
でも8年続けてる僕がいるのも事実。今回はデメリットを全部テーブルに出した上で、それでも続ける価値があるのかを正直に書くよ。

この記事で分かること
- 「やめとけ」と言われる7つの具体的な理由
- 甲板員の仕事がきつい理由(/deck/ の内容を含む)
- 未経験からの定着率が低い構造的な原因
- それでも船員を続ける人がいる理由
- 「やめとけ」が当てはまる人・当てはまらない人
- 辞めたくなったときの段階的な判断基準
「船員やめとけ」と言われる7つの理由
まずはデメリットを全部出します。これを読んで「無理」と思ったなら、やめた方がいい。逆に「それでも」と思えるなら、この記事の後半も読んでみてください。
① 人間関係が逃げ場なし
船員が辞める一番の理由は、人間関係です。
5〜10名の乗組員と3ヶ月間、24時間同じ空間で過ごす。性格が合わない人がいても、陸のように「帰ったらリセット」ができません。仕事が終わっても食事も風呂も同じ船の中。
クセの強い人、気難しい人、酒を飲むと怒り出す人。こういう人が1人いるだけで船全体の空気が変わります。

② 労働時間の概念がない
航海当直は4時間×2回の交代制。しかし当直の合間に荷役、整備、ペンキ塗り、掃除が入ります。「何時から何時まで」という概念は、多くの船に存在しません。
入港時間が当初09:00の予定が17:00にずれ込む、なんてことは日常茶飯事。その間ずっと待機で、部屋でゆっくり休むわけにもいかない。

③ 睡眠がまとまって取れない
3交代制のため、まとまった睡眠は望めません。特にタンカーは荷役スケジュールに振り回され、3日間の睡眠合計が5時間未満という報告もあります。
陸で8時間寝ないとダメな人には、正直厳しい環境です。エンジンの騒音と揺れの中で寝るのにも慣れが必要。
④ いつ下船できるか分からない
「3ヶ月乗船1ヶ月休暇」が約束されていても、交代要員がいなければ下船できません。4ヶ月、5ヶ月と延長されるケースは珍しくなく、タンカーで13ヶ月乗り続けた人の話も。
「いつ帰れるか分からない」という不安は、精神的にかなりこたえます。
⑤ 甲板員(新人)は何でもやらされる
甲板員は船の中で一番下の職位です。ロープワーク、係船作業、荷役補助、サビ打ち、ペンキ塗り、掃除、食事当番——何でもやる覚悟が必要。
覚えることも多い。港ごとに離着桟の方法が違い、荷役の手順も船種ごとに異なる。「1つ覚えれば終わり」ではなく、常に新しいことを吸収し続けなければなりません。
上長の命令には従わなければならない(船員法)ので、理不尽な指示にも耐える場面が出てきます。
⑥ 古い体質が残っている
「上司の言うことは絶対」「仕事は怒られて覚えろ」——こういう価値観が今でも根強く残っています。
「最近の若い奴は〜」は日常茶飯事。年配の船員の中には、教え方が乱暴だったり、パワハラまがいの言動をする人もいます。陸のコンプライアンス意識とは別世界です。

⑦ 定着率が低い
水産高校卒の最終定着率は約2割。3年で7割が辞めるという数字が業界内で共有されています。
完全未経験・紹介なしで内航に入ってくる人はさらに定着率が低い。父親が船員だった、知り合いの紹介で入った、といった「繋がりがある人」の方が続く傾向にあります。


なぜ「まともな人」から辞めていくのか
ここまで読んで「そんな環境、まともな人なら辞めるだろう」と思ったかもしれません。
実際、その通りです。
内航が慢性的に人手不足なのは、給料が安いからでも、仕事が特殊だからでもありません。まともな神経をしている人ほど、船乗りを続けられない構造になっているからです。


20代の一番楽しい時期に、3ヶ月間陸に帰れない。恋人とも友人とも会えない。スケジュールは天候次第で変わり、休暇の予定も立てにくい。こうした環境に適応できる人間が「普通」かと言えば、正直そうではない。
だからこそ、「なぜ自分は船に乗るのか」という明確な理由を持っている人だけが残る。これが内航の現実です。
それでも船員を続ける人がいる理由
ネガティブな話ばかりしましたが、8年続けている僕がなぜ辞めないのかを正直に書きます。
給料の伸びしろが大きい
僕は無資格の甲板部員として手取り28万円でスタートしました。今は6級海技士を取得して職員に上がり、手取り約40万円。8年で月12万円、年収ベースで140万円以上のアップです。
さらに3級・4級を取れば一航士〜船長への道が開け、手取り50万円以上も現実的な数字。免状を取るたびに確実に給料が上がるのは、この仕事の大きな魅力です。
生活費がほとんどかからない
乗船中の住居費・光熱費はゼロ。食費も会社負担か食料金支給の船が多い。節約すれば月の支出は3万円程度。年200万円以上の貯金も十分可能です。
手取り30万円でも実質の可処分所得は陸上の40万円以上に匹敵する、というのが僕の実感です。
長期休暇がある
3ヶ月乗って1ヶ月休み。この1ヶ月をどう使うかは完全に自由です。海外旅行、資格の勉強、副業——陸上の会社員にはなかなかない「まとまった時間」が手に入ります。
休暇中も給料が出るのも大きい。
航海当直で海を眺める時間がある
これは甲板員時代に感じた素朴な喜びですが、ワッチ中にコーヒーを飲みながら海を眺める時間は、船乗りにしかない贅沢です。狭水道の操舵が上手くいったときの達成感も、この仕事ならではのもの。
きつい仕事ばかりではなく、こういう小さな楽しみが日々の支えになるのは事実です。
「やめとけ」が当てはまる人・当てはまらない人
やめておいた方がいい人
- まとまった睡眠が取れないと無理な人:3交代制と荷役スケジュールに適応できない
- 規則正しいスケジュールで働きたい人:天候・荷役で予定は常に変動する
- 給料の高さだけに惹かれている人:額面と実態のギャップに耐えられない
- 閉鎖空間での共同生活が苦手な人:3ヶ月間逃げ場がない
- 理不尽に対する耐性がゼロの人:古い体質は簡単には変わらない
向いている可能性がある人
- 目的が明確な人:「免状を取って手取り50万円を目指す」「1000万貯めて起業する」など
- 一人の時間が苦にならない人:乗船中の空き時間を自分で使える
- 体力に自信がある人:甲板作業は体力勝負の場面が多い
- 「とりあえず3ヶ月」と割り切れる人:最初の壁を超えれば見える景色が変わる
- 「教えてください」と素直に言える人:年齢や前職に関係なく、これが最大の武器

辞めたくなったときの段階的な判断基準
船に乗り始めたあと、「もう無理」と思う瞬間は必ず来ます。そのとき感情だけで辞めるのはもったいない。段階的にゴールを設定して、そこまで頑張ってから判断するのがおすすめです。
辞めたくなったときのロードマップ
| 時期 | 目標 | 判断 |
|---|---|---|
| 乗船3ヶ月未満 | まず3ヶ月続ける | まだ早い。環境に慣れるまでの辛抱 |
| 乗船6ヶ月 | 当直部員を目指す | ここまで来れば少しは楽になる |
| 乗船1年 | 雇用保険の対象になる | もう1年頑張って6級を取ろう |
| 6級取得 | 職員への道が開ける | さらに1年。3〜4級で選択肢が一気に広がる |
| 3級取得 | 会社を選べるレベル | 条件に不満があるなら転職を検討してOK |
ただし、以下のケースは即座に辞めて問題ありません:
- 暴力・いじめ・パワハラが常態化している
- 乗船延長が繰り返され、約束の休暇が取れない
- 給料の未払い・旅費の不払いがある
- 船員手帳や免状を預けさせられている

筆者が「やめとけ」とは言わない理由
ここまでデメリットを全部出してきましたが、僕自身は「やめとけ」とは言いません。
理由はシンプルで、デメリットを知った上で入ってきた人は、知らずに入った人より圧倒的に強いからです。
僕は完全無資格・未経験・紹介なしで内航に入りました。最初の3ヶ月は地獄でした。覚えることだらけ、理不尽な上司、睡眠不足、ホームシック。何度も辞めようと思った。
でも「6級を取るまでは絶対に辞めない」と決めていたから続けられた。6級を取ったら選択肢が広がり、会社を変えたらさらに環境が改善された。3社目の今は、休暇も給料も人間関係もそれなりに納得できている。
「やめとけ」ではなく、「覚悟して来い」。これが8年乗ってきた僕の本音です。


まとめ
この記事のポイント
- 「やめとけ」と言われる理由は7つ:人間関係・労働時間・睡眠・下船不明・甲板員の負担・古い体質・定着率の低さ
- まともな人ほど辞めていく構造がある。それでも残る人は「明確な目的」を持っている
- 給料の伸びしろ、貯金力、長期休暇は内航の確実なメリット
- デメリットを知った上で入った人は、知らずに入った人より圧倒的に定着率が高い
- 暴力・未払い・手帳預かりは即辞めてOK。それ以外は段階的に判断
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※この記事は筆者の3社勤務経験、および掲示板・業界関係者からの情報をもとに構成しています。労働環境は会社・船種・時期により大きく異なります。就職・転職の際は最新の情報を会社に直接確認してください。