・司厨の有無・資格取得補助・旅費支給・寮など、数字に出ない待遇。ここが空欄の会社と充実している会社では、年単位の満足度がまるで違う
これらの情報が薄い求人は、入社後に「聞いていた話と違う」になりやすいです。面接で聞く前に、まず求人票を条件表として読むクセをつけておくと外しにくくなります。
面接で確認すべき5項目
求人票で大枠をつかんだら、面接で具体的な数字を確認します。
面接で確認すべき5項目
- ① 手取りの内訳:基本給・乗船手当・時間外手当それぞれいくらか。「手取り○万」の内訳を聞く
- ② 休暇中の給料:乗船手当が外れた状態でいくら支給されるか。基本給のみかどうか
- ③ ボーナスの計算基準:「基本給の○ヶ月」の「基本給」に何が含まれるか。昨年の実績額
- ④ 旅費の支給範囲:全額か一部か。飛行機・新幹線指定席は使えるか
- ⑤ 昇給の仕組み:毎年昇給があるか。免状取得で手当が増えるか。役職手当の額
面接でそのまま使える質問例
「何を聞くか」は上の5項目のとおりですが、問題は「どう聞くか」です。聞き方次第で相手の反応はまったく変わります。以下はそのまま使える質問文です。
| 確認したいこと | 質問の例 |
|---|---|
| 手取りの内訳 | 「手取り○万円とのことですが、基本給と手当の内訳を教えていただけますか?」 |
| 休暇中の給料 | 「休暇中のお給料はどのくらいになりますか?」 |
| ボーナス実績 | 「賞与ありとのことですが、昨年の支給実績はどのくらいでしたか?」 |
| 旅費の範囲 | 「上下船の旅費は全額支給ですか?新幹線や飛行機の指定席は使えますか?」 |
| 昇給の仕組み | 「毎年の昇給はありますか?免状を取った場合の手当はどうなりますか?」 |
ポイントは「教えていただけますか?」という聞き方で具体的な数字を求めることです。「お給料はいいですか?」のような曖昧な聞き方だと、曖昧な答えしか返ってきません。数字で聞けば数字で返ってくる。逆に、数字で聞いて濁す会社は要注意です。
これらを面接で聞くのは失礼ではありません。むしろ、聞かれて答えられない会社・嫌な顔をする会社は避けた方が無難です。
なお、2026年5月施行の船員法改正により、求人票に虚偽の労働条件を記載することが法律で明確に禁止されます。これにより求人票の信頼性は今後上がることが期待されますが、法改正後も「聞いて確認する」姿勢は変わりません。
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まとめ
この記事のポイント
- 内航船員の給料は「船種×役職×会社規模」で決まる。同じ船乗りでも年収400万〜1000万超の幅がある
- 求人票の「手取り○万」は乗船中の金額。年収で比較するには「乗船中×月数+休暇中×月数+ボーナス−旅費」で計算する
- 求人データ1,662件の分析では、賞与年2回が82%と圧倒的多数。ただし金額は年20万〜年100万超まで差がある
- 海のハローワーク求人票は、労働協約・固定残業・乗下船サイクル・旅費の4項目を最優先で見る
- 免状なしで応募できる求人は全体の約2割。6級を取ると倍増し、手取り中央値も4万円上がる
- 6級の取得費用は約16万円。手取りアップで数ヶ月で回収でき、内航で最もコスパの良い自己投資
- 6級でもケミカル等の船種なら手取り43万の実例あり。船種選びで大きく上振れする
- 年収1000万は可能だが、大型組合船船長・タグ船長・長距離フェリー船長のいずれか。10年で700〜800万が現実ライン
- 「転職で短期的に上げる」か「1社で退職金3000万を狙う」かはキャリア戦略の最大の分かれ道
- 面接では「手取りの内訳」「休暇中の給料」「ボーナスの計算基準」「旅費」「昇給の仕組み」を必ず確認する
船員の給料は、知っているかどうかで得する金額が大きく変わる世界です。「手取り」の言葉に惑わされず、年収ベースで冷静に比較してください。
※この記事は筆者の3社勤務経験、掲示板500件超の給料に関する投稿、および海のハローワーク掲載求人1,662件(2026年3月時点)の独自分析をもとに構成しています。給料・待遇は会社・船種・時期・個人の経験により大きく異なります。就職・転職の際は最新の求人情報や、会社への直接の問い合わせで確認してください。
参考:5ch船乗りなんでも相談室シリーズ(2016〜2021年の投稿を集約)