


ポイント
- 「未経験・無資格だけど船員になりたい」
- 「何歳まで転職できるのか知りたい」
- 「尾道に行くべきか、いきなり就職すべきか迷ってる」
- 「船の人間関係や生活が不安」
- 「未経験からどうやってキャリアアップするのか知りたい」
※この記事は現役・元船員の口コミをもとにした参考情報です。会社や船によって実態は大きく異なります。
未経験・無資格でも船員になれるのか?
答えはYESです。ただし条件があります。
内航船(国内の貨物船やタンカー)では、人手不足を背景に未経験者を受け入れる会社が増えています。甲板部(デッキ)であれば、無資格・未経験でも甲板員として乗れる会社は存在します。
一方で機関部(エンジン)は未経験だとかなり厳しいのが現実です。免状なし・経験なしの機関員を乗せてくれる商船は少なく、漁船経由で履歴を積んでから転職するのが現実的なルートです。

つまり「船に乗ること自体」はできますが、「いい条件で乗ること」が難しいというのが正確な表現です。
何歳まで転職できる?
年齢について結論を先に言うと、内航船なら40歳くらいまでは未経験でも可能性があるというのが現場の共通認識です。
ただし年齢が上がるほど条件は厳しくなり、選べる船も限られてきます。
| 年齢 | 現実的な選択肢 | ポイント |
|---|---|---|
| 20代前半 | 何でも選べる。学校に行くのもアリ | 最も有利。海技短大も検討を |
| 20代後半 | 未経験でも歓迎されやすい | 若さは最大の武器 |
| 30代前半 | 未経験可の会社はある | 覚悟と体力が問われる |
| 30代後半 | 選択肢が狭まる | 前職の経験(溶接、電気等)が活きる場合も |
| 40代以降 | かなり厳しいが不可能ではない | 賄い(司厨)からの入り方もある |


大事なのは「やる気・若さ・資格のどれかがあれば転職はしやすい」ということ。全部ない場合はかなり厳しい、というのが現場のリアルです。
学校に行くべきか、いきなり就職すべきか
未経験者が最初に迷うのがこの問題です。選択肢は大きく3つあります。
①海技短大(JMETS)に行く(2年)
2年間で4級海技士(航海・機関の両方)を取得でき、卒業時点で士官として採用される可能性が高い。学費も安く、20代ならこのルートが最も確実です。
②尾道海技学院(新6級課程)に行く(約10ヶ月)
最短で6級海技士が取れますが、受講料と生活費で60万円以上かかり、その間は無給。評価が分かれるルートです。


尾道について意見が割れる理由は、甲板(デッキ)か機関(エンジン)かで評価が違うからです。デッキなら尾道に行く意味は薄いという声が多い一方、エンジンなら尾道に行く意味は非常にあるという声があります。尾道ではエンジンの分解・組立(バラし)を経験できますが、実際の船ではなかなかそういう経験は積めないためです。
③学校に行かず、いきなり就職する
甲板員として乗船し、2年の乗船履歴を積んで6級海技士の受験資格を得るルート。給料をもらいながら経験を積めるのが最大のメリットです。


ポイント
学校に行くべき人:20代で時間と費用に余裕がある人、機関部志望の人
いきなり就職すべき人:30代以上で時間がない人、甲板部志望の人、すぐに稼ぎたい人
→ どちらにせよ「免状を取ること」が最優先。免状がないと人間扱いされないのがこの業界。
学校ルートと免状取得について、もっと詳しく知りたい方はこちらも参考にどうぞ。
-
-
船員なるには資格が必要?無資格・未経験は学校に行くべき?
ヒヨコくん船員になりたいんだけど、資格もないし何から始めればいいか分からない… 大丈夫!未経験・無資格からでも船乗りになれるよ。学校に行くルートも、すぐ就職するルートもあるから、今回は全部まとめて紹介 ...
未経験は「大きい船」から入れ
学校に行かず直接就職を選ぶ場合、もう一つ重要な選択があります。それが「どのサイズの船に乗るか」です。
結論を先に言います。未経験者は大きい船(998GT以上)から入るべきです。


小型船(199t以下)は少人数制・一人ワッチが前提で「素人お断り」の世界です。即戦力が求められるため、未経験者には向いていません。まず大型船で基礎を叩き込んでもらい、経験を積んでから小型船に移るのが王道ルートです。
また、ROROや自動車運搬船も注意が必要です。

未経験で荷役の経験を積みたいなら、荷役を自分でやる船(タンカー・カーゴ等)の方が早く実力がつきます。
求人の探し方
未経験者が船員の求人を探す方法は主に3つです。それぞれに特徴と注意点があります。
①運輸局に求職登録する
各地の運輸局(地方運輸局の船員労政課)に行って求職票を出すと、条件に合う会社から連絡が来ます。ただし、積極的に電話してくる会社は人手不足=何か理由がある会社の可能性があることは認識しておきましょう。
②船員求人ネットで自分から探す
国土交通省が運営する船員求人ネットで「未経験可」「免状不問」の条件で検索できます。ただし、未経験OKの求人は全体の一部です。
③海技者セミナー(合同説明会)に参加する
年に数回開催される海技者セミナーでは、複数の船会社と直接話ができます。参加費用が会社側にかかるため、ブラック企業は比較的少なめという声があります。会社の担当者と顔を見て話せる貴重な機会なので、未経験者はまずここから始めるのがおすすめです。
④陸上のハローワーク経由は最終手段
陸上のハローワークにも船員求人は掲載されますが、業界に不慣れな人を狙ったブラック会社が紛れ込みやすいという点を覚えておきましょう。
ハローワークへの掲載は無料なので、コスト面でブラック企業が利用しやすい構造があります。業界知識がない人が多く登録しているため、騙しやすい・誘いやすいという面があるのも事実です。船員専門の求人窓口(運輸局・船員求人ネット・海技者セミナー)を優先して使いましょう。
注意:履歴書不要の会社は危険信号

履歴書不要、面接なしで即採用という会社は、一杯船主の家族船や極端に人手不足の零細である可能性が高い。休暇が回らない、交代要員がいないといった問題を抱えていることが多いので注意が必要です。
ポイント
「未経験者に電話をかけてくる会社の90%はブラック」「HPを持ってない会社は避ける」「未組織船は避ける」──管理人が1年間求人を観察して見つけたブラック船会社を避ける3原則を有料noteで詳しく解説。
面接で必ず確認すべきこと
船会社の面接では、陸上の会社とは違うポイントを確認する必要があります。最低限押さえるべきは「乗船サイクルと休暇が規定通り回っているか」「乗下船の移動日が休暇に含まれるか」の2点です。

もう一つ絶対に確認すべきなのが旅費(上下船の交通費)が全額支給かどうかです。
まともな会社なら上下船時の交通費は全額会社負担が当然ですが、5割しか出ない・新幹線は自由席のみ・飛行機不可という会社は実在します。「旅費の扱いはどうなっていますか?」は面接で必ず聞いてください。旅費の扱いは、その会社のホワイト度を測るリトマス紙です。
ポイント
休暇サイクル・転船の有無・月間航海数・仮バース回数・昇給・乗下船日の扱い・作業用品の自己負担──面接で確認すべき7項目を管理人の実体験をもとに有料noteで詳しく解説しています。
正社員と派遣、どっちがいい?
未経験者は正社員と派遣のどちらで入るべきか。結論は基本的に正社員一択です。
派遣の利点は「働きたい時だけ働ける」こと。ただしこれは定年後のベテランや、独身で稼ぐ必要がない人向けの働き方です。未経験者がまず免状を取って仕事を覚える段階では、正社員で腰を据えて経験を積む方が合理的です。

また派遣は派遣会社に給料を抜かれるうえ、契約期間中は途中で辞めにくいというデメリットもあります。正社員なら退職届を出せば辞められますが、派遣は契約期間の縛りがあります。
最初の3ヶ月が最大の壁
未経験から船に乗った人の多くが「最初の3ヶ月が一番きつかった」と語ります。
仕事面のきつさ
未経験の甲板員に任される仕事は、錆打ち・ペンキ塗り・綱取り・船内掃除・料理当番などです。専門用語も分からない状態で、1から10まで教えてくれる環境ではありません。

ミスが続くときは「なぜミスが起きたか」をノートに書き出す習慣をつけると改善が早まります。同じミスの繰り返しは先輩の信頼を大きく損ねるので、要因分析の姿勢を見せるだけでも印象が変わります。
人間関係のきつさ
船の人間関係は、良い船と悪い船の差が激しいです。閉鎖空間で24時間一緒にいるため、1人でも合わない人がいると精神的にかなりきつくなります。


ただし、これは最悪のケースです。ある程度大きい会社に入れば変な人は少ないという声もあります。

先輩船員からのアドバイス
未経験から白油タンカーの甲板員として入った元自衛官の方が、人間関係への対処法をこう語っています。

肉体的にはきつい?楽?
意外かもしれませんが、肉体的な負荷は陸上の肉体労働より楽という声が多いです。


ただし精神的なストレスは陸上以上です。狭い空間でプライバシーがなく、独自の船内ルールがあり、逃げ場がない。肉体的には楽でも、精神的に参ってしまう人が少なくありません。
「仕事自体はきつくないが、人間関係と閉鎖環境が合うかどうか」がこの仕事の本質です。
料理は作れないとダメ?
司厨長(専任のコック)が乗っている大型船なら料理を作る必要はありませんが、小型船(特に499t以下)では乗組員が交代で料理を作るのが一般的です。
料理が全くできない場合でも、最低限の丼物や焼きそば程度は作れるようにしておいた方が良いでしょう。

司厨員として入る場合は、プロレベルの調理経験が必要です。「料理好き」程度では務まらない世界で、離職率も高い職種です。ただし官庁船の司厨は比較的マシという声があります。
未経験からのキャリアパス
大まかな流れを整理しておきます。
甲板員として乗船→2年の乗船履歴で6級海技士取得→航海当直に入る→4級・3級と上位免状を積み上げる→職員(航海士)昇格→最終的に船長へ──というのが王道です。
ポイントは「免状を取ってからが本当のスタート」ということ。部員のままでは給料の上限が低く、免状を取って職員になれば年収は大きく変わります。
学校ルートや免状取得の詳細・最短ルートは、専門記事にまとめています。
-
-
船員なるには資格が必要?無資格・未経験は学校に行くべき?
ヒヨコくん船員になりたいんだけど、資格もないし何から始めればいいか分からない… 大丈夫!未経験・無資格からでも船乗りになれるよ。学校に行くルートも、すぐ就職するルートもあるから、今回は全部まとめて紹介 ...
ポイント
「無線資格は早いうちに取っておくべき」「レーダー観測者・救命・消火の講習は履歴が貯まる前に受けておく」──管理人が履歴が貯まるまでに3社転職した実体験から、免状取得までの最短ルートと落とし穴を解説しています。
給料の現実
未経験の1年目は手取り20〜30万程度がリアルな相場です。部員のままでは上限が低いですが、免状取得後に職員に上がれば年収は大きく変わります。
船種・会社・役職別の具体的な数字は、専用記事でまとめています。
-
-
内航船員の給料・年収のリアル|船種×役職の相場一覧
ヒヨコくん船員って稼げるの?ネットで調べても「船種による」「会社による」ばっかりで全然分からないんだけど… 気持ちは分かるよ。僕も転職前はずっとモヤモヤしてた。 今回は3社を渡り歩いた経験と、業界の口 ...
ポイント
「タンカーなら手取り○万以上、カーゴなら○万以上が最低ライン」──管理人が実際に経験したタンカーとカーゴの給料・賞与・年間休日の具体的な数字を有料noteで公開中。
乗船時に持っていくべきもの
初乗船の持ち物については、先輩船員たちの口コミをもとにまとめた専用記事があります。通信環境の選び方(海上はドコモが強い)、割れないマグカップ、酔い止め(アネロン推奨)など、実際に使ったアイテムのリストはこちら。
-
-
【現役船員が解説】船乗りの日常・実務Q&A|自炊・レット・ワッチ・仮バースの過ごし方
ヒヨコくん船に乗り始めたんだけど、日常生活とか実務のこまごましたことって誰にも聞けないんだよね。自炊ってみんなどうしてるの?レットって何かコツあるの? 分かる。こういう「教科書に載ってないけど現場では ...
喫煙環境について
船内の喫煙環境は気になる人が多いポイントです。
結論として、船によって全然違います。タンカーやガス船は分煙がしっかりしている傾向がありますが、それ以外の船では食堂やブリッジで普通に吸っている船もまだあります。
近年は若手の喫煙率が下がっており、完全禁煙の非タンカーもありますが、まだまだ少数派です。非喫煙者は入社前に船内の喫煙ルールを確認しておくことをおすすめします。
「公務員を辞めて船員になりたい」という人へ
定期的に上がる話題なので、あえてセクションを設けます。
結論から言うと、現役船員の大多数は「公務員を辞めるな」と言います。

もちろん最終的な判断は個人の自由ですが、船員は安定収入より不確実性が高く、年功序列の側面もあることは理解しておくべきです。「稼げる」「まとまった休みがある」というのは事実ですが、それは免状を取って経験を積んでからの話です。
どうしても船に行きたいなら、公務員を辞める前に海技短大への入学を検討する方が合理的です。
甲板と機関、どっちを選ぶ?
未経験から入る場合、甲板部と機関部のどちらを選ぶかは重要な分岐点です。また「どの船種に乗るか」も大きなポイントなので、船種ごとの特徴は別記事を参考にしてください。
甲板部(デッキ)のメリット
- 未経験・無資格でも乗せてくれる会社が比較的多い
- 航海当直(ワッチ)を通じて操船を学べる
- いずれ船長を目指せる
機関部(エンジン)のメリット
- 慢性的に人手不足で、免状があれば引く手あまた
- 技術職としてスキルが身につく
- キャリアアップが早い傾向(機関長になるまでの年数が短い)
未経験なら甲板からが現実的

機械いじりが好きで機関部に行きたい場合は、海技短大か尾道で免状を取ってからの方が確実です。甲板部から機関部への転向は、会社の都合がない限り難しいのが実情です。
漁船経由ルートという選択肢
商船に直接入れない場合、まず漁船で乗船履歴を積んでから商船に転職するというルートがあります。特に未経験で機関部を目指す場合や、商船の求人に引っかからない場合の現実的な迂回ルートです。
漁船経由のメリット
未経験でも比較的乗りやすく(漁船は人手不足が深刻)、乗船履歴が貯まるので海技免状の受験資格を得られます。免状を取得後に商船へ転職する、というのが王道の流れです。

漁船経由のデメリット
漁船の世界は商船以上に過酷な面があります。覚悟なく飛び込むと大半が短期間で辞めるのが現実です。

注意点として、漁船の乗組員は「漁師」、商船の乗組員が「船乗り」です。漁師になりたいなら漁船、船乗りになりたいなら商船が本来の道筋。漁船はあくまで「商船に入るための踏み台」と割り切る必要があります。
漁船→商船の実際の流れ

漁船で1〜2年我慢して履歴を貯め、6級を取ったら商船に転職。その後さらに上級免状を目指す。遠回りに見えますが、どこにも引っかからない場合の最終手段として覚えておく価値はあります。
こんな人は船員に向いている
現役船員の声を総合すると、船員に向いている人・向いていない人には傾向があります。
向いている人
- 1人の時間が苦にならない
- 理不尽なことがあっても受け流せる
- まとまった休みで旅行や趣味を楽しみたい
- お金を貯めたい(船上ではほぼ使わない)
- 手に職をつけたい(海技免状は国家資格)
向いていない人
- 毎日家に帰りたい(タグボート以外は無理)
- 人間関係のストレスに弱い
- 「暇そう」「楽そう」というイメージだけで来る人
- 最初から高収入を期待している人



ポイント
「タンカーは忙しいけど仕事を覚える機会が多い」「カーゴは労働時間が短いけど即戦力を求められる」──管理人が実際にタンカーとカーゴの両方に乗って感じたメリット・デメリットを有料noteで本音レビュー。この記事で紹介しきれなかった仕事内容の詳細・1日のスケジュール・ブラック会社を避ける方法もすべて収録。
※この記事は現役・元船員の口コミをもとに構成しています。船会社の待遇や求人状況は時期によって変わります。就職・転職の際は最新情報を運輸局や各社に確認してください。