この記事はこんな方におすすめ
- 「船員の給料って実際いくらなの?」と気になっている方
- 「船乗りは稼げる」と聞いたけど本当か確かめたい方
- 船種や役職で給料がどれくらい変わるか知りたい方
- 面接で給料について何を確認すべきか分からない方
結論:内航船員の給料は「船種×役職×会社規模」で決まる










筆者は無資格の未経験から内航船員になり、3社を渡り歩いて5年になります。最初の手取りは20万台後半。そこから免状を取り、転職を重ねて今は手取り40万ほどです。
この記事では、掲示板に寄せられた500件超の現役・元船員の声と海のハローワークネットの求人6,708件を2026年2〜10月に12回定点観測した独自データ、国土交通省の船員労働統計、そして筆者の3社経験をもとに、船員の給料事情を解説します。
単発の求人検索ではなく、2026年2月から10月まで求人データを継続して集計しているため、「今の内航船員求人で実際に提示されている手取り相場」に加えて、「求人票の給与がこの8ヶ月で動いたかどうか」まで見られるのがこの記事の特徴です。公的統計の平均値、現場のリアルな数字、実際の求人票の数字の3つを並べて構成しているので、他のサイトでは見えない情報が詰まっています。
船員の給料の平均・相場はいくら?【公的統計×求人6,708件】










「船員の給料」をひとことで言うと、内航の相場は月の手取り35万円前後、年収(額面)で550〜640万円です。ただし、この数字は「誰の給料か」で大きく変わります。公的統計と求人票、2つの数字を並べると、船員の給料の全体像がつかめます。
公的統計:内航船員の平均は月46.5万円+年間賞与81万円(額面)
国土交通省の「船員労働統計調査」(令和7年6月分)によると、内航の日本人船員の1人1か月あたりの平均報酬は、きまって支給する給与が465,434円、年間賞与が814,489円です。単純に年収換算すると約640万円、航海日当(20,784円)とその他の手当(48,811円)を足すと約720万円になります。
ただし、この平均は平均年齢46.3歳・平均経験年数19.9年のベテランを含めた数字です。前年の令和6年6月分は489,719円・年間賞与898,642円でしたから、1年で月額が約2.4万円(5.0%)下がっています。「船員不足で給料が上がっている」というイメージとは逆の動きです(調査対象の船が毎年入れ替わるので、単年の上下は参考程度に見てください)。
| 内航・日本人船員の平均 | 令和6年6月分 | 令和7年6月分 |
|---|---|---|
| きまって支給する給与(月額・額面) | 489,719円 | 465,434円 |
| 年間賞与その他特別に支払われた報酬 | 898,642円 | 814,489円 |
| 平均年齢/平均経験年数 | 46.8歳/21.4年 | 46.3歳/19.9年 |
※出典:国土交通省「船員労働統計調査」令和6年・令和7年6月分(内航・日本人船員)。金額は額面(税・社会保険料控除前)
求人票:手取り中央値35万円、2026年2〜10月の12回でほぼ不動
一方、海のハローワークネットに掲載された求人6,708件(2026年2月28日〜10月20日の12回定点観測、給与記載5,956件)を集計すると、求人票に書かれた手取り(下限)の中央値は35万円でした。4分の1の求人が30万円以下、4分の1が43万円以上で、30〜49万円台に全体の66%が収まります。この中央値は12回の観測すべてで35万〜36万円の範囲に収まり、ほとんど動いていません。
手取り35万円は額面にすると約44万円、賞与込みの年収(額面)では550〜600万円ほどです。公的統計の640〜720万円との差は、求人票が「入口の最低保証」で、統計が「経験20年のベテラン込みの実績」だからです。転職や就職で最初に提示される数字は求人票側、長く勤めた先にある数字は統計側と考えると、2つの数字の関係が分かります。
役職別の相場:船長45万円から甲板員26万円まで
| 職種 | 手取り中央値(下限) | 求人票の上限中央値 | 求人数 |
|---|---|---|---|
| 船長 | 45.0万円 | 52.2万円 | 651件 |
| 機関長 | 44.0万円 | 52.0万円 | 657件 |
| 一航士 | 42.0万円 | 50.0万円 | 636件 |
| 一機士 | 40.0万円 | 48.0万円 | 710件 |
| 二航士 | 39.0万円 | 45.0万円 | 557件 |
| 二機士 | 35.0万円 | 45.0万円 | 176件 |
| 航海士(級の指定なし) | 35.0万円 | 45.0万円 | 453件 |
| 機関士(級の指定なし) | 33.0万円 | 45.0万円 | 387件 |
| 甲板手 | 30.0万円 | 40.0万円 | 223件 |
| 司厨長 | 30.0万円 | 40.0万円 | 174件 |
| 機関員 | 27.0万円 | 35.0万円 | 294件 |
| 甲板員 | 26.0万円 | 35.0万円 | 566件 |
※手取り中央値は求人票の給与下限、上限中央値は上限が記載された求人の中央値。海のハローワークネット求人6,708件(2026年2〜10月・12回定点観測のユニーク求人、給与記載分)を独自集計
役職が1段上がるごとに2〜5万円ずつ上がる階段構造で、同じ役職なら航海部のほうが機関部より高めです(一航士42万円>一機士40万円、二航士39万円>二機士35万円)。免状なしの部員は甲板員26万円・機関員27万円が中央値で、海上経験不要の求人なら25万円、経験者向けなら30万円が相場です。船種ごとの違いは、次の一覧表で見ていきます。
【一覧表】船種×役職の給料マトリクス
内航船員の給料は、船種と役職の組み合わせでおおよそのレンジが決まります。以下の表は、掲示板500件超の書き込みと筆者の経験をもとに作成した目安です。
■ 手取り月額の目安(万円)──現場の声ベース
| 船種 | 未経験部員 | 6級職員 | チョッサー/機関長 | 船長 |
|---|---|---|---|---|
| 大型タンカー(白油) | 25〜30 | 30〜38 | 38〜45 | 45〜55 |
| ケミカルタンカー | 25〜30 | 33〜43 | 40〜48 | 45〜55 |
| 499カーゴ(鋼材・バラ積み) | 22〜28 | 28〜35 | 35〜45 | 40〜50 |
| 749以上カーゴ | 22〜27 | 27〜33 | 33〜42 | 42〜58 |
| 199小型船 | — | 30〜38 | 38〜45 | — |
| セメント船 | 22〜28 | 28〜33 | 33〜40 | 38〜48 |
| ガス船(LPG等) | 25〜30 | 30〜35 | 35〜43 | 42〜52 |
| RORO・コンテナ | 22〜27 | 27〜33 | 33〜40 | 40〜50 |
| フェリー(長距離) | 20〜25 | 25〜32 | 32〜45 | 50〜70+ |
| タグボート(港湾) | — | 30〜40 | 40〜55 | 55〜75+ |
| バンカー船・平水カーゴ | — | 28〜35 | 35〜42 | — |
| 官船(取締・調査等) | 20〜25 | 28〜35 | 35〜42 | 40〜50 |
この表の読み方
- 金額は手取り(税金・社会保険料控除後)です。額面ではありません
- 同じ船種でも会社によって10万円以上の差が出ます。上記はあくまでレンジです
- データの根拠は5ch掲示板500件超の給料に関する書き込み+筆者の3社経験です
- 199小型船は基本的に免状保有者のみの乗船です。未経験部員の欄は「—」としています
- タグボートは海員学校の新卒求人で人気が高く、外部からの転職は難易度が高めです
- バンカー船・平水カーゴは東京湾など特定港湾に限られ、求人数自体が少なめです
■ 求人票データで検証する(2026年2〜10月・12回定点観測の中央値)
上の表は「現場の声」をもとにした目安です。では、実際の求人票にはどんな数字が載っているのか。海のハローワークネットに掲載された求人を2026年2月から10月まで12回にわたって独自に集計した結果が以下です。
| 船種 | 部員 | 二航士・二機士以下 | 一航士・一機士 | 船長・機関長 | 求人数 |
|---|---|---|---|---|---|
| タンカー | 29万(325件) | 35万(325件) | 43万(243件) | 50万(210件) | 1,290件 |
| ケミカルタンカー | 31万(29件) | 42万(82件) | 45万(97件) | 50万(82件) | 350件 |
| カーゴ(貨物船) | 26万(110件) | 38万(344件) | 40万(409件) | 45万(420件) | 1,479件 |
| LPG船 | 30万(12件) | 39万(62件) | 45万(84件) | 51万(63件) | 267件 |
| 液化ガスばら積船 | 32万(14件) | 40万(32件) | 45万(23件) | 50万(17件) | 100件 |
| セメント船 | 28万(51件) | 35万(113件) | 41万(53件) | 48万(44件) | 296件 |
| ガット船 | 30万(36件) | 40万(85件) | 40万(77件) | 45万(64件) | 292件 |
| 砂利運搬船 | 30万(12件) | 40万(35件) | 41万(21件) | 44万(20件) | 109件 |
| RORO船 | 29万(54件) | 35万(85件) | 36万(35件) | — | 219件 |
| コンテナ船 | — | 38万(17件) | 41万(17件) | 45万(21件) | 78件 |
| アスファルト船 | — | 35万(30件) | 43万(28件) | 50万(16件) | 90件 |
| フェリー | 23万(65件) | 29万(42件) | 30万(16件) | — | 172件 |
| 旅客船 | 22万(35件) | 26万(34件) | 25万(14件) | 24万(40件) | 163件 |
| 曳船 | 26万(30件) | 30万(57件) | 34万(64件) | 30万(38件) | 207件 |
| ハーバータグ | 30万(13件) | 25万(37件) | 28万(66件) | 34万(18件) | 140件 |
| バンカー船(給油船) | 22万(11件) | 27万(18件) | 30万(21件) | 30万(17件) | 82件 |
| 作業船 | 29万(49件) | 35万(37件) | — | 30万(19件) | 131件 |
※金額は求人票の手取り下限の中央値(万円)、カッコ内は件数。海のハローワークネット求人6,708件(2026年2月28日〜10月20日の12回定点観測、ユニーク求人)を独自集計。件数10未満のセルは「—」。2026年6月以降は給与欄が空欄の求人が約2割あり、空欄は集計から除いている
※「二航士・二機士以下」は二航士・二機士・三航士・三機士と、級の指定がない「航海士」「機関士」の求人。レンジ上限の平均で見た船種別の数字は各船種の記事で扱っています。
漁業取締船・巡視船・調査船などの官公庁系の船はこの表から外しています。公務員・公的機関の船員の給料は、求人326件を抽出して別記事で比較しました。
2つの表の読み比べ方
未経験部員の給料は、船種と航海数でも差がつきます。






































































































いくつかの船種を補足します。
199小型船は穴場です。定員が少ない分、職員一人あたりの給料が高くなりやすい。































































































































































































































































ただし199は即戦力が前提です。一人ワッチ・自炊が基本なので、未経験者がいきなり乗る船ではありません。船主船長の2000万はあくまで「経営者+船長」を兼ねた特殊ケースですが、199は職員クラスで45〜52万という声が複数あり、穴場という評判は数字で裏付けられています。
タグボートの給料|港湾タグは20代で900万、船長で1000万超の声も
タグボートは内航トップクラスの高収入ですが、採用枠が限られています。

























































































































































毎日帰れる・港に近い生活ができるのもタグの魅力ですが、時間外100時間超えもあり得ます。求人票では手取り30万前後に見えても、実際の年収はそこから大きく上振れするのがタグボートの特徴です。楽して高給というわけではありません。
長距離フェリーの給料
長距離フェリーは船長クラスで飛び抜けるのが特徴です。



















































一方で若手のうちは低め。求人データでも部員の中央値は23万と内航の中で最も低い水準です。役職が上がるまでの「下積み期間」が長い船種です。
RORO船はラッシング手当の有無が大きな分かれ目です。筆者調べでは、中小のROROで一航士がラッシング手当込み月46万。ラッシング手当だけで月20万以上、部員でも手取り50万を超える会社もあります。一方、大手のROROはステベ(港湾作業員)と船員の作業が規約上分かれていてラッシング手当がつかない場合があります。求人票の数字だけでは分からないポイントです。
セメント船の給料
セメント船は意外と高いのをご存じでしょうか。筆者調べでは、新卒で手取り33万、一航士55万、船長68万という会社もあります。ボーナスは基本給2ヶ月×年2回、退職金あり。求人データの中央値(部員28万、船長48万)よりかなり上振れする会社が存在します。
なお、船種を変えると給料が変わるのは覚えておくべきポイントです。



















































タンカーからカーゴに移ると手取りが下がるケースは珍しくありません。逆に、カーゴからケミカルやガス船に移って上がることもある。転職時は「船種間の相場差」を意識してください。
東京湾のバンカー船や平水カーゴは「日帰り船」の穴場です。毎日帰れる代わりに連続休暇が取りにくいという特徴があります。






































































































タグボートほどの高収入ではありませんが、陸と同じ生活リズムで働けるのは大きなメリットです。
司厨は海技免状が不要で、陸上の調理経験だけで応募できる唯一のポジションです。求人データ294件を分析した結果がこちらです。
■ 司厨長・司厨員の給料データ
| 職名 | 求人数 | 手取り中央値 | 年間手取り目安 | 手取りレンジ |
|---|---|---|---|---|
| 司厨長 | 187件 | 30万円 | 420万円 | 16〜41万円 |
| 司厨員・司厨手 | 107件 | 25万円 | 400万円 | 18〜42万円 |
※海のハローワークネット掲載の司厨求人294件(2026年2〜10月・12回定点観測のユニーク求人、給与記載269件)を独自集計。年間手取り目安は手取り月額×12+賞与(司厨長2ヶ月・司厨員4ヶ月、いずれも中央値)で概算。一般的な「年収(額面)」とは異なります
全求人の手取り中央値35万円に対して司厨長は30万円と5万円低い水準ですが、これは免状なし・部員扱いという前提での数字です。陸上の飲食業の平均年収(約370万円)と比較すると、司厨長の年間手取り目安420万円はむしろ高い水準にあります。
求人294件のうち海上実歴不要が176件(60%)。応募条件が「調理経験あり」だけという求人も珍しくありません。船種別ではタンカーが118件で最多、LPG船31件、漁業取締船23件と続きます。大型船ほど司厨の乗組みが法令で義務づけられるため、タンカーやLPG船に求人が集中します。
賞与は司厨長で中央値2ヶ月、司厨員で4ヶ月です。組合船の大手では4〜7ヶ月の支給実績があり、年間手取り600万超えの求人も存在します。上位5件の年間手取り目安は580〜720万円。航海士・機関士の中堅クラスに匹敵する水準です。
一方で注意点もあります。求人データの分析では、司厨がいない船は約半数(52%)です。つまり半分以上の船では乗組員が自炊で食事を賄っています。「司厨として乗る」側ではなく「司厨がいない船に乗る」側になった場合、飯当番のストレスは覚悟しておいてください。
司厨員の仕事内容・きつい点・食事事情の詳細はこちらで解説しています。
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司厨員の仕事内容・給料・きついこと|船の食事事情まるわかり
司厨員は船で3食を作る仕事です。1日の流れ、きついこと、給料相場、食材の仕入れ方から、司厨がいない船の自炊事情・時化の日の食事術まで、元司厨の現役船員が解説します。
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各船種の特徴や仕事内容の詳細は、以下の記事で解説しています。
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内航船の船種別きつさランキング|ガット船・RORO船・タンカー・セメント船のリアル
フェリー・タンカー・カーゴ・コンテナ・ガット・RORO・タグボートなど18船種の働き方を比較。乗船サイクル、荷役の負担、仮バースの有無、面接で聞くべき8項目まで、3社経験の現役船員がまとめました。
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「手取り」のワナ──船員の給料がややこしい理由
内航船員の給料で最もトラブルになるのが「手取り」の定義が会社によってバラバラという問題です。求人票に「手取り40万」と書いてあっても、実態は大きく異なることがあります。
乗船中と休暇中で給料が変わる
内航船員の給料は「基本給+各種手当」で構成されています。乗船手当・航海日当・時間外手当などは乗船中のみ支給されるため、休暇中は基本給だけになる会社が大半です。
たとえば「手取り40万」の内訳が基本給20万+手当20万だった場合、休暇中の手取りは20万前後まで下がります。求人票の「手取り40万」は乗船中の金額であって、年間の平均月収ではないのです。






































































































休暇中の基本給がゼロという会社は少数派ですが、実在します。面接で「休暇中の給料はいくらですか」と聞くのは必須です。
組合船の「標令給」と未組織船の違い
組合船(全日本海員組合に加入している会社)の給料は、標令給+職務給の二層構造が基本です。



















































一方、未組織船(組合に入っていない会社)は給料の決め方が会社ごとにバラバラです。基本給に手当を含めていたり、残業代を最初から固定していたり。「手取り35万」の中身が全然違うということが普通に起きます。



















































求人データでも、労働協約(組合)ありの求人は全体の約27.8%(1,862件)にとどまります。残りの約72.2%(4,842件)は未組織船です。
今回の集計では、労働協約ありの求人は手取り中央値31万円、労働協約なしの求人は38万円でした。一見すると未組織船のほうが月7万円高く見えます。
ところが、ボーナスまで含めると差は一気に縮みます。
| 区分 | 手取り中央値 | 賞与の目安 | 年間手取り目安 |
|---|---|---|---|
| 労働協約あり(公共系船種が多い) | 31万円 | 4.2ヶ月 | 約502万円 |
| 労働協約なし(商船系が多い) | 38万円 | 2ヶ月 | 約532万円 |
※年間手取り目安=手取り月額×12+賞与(手取り)で概算。額面年収とは異なる
月給は組合船のほうが7万円低く見えますが、組合船は賞与が手厚いため、年間で実際に手元へ残る金額の差は約30万円まで縮みます。
つまり、「今すぐ手取りを上げたいなら未組織船」「長期で安定して積み上げたいなら組合船」という見方ができます。
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組合船と未組織船の違い|給料・休暇・転職を現役船員が比較
組合船と未組織船では給料の決まり方、休暇日数、退職金が根本的に違います。年齢別のおすすめ、額面だけでは比較できない理由、面接で確認すべき7項目まで、両方を経験した船員の声とともに解説します。
続きを見る
ボーナスの「基本給」定義トラップ
「ボーナスは基本給の2ヶ月分」と言われても、その「基本給」に何が含まれるかで実額は大きく変わります。基本給に手当を含めている会社なら額は大きくなりますが、純粋な基本給だけならボーナスが思ったより少ないということが起こります。
「ボーナス○ヶ月」の数字だけでなく、「基本給の定義は何ですか」まで確認しないと比較になりません。
旅費と生活費──額面に表れないお金
上下船の旅費を全額支給しない会社は要注意です。旅費は会社のホワイト度を測るリトマス紙と言っていい。一方、乗船中は光熱費ゼロ・家賃ゼロなので、陸の生活より確実に貯まります。額面以上に「貯まる」のが船員の給料の隠れた特徴です。
休暇中の住まいを実家・賃貸・マンスリーのどれにするかで、貯まり方はさらに変わります。
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船乗りの一人暮らしはやめとけ?住居5パターンを現役船員が本音で比較
船乗りの一人暮らしは家賃の約8割が空振りになります。実家・格安賃貸・マンスリーなど5パターンの住まいを比較し、乗船前にやるべきカビ・漏水・防犯対策のチェックリストもまとめています。
求人票の「手取り○万」を年間収入に換算する
求人票に書いてある「手取り○万」は、乗船中の月額であることが多いです。これをそのまま12倍しても、年間で実際に手元へ残る金額にはなりません。
なお、世間で「年収」というときは、税金・社会保険料を引く前の額面を指すのが普通です。一方、求人票の「手取り」は控除後の金額。混同を避けるため、この記事では控除後ベースの計算を「年間手取り収入」と呼んで区別します。
求人票の手取りは、ざっくり額面の8割が目安です。たとえば手取り35万円なら額面は約44万円、いわゆる「年収(額面)」では550〜600万円ほどになります。この記事の後半に出てくる年収シミュレーションは、この額面ベースの数字です。「手取りの相場」と「額面の年収カーブ」は別物として読んでください。
年間で手元に残る金額(年間手取り収入)を正しく出すには、以下の式で計算します。
年間手取り収入の計算式
(ボーナスも手取りで見ると、ここからもう少し下がります)
たとえば、以下の2社を比較してみます。
| 項目 | X社 | Y社 |
|---|---|---|
| 乗船中の手取り | 40万円 | 35万円 |
| 休暇中の手取り | 20万円 | 35万円 |
| 乗船/休暇サイクル | 3ヶ月乗船/1ヶ月休暇 | 2ヶ月乗船/1ヶ月休暇 |
| ボーナス | 基本給1ヶ月×年2回(計40万) | 基本給2ヶ月×年2回(計140万) |
| 旅費 | 一部自己負担(年6万) | 全額支給 |
X社の年間手取り収入:40万×9ヶ月 + 20万×3ヶ月 + 40万 − 6万 = 454万円
Y社の年間手取り収入:35万×8ヶ月 + 35万×4ヶ月 + 140万 = 560万円
「乗船中の手取り」はX社の方が5万高いのに、年間手取り収入ではY社が100万以上上回ります。求人票の月収だけで決めると外しやすいのは、こういう構造があるからです。最低でも「乗船中の手取り」「休暇中の手取り」「年間ボーナス実績」の3点セットで計算するクセをつけてください。
会社の見分け方を詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
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乗ってはいけない船会社の見分け方|求人票で分かるブラックサインと面接チェックリスト
旅費を全額出さない、手帳を預けさせる、乗船延長が常態化──ブラック船会社に共通する11の特徴と見分け方を、3社経験の現役船員がチェックリスト形式でまとめました。求人の落とし穴と自衛策も解説します。
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ボーナス・退職金・年金の実態
ボーナスは会社間の格差が最も大きい項目です。求人データでは、賞与回数が記載されている求人のうち約95%が年2回でした(回数の記載があるのは全求人の約半数)。賞与なしは約2%にとどまります。
ただしこの95%は「賞与回数の記載がある求人」を分母にした数字です。求人票に賞与情報が詳しく書かれていない会社もあるため、「ほとんどの会社で必ず年2回もらえる」と読むのは危険です。大事なのは年2回かどうかではなく、実際にいくら出るか。同じ「年2回」でも、金額は年20万円程度の会社から100万円を超える会社まで大きく開きます。


















































































































































































































































































































ボーナスの目安として「月給×14ヶ月=年収」ならまずまず優良、「月給×13ヶ月」が中央値のイメージです。求人票に「賞与あり」とだけ書いてある場合は、昨年の支給実績(金額)を面接で聞くのが鉄則です。
組合船は景気に左右されにくいのが強みです。



















































組合船の大手では、退職金も手厚い場合があります。



















































別の組合船員からは、さらに具体的な構造が語られています。






































































































組合船は年間昇給が6000〜8000円ずつ積み上がるため、長くいるほど差が開きます。一方で免状なしの部員でも勤続年数が長いと、中途入社の職員より年収が高くなるケースもあります。
ここで重要なのが、「免状を取って転職で上げる」か「1社で長期勤続して積み上げる」かという選択です。掲示板でもこの二択は意見が割れます。

























































































































































転職で短期的に手取りを上げるか、1社に残って退職金3000万を狙うか。これは船員のキャリア戦略の最大の分かれ道です。正解は一つではありませんが、少なくとも「自分がどちらのルートにいるのか」を意識しておく必要があります。
ただし組合船は「若いうちの給料が安い」というデメリットもあります。30歳以上で中途入社すると標令給が低いままスタートするため、最初の数年は未組織船より手取りが低くなるケースもあります。
船員の年金はいくらもらえる?──「船員は年金が多い」は昔の話
船員も、陸上の会社員と同じ厚生年金に加入します。年金額を決めるのは加入期間と標準報酬月額(会社が届け出る月給の等級)で、船員だから多くなる仕組みはありません。
「船員は年金が早くもらえる」と言われるのは、旧船員保険の時代の特例が理由です。船員としての実際の加入期間が15年以上ある人は、特別支給の老齢厚生年金を一般より早く受け取れました。ただし対象は昭和33年4月2日〜昭和41年4月1日生まれ(61〜64歳から)までで、それより後の生まれは一般と同じ65歳です。いま20〜40代で乗っている船員には、この特例はほぼ関係ありません。
つまり今の船員の年金額を左右するのは、会社が届け出ている標準報酬月額です。手取り45万でも届出が20万弱なら、年金はその等級で計算されます。入社して数ヶ月経ったら、ねんきんネットで自分の記録を確認してください。






免状と給料の関係
内航船員の給料を上げる最短ルートは、海技免状を取ることです。免状なしの部員と、免状を持った職員では年収に100万単位の差がつきます。






































































































この差は求人データからも明確に読み取れます。保有免状ごとに「応募できる求人数」と「給与の中央値」を集計した結果が以下です。
■ 保有免状別の応募可能求人数(航海・機関の部門別)
| 保有免状 | 航海の免状だけを持つ場合 | 機関の免状だけを持つ場合 |
|---|---|---|
| 免状なし | 1,473件(22.0%) | 1,473件(22.0%) |
| 6級 | 2,652件(39.5%) | 2,198件(32.8%) |
| 5級 | 3,648件(54.4%) | 3,070件(45.8%) |
| 4級 | 4,218件(62.9%) | 3,635件(54.2%) |
| 3級 | 4,279件(63.8%) | 3,705件(55.2%) |
※海のハローワークネット求人6,708件(2026年2〜10月・12回定点観測のユニーク求人)の独自集計。「免状不要の求人」と「自分の部門で必要な級が保有級以下の求人」の合計を応募可能として累積。航海と機関の両方を同じ級で持つ場合は、6級で約50%・5級で約78%・4級で約95%まで広がる
免状なしで応募できる求人は全体の約2割で、中央値は28万円です。航海の6級を取ると応募できる求人は2,652件、免状なしの約1.8倍に増えます(機関は約1.5倍)。さらに5級で航海54%・機関46%、4級で航海63%・機関54%まで広がります。一方で、4級から3級に上がっても応募できる求人はほとんど増えません。内航の求人で必要とされる免状は、実用上は4級でほぼ頭打ちです。
給料の面では、免状不要の求人の中央値28万円に対して、6級を指定する求人の中央値は航海38万円・機関40万円(後述の級別表)。免状を1つ取るだけで「選べる船」が倍近くに増え、「もらえる金額」の相場も月10万円変わるのが内航の世界です。
しかも6級でも船種次第で手取りはさらに上がります。



















































ケミカルタンカーのような危険物を扱う船種は、6級でも手取り40万超えが普通にあり得ます。中央値38万円はあくまで6級指定求人の真ん中であって、船種選びで大きく上振れする余地があるということです。
免状を取れば選べる船も増え、給料交渉でも強気に出られるようになります。筆者自身、6級を取って職員に上がったタイミングで手取りが月10万近く上がりました。取得にかかった費用は、受験料+登録免許税で約1万円、講習費(レーダー観測者・消火・救命)で約10万円、交通費・宿泊費で約5万円、テキスト代は中古で1,500円。合計で約16万円、すべて自腹でした。
求人データでも免状不要28万円→6級指定38万円と、筆者の体感と同じ月10万円の差がありますから、2ヶ月でペイする計算です。取ってすぐ「元が取れたな」という感覚がありました。16万円の投資で年収が数十万変わるのですから、内航で最もコスパの良い自己投資です。
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6級海技士は意味ない?求人6,708件分析でわかった本当の価値
関東運輸局のデータで筆記の合格率が8〜9割と、6級は海技士で一番やさしい級です。海のハローワークネットの求人を12回集計し、6級で応募できる求人の数と給料、日帰りの可否、独学と養成講習の費用、年齢別の判断基準を解説します。
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ただし、免状がなくても部員のまま年収を上げるルートが一つだけあります。組合船でボースン(甲板長)まで上がる道です。



















































800万か1200万かは議論が分かれますが、組合船の甲板長なら免状なしでも700万以上は現実的です。ただしこれは「同じ会社に20年以上勤める」前提の話であり、ショートカットはできません。
内航で年収1000万は可能か?
結論からいえば、可能です。ただし条件があります。






































































































年収1000万に到達しやすいルートは、大きく3つです。
① 大型組合船の船長──749GT以上の組合船で船長まで上がれば800〜1000万が見える。ただし到達までに15〜20年かかる。
② タグボートの船長──港湾タグ大手なら40歳前後で1000万超えも。ただし採用枠が少なく入社自体が難関。
③ 長距離フェリーの船長──1500万超えの報告もあるが、船長になるまでの競争が激しい。
現実的に多いのは「10年で700〜800万」のラインです。未組織の中小でも700万は十分射程圏内。「10年以内に800万」を目標にするなら、免状取得と転職のタイミングが鍵になります。
注意点として、6級だけで月50万を期待するのは非現実的です。






































































































免状のグレードと経験年数に見合わない希望額を出すと、そもそも相手にしてもらえません。相場を正しく知ることが大事です。
免状取得の全体像はこちらで解説しています。
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海技免状の取り方|筆記先行ルートで最短取得した現役船員が解説
海技免状は船員人生を左右する最重要アイテムです。6級から3級までの全体像、筆記先行と履歴先行の2つのルート、一括公認の活用法、必要な講習一覧まで、筆記先行で取得した筆者が解説します。
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3級と4級で迷っている方はこちら。
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3級・4級海技士の難易度と合格率|独学の勉強時間と科目別攻略法
3級海技士は4級の約1.5倍難しいですが、難しくなるのは航海の天測計算だけです。科目別の難易度比較、4級の勉強法と勉強時間、求人データで見る3級と4級の本当の差まで解説します。
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1年目〜10年目の年収シミュレーション
未経験から内航船員になった場合、おおよそ以下のようなカーブで年収(額面)が上がっていきます。
■ 未経験スタートの年収目安(額面)
| 年数 | ステータス | 年収目安 |
|---|---|---|
| 1年目 | 無資格・甲板員/機関員 | 350〜450万 |
| 2〜3年目 | 6級取得・当直部員 or 職員 | 450〜550万 |
| 4〜5年目 | 4級取得・二航士/二機士 | 500〜650万 |
| 6〜8年目 | 一航士/機関長 | 600〜750万 |
| 9〜10年目 | 船長 or 好条件の会社へ転職 | 700〜850万 |
※金額は額面(税・社会保険料控除前)の目安。前述の「手取り」を額面に直すとおおよそ1.25倍(2割5分増し。手取り35万円なら額面約44万円)になる

























































































































































一方で、4級を取っても会社選びを間違えると伸び悩むケースもあります。



















































4級機関長で手取り39万・ボーナス年1ヶ月分は、相場から見るとかなり安い水準です。求人データでも機関長の中央値は43万。この差は「会社選びの差」であり、免状を取ることと良い会社を選ぶことはセットです。






































































































23歳で一航士43万という声がある一方、40代の司厨長で年収500〜550万という声もあります。職種による差も大きいですが、司厨長は「未経験・中年からでも入れる」という強みがあり、年収500万は陸の同条件と比較しても悪くない水準です。
年収カーブは免状取得の速度に大きく左右されます。「尾道卒業→6級取得→4級筆記先行→実免取得→転職」のルートが最も効率的で、10年で800万は現実的な目標です。
ただしこれは「免状を取り続ける前提」の話です。免状なしのままだと、何年経っても年収400万台から抜け出せません。
なお、給料と休暇はトレードオフです。手取りが高い船は休暇が少ない傾向があるので、給料だけで会社を選ぶと後悔します。比較するときは「年収÷年間拘束日数」で日給換算するのがおすすめです。
たとえば、年収600万で年間休暇90日(拘束275日)の会社と、年収500万で年間休暇120日(拘束245日)の会社を比べると、日給はそれぞれ21,818円と20,408円。数字上は600万の会社が上ですが、差は1日あたり1,400円程度です。「30日多く拘束されて100万多くもらう」のが割に合うかどうかは、人それぞれです。この計算をしておくと、「高給だけど休みが少ない会社」と「少し安いけど休みが多い会社」を冷静に比べられます。
ただし、船員という職業の最大の強みは「貯まりやすさ」だけではなく、乗船中は固定費以外の出費がほぼゼロという構造です。給料を銀行に置きっぱなしにするか、NISAなどで長期運用に回すかで、20年後の資産額が1,000万円以上違ってきます。
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船員こそNISAをやるべき理由|借金150万から完済し、新NISAでオルカン積立中の僕が書く
陸上時代に借金150万円を抱えていた筆者が、船員になって1年半で完済しNISAを始めた話。乗船中の出費が月1万円程度で済む船員という職業の、構造的なお金の貯まりやすさと、若手船員向けの資産形成の基本を解説します。
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船上での1日の流れを知りたい方はこちら。
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船乗りの1日の過ごし方|航海中・停泊中・船種別に現役船員が解説
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「船員の給料は安い」は本当か?
「船乗りは稼げる」と言う人もいれば、「割に合わない」と言う人もいます。どちらが正しいのでしょうか。































































































































































































































































厳しい意見ですが、一面の真実です。額面だけを陸と比較すれば「高い」。でも拘束時間や家族との時間を考慮すると「割に合わない」と感じる人はいます。「初任給が高い=生涯稼げる」ではなく、昇給カーブが緩やかな未組織船では陸の同年代に中長期で追い抜かれることもあります。
ただし、免状を取って職員に上がれば話は変わります。時給換算でも陸の平均を上回り、光熱費ゼロ・食費補助の貯蓄力も加わる。「安い」と感じるかどうかは、免状を取る前と取った後で大きく変わるのが内航の世界です。
船員不足でも募集給与は上がっていない──求人票を8ヶ月追跡した結果
「人手不足なのに給料は上がらない」という声は、求人データでも裏付けられます。2026年2月28日から10月20日までの12回の観測で、同じ求人番号の給与を前後で比べると、比較できた延べ8,619件のうち99.6%が据え置きでした。引き上げは31件(0.36%)、引き下げは7件です。
紹介期限が切れて出し直された求人(同じ会社・職種・船種で1対1に対応する1,377組)でも、据え置きが80.6%、引き上げ9.8%、引き下げ9.6%で、上げる会社と下げる会社はほぼ同数でした。航海6級を指定する求人の中央値は12回すべて38万円、全体の中央値も35万円のままです。
公的統計でも、内航の日本人船員の月額報酬は令和6年6月分の489,719円から令和7年6月分の465,434円に下がっています(船員労働統計調査)。少なくとも2025〜2026年の時点では、「船員不足だから給料が上がる」は求人票にも統計にも表れていません。給料を上げる現実的な手段は相場任せではなく、免状を取ることと会社を選ぶことの2つです。
人手不足そのものがどれくらい深刻なのか(求人倍率・求職者数の推移)は、こちらで数字にしています。
■ 海技士の級別年収相場(6級・5級・4級・3級)










海のハローワーク掲載求人のうち、各級の海技士免状を「必要最低免状」として指定している求人だけを抽出し、部門別(航海科・機関科)に手取り中央値を集計した結果が以下です。
| 免状の級 | 航海科(航海士)手取り中央値 | 機関科(機関士)手取り中央値 |
|---|---|---|
| 6級 | 38.0万円(1,050件) | 40.0万円(633件) |
| 5級 | 40.0万円(901件) | 40.0万円(798件) |
| 4級 | 40.0万円(530件) | 36.9万円(511件) |
| 3級 | 35.0万円(49件) | 35.1万円(57件) |
※各級を最低必要免状として指定する求人のみを抽出した手取り中央値(下限)。海のハローワークネット求人6,708件(2026年2〜10月・12回定点観測)の独自集計
同じ級でも航海科のほうが機関科より高くなる傾向があります。6級・5級ではほぼ横並びですが、4級になると航海科が3万円ほど上回ります。
ここで気になるのが3級です。表だけ見ると4級より下がっているように見えます。
3級だけ数字が下がって見える理由
実際、官公庁系の代表格である練習船では、三等航海士の手取りは月30万円弱とスタートはやや控えめですが、二等航海士に上がると年収800万円程度、一等航海士で900万円程度、船長クラスでは年収1000万円に迫るという情報もあります(筆者調べ)。3級はスタート地点の数字だけで判断せず、昇格後の伸びしろまで見て評価すべき免状です。
月給を賞与2ヶ月分込みで年収換算すると、目安は6級で約530〜560万円、5級で約560万円、4級で約520〜560万円、3級で約490万円です。3級だけを切り取ると数字は伸び悩みますが、これは「3級が市場価値として低い」のではなく「3級指定の求人が官公庁系に偏っている」ことが原因です。免状としての価値は3級のほうが4級より上であることに変わりはなく、大型内航船や近海区域の求人にも挑戦できるようになります。
「やめとけ」と言われる理由を整理した記事はこちら。
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船員はやめとけ?内航船員のデメリット7つと、それでも続ける理由
「船員やめとけ」と言われる7つの理由を、3社5年の経験者がすべてテーブルに出します。デメリットを知った上で、それでも続ける価値があるのか。向き不向きの判断基準と辞めどきのロードマップも解説しています。
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休暇のリアルはこちらで解説しています。
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内航船員の休暇事情|乗船延長・有給買取・休暇が回らない現実
「3ヶ月乗船1ヶ月休暇」は額面通りにならないケースが多いです。船種別の乗船/休暇比率、乗船延長が起きる構造的な理由、有給買取の実態、面接で確認すべき5項目まで解説します。
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面接で確認すべき給料関連の項目
ここまで読んでもらえれば分かるとおり、内航船員の給料は「聞かないと分からない」ことだらけです。ただし、面接に進む前に求人票の段階でかなりの情報を読み取れます。
面接の前に──海のハローワーク求人票で見るべき7項目
海のハローワークの求人票には、労働協約の有無・給与規定・固定残業制・加入保険・休日数・乗下船サイクル・補足事項まで記載する欄があります。
求人票で最初に見るべき7項目
- ① 労働協約の有無:組合船か未組織船かの判断材料。組合ありなら昇給・ボーナスの最低ラインが協定で守られている
- ② 給与規定の有無:賃金ルールが整備されているかの目安。「なし」の場合は社長の裁量で決まるリスクがある
- ③ 固定残業制の記載:手取りに残業代が最初から含まれていないか。「固定残業○時間分含む」と書いてある場合、見かけの手取りは高くても実質時給は低い
- ④ 加入保険:雇用保険・厚生年金・船員保険がきちんとあるか。ここが欠けている会社は論外
- ⑤ 休日・有給休暇:年間の休みの見込み。記載が曖昧な会社は実態がもっと少ないことがある
- ⑥ 乗下船サイクル:「2ヶ月乗船/1ヶ月休暇」なのか「3ヶ月乗船」なのかで年間の拘束日数が大きく変わる
- ⑦ 補足事項:Wi-Fi・司厨の有無・資格取得補助・旅費支給・寮など、数字に出ない待遇。ここが空欄の会社と充実している会社では、年単位の満足度がまるで違う
これらの情報が薄い求人は、入社後に「聞いていた話と違う」になりやすいです。面接で聞く前に、まず求人票を条件表として読むクセをつけておくと外しにくくなります。
面接で確認すべき5項目
求人票で大枠をつかんだら、面接で具体的な数字を確認します。
面接で確認すべき5項目
- ① 手取りの内訳:基本給・乗船手当・時間外手当それぞれいくらか。「手取り○万」の内訳を聞く
- ② 休暇中の給料:乗船手当が外れた状態でいくら支給されるか。基本給のみかどうか
- ③ ボーナスの計算基準:「基本給の○ヶ月」の「基本給」に何が含まれるか。昨年の実績額
- ④ 旅費の支給範囲:全額か一部か。飛行機・新幹線指定席は使えるか
- ⑤ 昇給の仕組み:毎年昇給があるか。免状取得で手当が増えるか。役職手当の額
面接でそのまま使える質問例
「何を聞くか」は上の5項目のとおりですが、問題は「どう聞くか」です。聞き方次第で相手の反応はまったく変わります。以下はそのまま使える質問文です。
| 確認したいこと | 質問の例 |
|---|---|
| 手取りの内訳 | 「手取り○万円とのことですが、基本給と手当の内訳を教えていただけますか?」 |
| 休暇中の給料 | 「休暇中のお給料はどのくらいになりますか?」 |
| ボーナス実績 | 「賞与ありとのことですが、昨年の支給実績はどのくらいでしたか?」 |
| 旅費の範囲 | 「上下船の旅費は全額支給ですか?新幹線や飛行機の指定席は使えますか?」 |
| 昇給の仕組み | 「毎年の昇給はありますか?免状を取った場合の手当はどうなりますか?」 |
ポイントは「教えていただけますか?」という聞き方で具体的な数字を求めることです。「お給料はいいですか?」のような曖昧な聞き方だと、曖昧な答えしか返ってきません。数字で聞けば数字で返ってくる。逆に、数字で聞いて濁す会社は要注意です。
→ 未経験・借金150万円から船員へ|3社転職で分かった会社選びの失敗と給料の現実
これらを面接で聞くのは失礼ではありません。むしろ、聞かれて答えられない会社・嫌な顔をする会社は避けた方が無難です。
なお、2026年5月13日施行の船員職業安定法改正により、求人等に関する情報の的確な表示が義務付けられます。これにより求人票の信頼性は今後上がることが期待されますが、法改正後も「聞いて確認する」姿勢は変わりません。
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【2026年施行】船員法改正をわかりやすく解説|求人の嘘禁止・手帳デジタル化・訓練義務化
2025年の船員法改正で、求人の嘘禁止・手帳デジタル化・安全訓練の義務化が始まりました。現役船員が「結局、現場の何が変わるのか」を掲示板の声と合わせて解説します。
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求人票の数字を鵜呑みにせず、「乗船中の手取り」「休暇中の手取り」「年間のボーナス実績」の3つの数字で年間の収入を自分で計算するのが、後悔しない会社選びの第一歩です。
未経験から船員を目指す方の全体ガイドはこちら。
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未経験から船員に転職する完全ガイド|求人の探し方から最初の3ヶ月まで
未経験・無資格でも船員にはなれます。年齢別の現実、求人の探し方、面接で確認すべき10項目、最初の3ヶ月の乗り越え方、ブラック船会社の避け方まで、3社転職した現役船員がまとめました。
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退職を考えている方はこちらも参考にしてください。
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船員の退職マニュアル|船員法42条から手順を全解説
船員の退職は陸とルールが違います。船員法42条の「24時間ルール」、損しない退職タイミング、辞めさせてくれない場合の対処法、退職後の書類トラブルまで、3社で退職経験のある筆者が解説します。
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まとめ
この記事のポイント
- 内航船員の給料は「船種×役職×会社規模」で決まる。同じ船乗りでも年収400万〜1000万超の幅がある
- 相場は求人票の手取り中央値35万円(年収換算550〜600万円)。公的統計の平均は月46.5万円+年間賞与81万円(額面・平均年齢46歳)
- 求人票の「手取り○万」は乗船中の金額であることが多い。額面の年収と、年間で実際に手元へ残る金額(年間手取り収入)は分けて考える
- 年間手取り収入は「乗船中×月数+休暇中×月数+ボーナス−旅費」で計算する。月収だけ見ると外す
- 求人データでは、賞与回数が記載された求人の約95%が年2回(記載があるのは全求人の約半数)。ただし金額は年20万〜年100万超まで差がある
- 海のハローワーク求人票は、労働協約・固定残業・乗下船サイクル・旅費の4項目を最優先で見る
- 免状なしで応募できる求人は全体の約2割。航海の6級で約1.8倍(機関は約1.5倍)、4級で航海63%・機関54%まで広がる。4級から上はほとんど増えない
- 求人票の給与は2026年2〜10月の12回観測で99.6%が据え置き。公的統計でも内航の月額報酬は前年より減少。「船員不足で給料が上がる」は今のところ数字に出ていない
- 6級の取得費用は約16万円。手取りアップで数ヶ月で回収でき、内航で最もコスパの良い自己投資
- 6級でもケミカル等の船種なら手取り43万の実例あり。船種選びで大きく上振れする
- 未組織船は月給が高く見えやすいが、組合船は賞与・昇給・退職金で長期的に逆転することがある
- 年収1000万は可能だが、大型組合船船長・タグ船長・長距離フェリー船長のいずれか。10年で700〜800万が現実ライン
- 面接では「手取りの内訳」「休暇中の給料」「ボーナスの計算基準」「旅費」「昇給の仕組み」を必ず確認する
船員の給料は、知っているかどうかで得する金額が大きく変わる世界です。「手取り」の言葉に惑わされず、額面年収と年間手取り収入を分けて冷静に比較してください。
→ 未経験・借金150万円から船員へ|3社転職で分かった会社選びの失敗と給料の現実
※この記事は筆者の3社勤務経験、掲示板500件超の給料に関する投稿、海のハローワークネット掲載求人を2026年2〜10月に12回定点観測した独自データ(ユニーク求人6,708件・給与記載5,956件)、および国土交通省「船員労働統計調査」の分析をもとに構成しています。求人票の金額は手取り、統計の金額は額面です。給料・待遇は会社・船種・時期・個人の経験により大きく異なります。就職・転職の際は最新の求人情報や、会社への直接の問い合わせで確認してください。
参考:5ch船乗りなんでも相談室シリーズ(2016〜2021年の投稿を集約)


