ブラック船会社の見分け方|転職で失敗しないための完全チェックリスト


内航業界は人手不足が深刻で、求人自体は多い。しかし「求人が多い=選び放題」ではありません。ブラック企業ほど人が辞めるから、常に求人を出し続けているという現実があります。
この記事では、筆者が3社の内航船会社を経験する中で学んだ「ブラック企業の見分け方」を、チェックリスト形式でまとめました。
この記事でわかること
- ブラック船会社に共通する6つの特徴
- 「海のハローワーク」の落とし穴
- 信頼できる求人の探し方
- 面接・訪船で確認すべきポイント
- おかしいと思ったときの相談先
ブラック船会社に共通する6つの特徴
まずは「こういう会社は避けるべき」という具体的なサインを紹介します。1つでも当てはまれば要注意、2つ以上なら避けたほうが無難です。
①上下船の旅費を全額出さない
筆者の経験上、旅費はブラック度を測る最も分かりやすいリトマス紙です。
乗船のための移動は社命によるもの。まともな会社であれば、会社の規模にかかわらず交通費は全額支給が当然です。「飛行機不可」「新幹線は自由席のみ」「旅費は半額」──こうした条件を提示してくる会社は、その時点でコスト意識の優先順位が船員の待遇より上にあるということです。
前に有給や休暇で1ヶ月休みの時バイトで広島の小さな海運会社のカーゴにチョッサで乗りにいったが交通費 ホテル代 全部出してくれたよ。



指定席の差額500円をケチる会社が、船員の待遇を大切にしているとは思えません。旅費の条件は面接の段階で必ず確認してください。
②船員手帳・免状を預けさせる
船員手帳や海技免状を会社に預けるよう求められたら、それは「辞めさせないための首輪」です。手帳や免状がなければ他社に転職できないので、事実上の退職妨害になります。
船員手帳も海技免状も個人に帰属するもので、会社が保管を強制する法的根拠はありません。返却を拒否されたら、地方運輸局に相談してください。
辞めさせないようにするためのな。
海運局に通報しとけ!

③乗船延長が常態化している
「3ヶ月乗船1ヶ月休暇」と聞いて入社したのに、実際は4〜6ヶ月降ろしてもらえない──このパターンは内航業界では珍しくありません。特にタンカーに多い傾向があります。
面接の段階で「直近1年の実際の乗船期間」を聞いてみましょう。「約束通り3ヶ月で下船できていますか?」という質問に、言葉を濁す会社は要注意です。
④休暇の約束を口頭だけで済ませる
零細企業や個人船主の会社では、雇入契約の内容を口約束で済ませるケースがあります。書面がなければ、後から「そんな約束はしていない」と言われても反論できません。

休暇日数、給料、乗船サイクル──重要な条件は必ず書面(雇入契約書)で確認しましょう。「うちはそういうの作ってないんだよね」と言う会社は、その時点で危険信号です。
⑤ボーナスが異常に少ない or ない
内航業界でも、まともな会社であればボーナスは基本給の1.8〜2.5ヶ月分×年2回が相場です。小さな会社でも普通にボーナスを出しているところはあります。
一方で、零細の未組織会社ではボーナスが雀の涙というケースも。ボーナスの有無と金額は、面接で必ず確認すべき項目です。


「小さい会社=ボーナスなし」とは限りません。逆に言えば、会社の規模に関係なくボーナスを出せない会社は経営状態に問題がある可能性があります。
⑥安全管理がずさん
ガスフリーをせずに岸壁に仮バースする、Tシャツにタンクトップでノーヘル作業──こうした安全違反が日常的に行われている会社は、船員の命を軽く見ているということです。
「問い合わせてもいいけど、社名はださないよう」って言われた。
「当然出して聞きますよ」って言ったら、「では、今回は特別に出す」って言ってきたよ。

安全に関する違反を見つけたら、迷わず通報してください。「法律を知らないと好きなように使われる」──これはブラック企業に共通する構造です。
⑦厚生年金や手当を会社がピンハネしている
これは入社してすぐには気づけない「見えないブラック」の典型。給料明細上は手取りが多く見えるのに、実は厚生年金の標準報酬月額をありえない最低等級で届出していた──こんなケースが実際にある。
会社側は「お前の手取りを増やすための特別配慮だ」と言い張るが、将来受け取る年金額が大幅に減るので、船員が一方的に損をする構造だ。




⑧食料金を船長や会社が横領している
自炊船では食料金が個人に支給されるのが普通だが、船長が食料金を全額徴収し、釣銭だけをたまに渡すという会社が実在する。これは会社公認のルールとして運用されていることもある。


⑨定員割れ(欠員)のまま航行している
乗組員が法定の定員を満たしていないのに出港する──これは船員法違反であると同時に、乗っている全員の命に関わる問題だ。



求人の探し方①──「海のハローワーク」の落とし穴
地方運輸局の求職登録(いわゆる「海のハローワーク」)は、無料で使える船員向けの求職サービスです。登録すれば会社側からスカウトが来ることもあり、転職活動の第一歩としては有効です。
ただし、ここに掲載されている求人には、ブラック企業が混じっている可能性が高いことを知っておく必要があります。
その理由は構造的なものです。ハローワークの求人掲載は無料。つまり、求人にお金をかけたくない(かけられない)会社でも掲載できます。有料の求人サイトに出稿する余裕がない会社が、無料枠を使って人を集めている──そういうケースが一定数あるのです。
さらに、企業側は登録者の経験・資格を閲覧できます。業界のことをよく知らない未経験者が登録すると、その情報を見た会社から「歓迎ムード」で声がかかることがあります。人手不足の会社ほど採用のハードルが低く、条件をよく確認しないまま入社してしまうリスクがあります。

求人票の数字を鵜呑みにしない
ハローワークに限らず、求人票に書かれた条件が実態と大きくかけ離れているケースは珍しくない。「手取り45万」で応募したら実際は16.5万だったという報告すらある。

さらに注意したいのが、「釣り求人」のパターン。ブラック企業の採用担当は3つの決まり文句を使う。
ブラック企業の釣り3点セット
②「休暇は回りますよ〜」
③「みんな良い人達ですよ〜」




ハローワーク求人で確認すべきこと
- 常に同じ求人が出続けていないか(=人が定着していない)
- 旅費・ボーナス・休暇サイクルの具体的な数字が明記されているか
- 「経験不問・未経験歓迎」だけを強調していないか
- 面接前に訪船見学が可能かどうか
求人の探し方②──海技者セミナーは信頼度が高い
一方、海技者セミナー(船員就職面接会)は、比較的信頼できる求人の場です。
理由はシンプルで、出展する会社側にそれなりの費用がかかるから。ブースの出展費を払ってまで人を採りたい会社は、ある程度の経営基盤があり、船員の採用に本気で取り組んでいるケースが多い。
セミナーの最大のメリットは、採用担当者と直接顔を合わせて話ができることです。求人票だけでは分からない船内の雰囲気や、会社の方針を肌で感じ取ることができます。訪船見学が可能かどうかを、その場で打診することもできます。
また、女性船員を積極的に採用している会社が参加していることも多く、多様な選択肢に触れられる貴重な機会です。

入社前にネットでできる会社調査
面接や訪船見学に行く前に、ネット上で最低限の調査をしておこう。5分でできる簡単なチェックだけでも、ヤバい会社をかなりの確率で回避できる。
ネット調査3つのチェック
HPがない会社はブラック率が高い。まともな会社は採用情報や会社概要をHPに載せている。HPがない=「求職者に情報を見せたくない」可能性がある。
② 船名でGoogle検索する
会社名だけでなく、所有船の船名でも検索してみよう。海難審判の事故報告書がヒットする場合がある。事故報告が出ている船に乗った経験者いわく「ボロ船、パワハラ、休暇回らず等ろくなもんじゃなかった」とのこと。
③ 住所と電話番号を他社と比較する
同じ住所・同じ電話番号で複数の社名が出てくる場合、ペーパーカンパニーの可能性がある。実態は1つの会社なのに名前を変えて求人を出している──こうした手口は珍しくない。




面接・訪船で見極めるポイント
求人を見つけたら、次は面接(または電話面談)です。ここがブラックを見抜く最後のフィルターになります。
筆者が3社の転職経験から「最低限これだけは聞け」と断言できる項目を厳選します。
面接で最低限確認すべき3項目
- 旅費:全額支給か。飛行機・指定席は使えるか
- 乗船サイクルの実績:「直近1年で、実際に何ヶ月乗って何日休めたか」を聞く(求人票の数字ではなく実績)
- ボーナス:支給実績(基本給の何ヶ月分×年何回)
特に重要なのが「直近1年の実績」を聞くことです。会社案内や求人票に書いてある「3ヶ月乗船1ヶ月休暇」はあくまで建前。実際にその通りに運用されているかどうかは、聞かなければ分かりません。
訪船見学を申し込む
面接の段階で「一度船を見学させてもらえませんか?」と聞いてみてください。訪船見学を快く受け入れてくれる会社は、船内環境に自信がある証拠です。逆に断る会社は要注意。

「おかしい」と思ったらすぐ行動する
入社後に「これはおかしい」と感じることがあったら、我慢し続ける必要はありません。法律を知っていれば、ブラック企業に対しても冷静に対処できます。
内航業界のブラック企業に共通しているのは、「船員が法律を知らない」ことにつけ込んでいるという点です。旅費を出さないのも、手帳を預けるのも、法律上はNGなのに、知らなければ「そういうものだ」と受け入れてしまう。
実際に、「労基局に相談する」と一言伝えただけで、それまで拒否していた旅費を出してきた会社もあります。知識は最強の防御です。
困ったときの相談先
- 地方運輸局の船員労政課:旅費不払い、手帳免状の不当留置、乗船延長など
- 労働基準監督署:賃金未払い、安全衛生法違反など
- ハローワーク:離職票が届かない場合
- 税務署:源泉徴収票が届かない場合
- 国交省の船員向け相談窓口:上記すべてに対応。第三者への相談は客観的で失敗が少ない
退職の具体的な手順については、退職マニュアルの記事で詳しく解説しています。


まとめ
この記事のポイント
ブラック船会社の9つのサイン
①上下船の旅費を全額出さない
②船員手帳・免状を預けさせる
③乗船延長が常態化している
④休暇の約束を口頭だけで済ませる
⑤ボーナスが異常に少ない or ない
⑥安全管理がずさん
⑦厚生年金や手当を会社がピンハネしている
⑧食料金を船長や会社が横領している
⑨定員割れ(欠員)のまま航行している
求人の見極め方
・海のハローワークは無料で使えるが、ブラック求人も混在。スカウト=良い会社とは限らない
・求人票の数字を鵜呑みにしない。「給料良い・休暇回る・みんな良い人」の釣り3点セットに注意
・本当に良い会社は、わざわざアピールしなくても人が辞めない
・海技者セミナーは出展費がかかるため信頼度が高い。直接話せるのが最大のメリット
入社前にできること
・ネット調査3点チェック(5分):①HPの有無 ②船名でGoogle検索(海難審判の事故報告が出てこないか) ③住所・電話番号の重複(ペーパーカンパニーの可能性)
・面接では「直近1年の実績」を聞く。旅費・乗船サイクル・ボーナスは最低限確認
・訪船見学を受け入れる会社は信頼できる可能性が高い
・ねんきんネットに登録して、自分の年金記録を定期的に確認する
入社後に「おかしい」と感じたら
・法律を知っていればブラック企業は怖くない
・困ったら国交省の船員向け相談窓口へ → 国交省 相談窓口
・退職の手順は退職マニュアルを参照