この記事はこんな方におすすめ
- 「3級と4級、どっちを受けるか迷っている」
- 「3級は4級の何倍くらい難しいのか知りたい」
- 「sin/cosが出ると聞いて不安になっている」
- 「独学で合格できるか確認したい」
- 「4級海技士の勉強法や勉強時間を知りたい」
- 「航海士と機関士、どっちを選ぶか迷っている」











結論:3級と4級の難易度の差は「航海だけ」
3級は4級の約1.5倍難しい、というのが3級・4級両方を受験した管理人の体感です。
ただし、「全部が1.5倍難しい」わけではありません。試験科目は3級・4級ともに航海・運用・法規の3科目ですが、難しくなるのは航海だけで、運用と法規はほとんど変わりません。
科目別の違いを表にまとめました。
| 科目 | 4級 | 3級 | 難易度の変化 |
|---|---|---|---|
| 航海 | 暗記+天測計算(足し引きのみ) | 暗記+天測計算(sin/cos追加)+海図作業 | ★★★ 大きく上がる |
| 運用 | ほぼ暗記 | 暗記+トリム計算が追加 | ★☆☆ 少し上がる |
| 法規 | ほぼ暗記 | ほぼ暗記(範囲が少し広がる) | ★☆☆ ほぼ変わらない |
3級が難しく見えても、難所は航海の天測計算だけです。そこさえ乗り越えれば、独学で十分合格できます。
航海が難しくなる理由:天測計算にsin/cosが追加される
3級と4級の一番大きな違いは航海の天測計算です。何が変わるかを具体的に見ていきます。
4級の天測計算
- 正午の観測だけ(子午線高度緯度法)
- 計算は90°からの足し引きのみ
- 「同名/異名」の3パターンを覚えれば解ける
3級の天測計算
- 正午の観測(4級と同じ)
- 午前の観測が追加→ sin/cosを使った計算が必要
- 平均中緯度航法で正午の推測位置を計算
- 位置決定用図(海図作業)で最終的な船位を求める
「sin/cos」と聞くと身構えてしまいますが、三角関数の理論を理解する必要はありません。関数電卓に決まった公式を打ち込むだけで、手順は毎回まったく同じです。変わるのは数値だけで、パターンを体で覚えてしまえば作業になります。
筆者も最初は「sin/cosって何?」という状態でしたが、理屈を追うのは諦めて電卓の打ち順をパターンとして覚えたら一気に進みました。三角関数を「理解する」のではなく「手順として暗記する」のがコツです。
また、4級の天測計算(正午の3パターン)は3級でもまったく同じステップで出てくるため、4級で覚えた知識はそのまま使えます。
運用と法規:4級の知識がほぼそのまま使える
運用と法規は、3級でも4級の知識がベースになります。追加される要素はごくわずかです。
運用で追加されるもの
トリムの計算(てこの原理を使う計算問題)が加わりますが、覚える公式は2つだけで出題パターンも限られています。操船・錨泊・防火の暗記問題は4級と変わりません。
法規で追加されるもの
4級は海上衝突予防法・海上交通安全法・港則法の3本が中心ですが、3級ではこれに船員法・船舶安全法などの出題が加わります。ただし法規は過去問の繰り返しで対応できる科目で、難易度的には4級と大きく変わりません。
4級海技士の勉強法と勉強時間











4級海技士の筆記試験は、独学で十分合格できる試験です。必要な勉強時間と進め方をまとめます。
| 項目 | 4級 | 3級 |
|---|---|---|
| 勉強時間の目安 | 50〜60時間(2〜3週間) | 80〜100時間(3〜4週間) |
| メインの教材 | 成山堂 or 海文堂の過去問集 | 同左+関数電卓 |
| 追加で必要なもの | コンパス・ディバイダー・三角定規 | 同左 |
| 勉強の核 | 過去問5年分を繰り返す | 過去問5年分+天測計算を手順で覚える |
道具の選び方:失敗しないために
勉強を始める前に道具を揃える必要がありますが、初めての人は何を買えばいいか迷いがちです。ポイントだけ整理します。
関数電卓
筆者はCASIO fx-375ESを使用しました。試験規定でプログラム機能がついていない関数電卓であることが条件です。4級の天測計算は足し引きだけなので関数電卓の高度な機能は使いませんが、3級に進むとsin/cosが必要になるので、最初から関数電卓を買っておくのがおすすめです。
コンパス・ディバイダー
海図問題で距離を測るのに使います。100均のコンパスは精度が低くずれやすいので非推奨です。ディバイダは両方が針のタイプを選んでください(鉛筆側だと精度が落ちます)。Amazonで1,000円前後のものを買えば十分です。
三角定規・練習用海図
三角定規は海図の上で使うので、小さすぎると作業しにくいです。迷ったら35cm前後のものを選べばOK。練習用海図は第15号・第16号の2種類があり、どちらが出題されるかは回によって異なるので両方買っておきましょう(各198円)。
4級の勉強の進め方
合格ラインは総計65%です。ただし、全科目を一度に受験する場合は各科目で50%以上を取りつつ、全体で65%以上が必要です。科目合格を狙う場合はその科目で65%以上が条件になります。
つまり、航海が配点的に最重要なのは間違いありませんが、運用と法規を極端に捨てる勉強法は危険です。航海を最優先に固め、運用→法規の順で仕上げるのが最短ルートです。
STEP1:過去問を1回通して解く(3〜4日)
まず問題の全体像を把握します。4級は暗記が中心なので、最初は答えを見ながら流して読むだけでもOKです。この段階では「どの科目にどんな問題があるか」を知ることが目的です。正答率は気にしなくて大丈夫です。
STEP2:航海の天測計算を仕上げる(3〜4日)
天測計算は90°からの足し引きと「同名/異名」の3パターンだけ。手を動かして5問も解けばパターンがつかめます。最初の1〜2問は答えを見ながらでも構いません。3問目から答えを見ずに解いてみて、手順が再現できるか確認してください。
STEP3:過去問を繰り返す(残りの日数)
2周目以降は間違えた問題だけを集中的に潰します。暗記問題は「答えを見て思い出せるかどうか」で仕分けて、覚えていない問題だけ繰り返すのが効率的です。科目合格を狙わず全科目を一気に受けるのが鉄則です。



























乗船中の勉強は可能?
4級は暗記が中心なので、ワッチの合間やフリータイムにテキストを読むだけでも対策になります。ただし天測計算は机に向かう時間が必要です。休暇中にまとめて計算問題を潰し、乗船中は暗記科目を回す、という使い分けがおすすめです。
独学が向かないケース
海技士の筆記試験は独学で十分合格できます。ただし以下のケースでは、勉強順や教材選びを工夫した方がスムーズです。
計算問題でつまずくとそこで止まってしまうタイプの人は、天測計算を後回しにして暗記科目から先に片づけると精神的に楽です。申請期限が迫っている場合は、全科目一発合格より科目合格を狙って確実に取れる科目から押さえていく方が現実的です。乗船中しかまとまった時間が取れない場合は、暗記はスキマ時間に回し、計算問題は休暇の最初の3〜4日に集中して解く形で分けてみてください。
過去問は国土交通省のサイトで無料公開されています。
3Nが三級海技士、4Nが四級海技士です。
3級の勉強はどう変わる?
3級は4級に比べて勉強時間が30〜40時間増えますが、増えるのはほぼ航海の天測計算の分です。4級に合格してから3級に進む場合、運用と法規の追加勉強は10時間もかかりません。
3級の勉強で一番大事なのは、天測計算を「理解する」のではなく「手順として体に覚えさせる」ことです。sin/cosの意味がわからなくても、関数電卓に打ち込む順番さえ暗記すれば解けます。









4級を受ける方
過去問12回分の出題分析に基づくDay1〜Day15の日割りスケジュール、Ankiを使った暗記法、天測計算の「理屈から」解説をnoteにまとめています。
→ 【4級海技士】筆記試験に2週間で一発合格した全記録|過去問12回分を徹底分析
3級を受ける方
過去問12回分の出題分析+sin/cosの電卓操作を15ステップで解説。各科目の勉強時間の内訳と勉強順も掲載しています。
→ 【独学】3級海技士(航海)筆記の勉強法|12回分の出題分析+天測計算15ステップ完全解説
「いきなり3級」から受けるのはあり?











海技士の筆記試験に受験資格はなく、どの級からでも受験できます。合格は3年間有効なので、履歴が整ったタイミングで口述試験を受ける方法もあります。
ただし、いきなり3級の筆記を受ける場合は、4級の天測計算(正午3パターン)も事前にマスターしておく必要があります。なぜなら3級の試験に4級範囲の問題も含まれているからです。
筆者は4級を先に取得してから3級に進みました。4級の知識がそのまま3級のベースになるので、遠回りに見えてもこのルートが一番効率的です。
「いきなり3級」ルートのポイント
- 受験自体はどの級からでも可能
- 合格後、口述試験を受けるには乗船履歴が必要(3級は4級より大きい船or遠くの航行区域に乗った履歴が必要)
- 4級の天測計算をマスターしてから3級に進むのが効率的
筆記に受かった後の流れ
海技士試験は、筆記試験に受かれば終わりではありません。全体の流れは以下のとおりです。
筆記試験 → 身体検査 → 口述試験 → 免状取得
ただし、筆記試験だけを受ける段階では乗船履歴がなくても受験できます。先に筆記を通しておき、あとから履歴が整ったタイミングで口述に進む、という受け方も可能です。
科目合格には有効期間(3年)があるので、長期戦にする場合は期限を意識しておきましょう。定期試験は年4回実施されており、申請は原則として試験開始期日の35日前から15日前までです。最新の日程や申請期間は地方運輸局のページで必ず確認してください。
海技免状の取得ルートの全体像は以下の記事で解説しています。
航海科と機関科、どっちを選ぶべき?











この記事は航海の筆記試験がメインですが、「そもそも航海と機関、どっちを選ぶべきか」で悩んでいる人も多いので、求人データと仕事内容の両面から整理します。
仕事内容の違い
| 航海科(甲板部) | 機関科(機関部) | |
|---|---|---|
| 主な仕事 | 操船・見張り・荷役・係船作業 | エンジン整備・保守・機関当直 |
| 勤務場所 | ブリッジ(船橋)・甲板 | 機関室・ワークショップ |
| 体力面 | 荷役や係船作業で体を使う場面が多い | 機器の分解整備に力仕事あり |
| 向いてる人 | 海や操船が好き、外で動くのが好き | 機械いじりが好き、一人で集中できる |
| 最終ポスト | 船長 | 機関長 |
求人データで比較(4級保持者の場合)
海のハローワーク掲載求人1,662件から、4級を持っている場合の航海と機関を比較しました。
| 航海 | 機関 | |
|---|---|---|
| 応募可能な求人数 | 693件 | 514件 |
| 給与中央値(月額手取り) | 40.0万円 | 40.0万円 |
海のハローワーク掲載求人1,662件(2026年3月時点)を独自集計
4級の時点では航海の方が求人件数で約180件多く、給与中央値はどちらも40万円で同水準です。件数の選択肢を求めるなら航海、機械いじりが好きなら機関、というのがデータの示す結論です。


















実際には「航海だから」「機関だから」というよりも、乗る船の種類や会社によって仕事のきつさも給料も大きく変わります。どちらを選んでも後から変更は非常に難しいので、未経験の方は入社前に航海と機関の仕事を見学させてもらうのがおすすめです。
求人データで見る「3級と4級の本当の差」
ここまでは試験の難易度と勉強法の話でした。でも多くの人が本当に知りたいのは、「3級まで取る努力に見合うリターンがあるのか」ではないでしょうか。
海のハローワークに掲載されている求人1,662件のうち、航海の求人722件を免状レベル別に分析しました(2026年3月時点)。
応募できる求人の数
| 4級保持者 | 3級保持者 | |
|---|---|---|
| 応募可能な求人 | 693件 | 715件 |
| 手取月額の平均 | 約38.9万円 | 約38.8万円 |
| 手取月額の中央値 | 40万円 | 40万円 |
※海のハローワーク航海求人722件のうち、免状の下限条件が判明している求人を集計。2026年3月18日時点。
意外に思うかもしれませんが、求人の「件数」と「給料」だけを見ると、3級と4級でほとんど差はありません。増えるのは22件(+3.2%)だけです。
これは内航海運の求人の約8割が沿海区域の499t以下の船で、その大半が4級以上を条件にしているためです。沿海499tで働き続けるなら、4級で十分足ります。
3級の真価は「件数」ではなく「選択肢の質」
では3級を取っても意味がないのかというと、そうではありません。3級で初めて応募できるようになる22件の中身を見ると、話が変わります。
3級で初めて開放される求人の内訳
- RORO船: 4件
- フェリー: 3件
- セメント船(大型): 3件
- 練習船・実習船: 4件
- 調査観測船: 2件
- 自動車運搬船: 1件 ほか
近海区域の求人は4級だと65件ですが、3級だと76件に増えます(+16.9%)。遠洋の求人も4級の3件から6件に倍増します。
つまり3級の真価は「求人が増える」ことではなく、「近海」「大型船」「特殊船」への扉が開くことです。フェリーやROROなど定期航路の大型船で働きたい場合や、将来的に船長を目指す場合は、3級が効いてきます。
言い換えれば、3級があるかないかで変わるのは「今すぐ応募できる件数」よりも、「5年後・10年後に選べるキャリアの幅」です。今の船に不満が出てから取ろうとしても、勉強する時間も気力も確保しにくくなります。


















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結局どっちを目指すべき?4級で十分な人・3級まで取るべき人
ここまでのデータを踏まえて、「自分はどっちに進むべきか」の判断基準を整理します。
4級優先で十分なケース
まず現場に入りたい人、沿海499t以下の船で働く前提の人、できるだけ早く就職・転職したい人は4級を優先してください。4級でも693件の求人に応募でき、給与中央値は月額40万円です。「4級では仕事がない」ということはまったくありません。
3級まで取る意味があるケース
一方で、近海区域に出たい人、フェリーやROROなど大型船に乗りたい人、将来的に船長を目指す人は、3級まで取っておく価値があります。求人件数の差は22件ですが、その22件の中にしか存在しない船種があります。
判断基準はシンプルです。「今の船で足りるか」ではなく、「次に乗りたい船があるか」で決めてください。乗りたい船が4級の範囲に収まるなら4級で十分。4級では届かない船種が頭に浮かぶなら、3級まで取っておく方が後悔しません。
迷っている場合は、4級を先に取得して現場に入り、働きながら3級の勉強を進めるルートがおすすめです。4級の知識はそのまま3級に活きるので、遠回りにはなりません。
まとめ:3級は航海だけ難しい、それ以外は大差なし
| 4級 | 3級 | |
|---|---|---|
| 難易度 | ★★☆ | ★★★ |
| 勉強時間の目安 | 約50〜60時間(2〜3週間) | 約80〜100時間(3〜4週間) |
| 最大の難関 | 天測計算(足し引き3パターン) | 天測計算(sin/cos追加、海図作業) |
| 独学合格 | 十分可能 | 十分可能 |
| 合格率(筆記+口述) | 約30〜50% | 約30〜45% |
| 応募可能な航海求人 | 693件 | 715件(近海+11件) |
※合格率は受験時期・運輸局により変動します。求人データは海のハローワーク2026年3月18日時点。
3級は4級の約1.5倍の難易度。ただし難しくなるのは航海の天測計算だけで、手順を覚えてしまえば作業として解けるようになります。
運用と法規は4級の知識がそのまま活きるので、4級を先に取得してから3級に進むルートが王道です。
求人データを見ると件数や給料の差はわずかですが、近海区域や大型船への選択肢が広がるのは3級の大きなメリットです。今の環境に満足しているなら4級で十分。キャリアの選択肢を広げたいなら3級まで取っておく。判断基準はシンプルです。
筆記に合格したら、次は口述試験です
4級海技士の口述試験で実際に出題された69問の模範解答、鉄板TOP10、受験地別の傾向データをnoteにまとめています。
※この記事は筆者の3社勤務経験、海のハローワーク掲載求人データ(2026年3月・1,662件)の独自分析、および掲示板からの情報をもとに構成しています。試験の難易度や合格率は受験時期・運輸局により変動します。最新の試験情報は国土交通省の公式サイトで確認してください。

