







この記事はこんな方におすすめ
- 「組合船と未組織船の違いが分からない」
- 「どっちに就職・転職するか迷ってる」
- 「年齢によってどっちが得か知りたい」
※この記事の内容は現役・元船員の口コミをもとにした参考情報です。組合の協約内容は改定されることがあるので、最新情報は全日本海員組合や各社にご確認ください。
そもそも「組合船」「未組織船」とは?
まず用語の整理です。
組合船とは、全日本海員組合と労働協約を結んでいる会社の船のことです。給与体系・休日数・乗船期間の上限などが協約で決められています。
未組織船(味噌式)とは、組合に加入していない会社の船のことです。給料や休暇は会社ごとに独自に決められるため、良い会社と悪い会社の差が大きくなります。
船員の間では未組織船のことを「味噌(みそ)」と呼ぶことがあります。
どちらが良い・悪いという単純な話ではなく、あなたの年齢・経験・何を重視するかによって答えが変わります。
ざっくり比較表
まず全体像を把握するために、主な違いを一覧にしておきます。
| 組合船 | 未組織船 | |
|---|---|---|
| 給料の決まり方 | 標令給+職務給(協約で規定) | 会社が自由に設定 |
| 初任給(中途) | 低い(標令給が16歳スタート) | 経験・交渉次第で高くなりやすい |
| 昇給 | 毎年確実に上がる | 会社による(昇給なしも多い) |
| 年間休日(規定) | 115~146日 | 60~120日(会社による) |
| 退職金 | 手厚い傾向 | なし~少額が多い |
| トラブル時 | 組合に相談できる | 自力 or 運輸局 |
| 体感 | 制度は整っているが融通が利きにくい | 自由だが適当。どんぶり勘定の面も |
この表だけで判断せず、以下で各項目を掘り下げて解説します。
給料の仕組みが根本的に違う
組合船と未組織船では、給料の決まり方が根本的に異なります。
組合船の給料:「標令給+職務給」
組合船の基本給は「標令給」と「職務給」の2つを合わせたものです。
標令給は年齢ベースの給与で、16歳を起点に毎年上がっていきます。30歳で入社しても標令は16歳からスタートするため、中途で入ると最初の給料はかなり低くなります。
職務給は役職ごとに決まる給与で、同じ役職でも5年目くらいまでは毎年上がります。
つまり組合船は「長く勤めるほど確実に上がる」仕組みです。
未組織船の給料:会社次第でピンキリ
未組織船は会社が自由に給料を決められるので、良い会社なら組合船より高く、悪い会社なら驚くほど低いこともあります。
中途採用の場合、経験や交渉次第で最初から高い給料を提示してもらえることもあり、即戦力なら未組織の方が短期的には稼げるケースも多いです。
ただし、組合に加盟しているのに子会社で採用して協約の適用外にする会社もあるので、「組合系列だから安心」と思い込まず、自分の雇用契約がどの会社と結ばれるかは必ず確認してください。
注意:額面だけでは比較できない
ここで見落としがちなポイントがあります。





























組合船の年収には交通費や食料金が含まれていることが多いのに対し、未組織船ではこれらが別途支給(または自己負担)になることがあります。額面だけを見て「未組織の方が高い」と判断すると、実質手取りで逆転することもあるので注意が必要です。
さらに、未組織船では残業代をきちんと計算していない船も少なくありません。額面の月給が高く見えても、実際の労働時間に対して割り返すと「時給換算で割に合わない」と感じることがあります。
求人の給料を比較するときは、額面だけでなく「交通費・食料金・下船旅費・時間外手当の計算方法」まで含めた実質条件で見るのが鉄則です。
年齢別に見ると…
現場の声をまとめると、年齢によっておすすめが分かれる傾向があります。




















































































































ざっくりまとめると、20代で入社して定年まで勤める覚悟があるなら組合船が有利です。標令給が長年かけて積み上がり、退職金も手厚くなります。一方で、30代後半以降の中途なら未組織船の方が初任給は高くなりやすいです。
具体的な年収の目安
参考として、現役船員の声をいくつか紹介します。




















































































































このように、組合船は最初は安いが天井が高く、未組織船は最初はそこそこだが伸びしろが小さい傾向があります。ただしこれは一般論で、未組織船でも高収入の会社はたくさんあります。
休暇日数の違い
組合船と未組織船の最大の違いのひとつが年間の休暇日数です。
組合船の休暇
組合の労働協約では、年間休日は概ね115日~121日(有給含む)と定められています。大型CFだと120日+有給26日、旅客船でも120日前後+有給16~20日くらいです。
内訳の計算はちょっと複雑なので整理すると、こんな感じです。
二団体協約の場合の例
陸上休日105日 − 有給23日 = 82日(純粋な陸上休暇)
年間休日121日 − 82日 = 39日(船上で付与する休暇)
乗船月数は約8.5ヶ月 → 月あたり約4.5日の船上休暇
→ 陸上休暇82日 + 有給23日 + 船上休暇39日 で合計約144日
ただし、これはあくまで「規定上の日数」です。
規定通りに休めるとは限らない
ここが重要なポイントで、組合船だからといって規定通りに休めるとは限りません。























































































人手不足の会社では、協約上の休暇が取れずに6ヶ月以上の連続乗船も珍しくないのが実情です。取れなかった分は「休暇買い上げ」として金銭で精算されるのが一般的ですが、これにも上限があります。
休暇買い上げの仕組み





























買い上げの対応は会社によってさまざまです。
- 毎年きっちり買い上げてくれる会社
- 買い上げせず翌年に繰り越す会社(溜まる一方)
- 買い上げも繰り越しもなく消滅する会社
- 退職時にまとめて消化させてくれる会社


























































未組織船の休暇
未組織船の休暇は完全に会社次第です。
標準的なパターンは「3ヶ月乗船・1ヶ月休暇」、もしくは「2ヶ月乗船・20日休暇」です。年間にすると概ね90日前後の休暇になります。
ただし零細企業では、もっと少ないケースもあります。


























































こうした話は極端な例ですが、求人票の「年間休日」の定義が会社によってバラバラなのは事実です。面接の段階で「年間休日の定義に船内休暇や仮バースが含まれるかどうか」を確認しておくことを強くおすすめします。
「年間休日○日」を鵜呑みにしてはいけない理由
船員求人で一番あてにならない数字のひとつが「年間休日」です。というのも、この数字に何を含めるかが会社によってまったく違うからです。
仮バースまで含めて「年間休日100日」と説明するケースもあり、数字だけ見ても休める会社かどうかは判断できません。未組織船でも休暇がきちんと回る会社はありますが、回らない船もたくさんあります。筆者自身、年間の休みは80〜90日程度でした。
見るべきなのは「休日数そのもの」ではなく、「何日乗って何日休むサイクルが実際に回っているか」です。面接では「直近1年で、二航士(もしくは自分が就く役職)クラスは平均何日乗って何日休んでいますか」と、制度ではなく実績で聞くのがコツです。
休暇の比較まとめ
| 組合船 | 未組織船 | |
|---|---|---|
| 規定上の年間休日 | 115~146日 | 会社による(60~120日) |
| 実態 | 人手不足で規定通りに休めないことが多い | 良い会社はきっちり、悪い会社は極端に少ない |
| 取れなかった休暇 | 買い上げ or 繰り越し | 会社による(消滅する場合も) |





組合船のメリット・デメリット
ここまでの情報を踏まえて、組合船のメリットとデメリットを整理します。
メリット
- 長期勤続すれば確実に昇給する(標令給の仕組み)
- 退職金が手厚い
- 労働条件のベースラインが協約で保証されている
- トラブル時に組合に相談できる窓口がある
- 大型船が多く、教育体制が整っている傾向
- 福利厚生(ボーナス、船内設備)が良い傾向





























デメリット
- 中途入社だと最初の給料が低い(標令給が16歳スタート)
- 毎月の組合費(約6,000円)がかかる
- 人手不足の会社では長期乗船になりがち
- 時間外手当に厳しい船長・会社がある
- 組合に相談しても期待通りの交渉をしてもらえないこともある


























































未組織船のメリット・デメリット
メリット
- 経験者なら最初から高い給料を交渉できる
- 休暇がきっちり回っている会社もある
- 人間関係が合わなければ転職しやすい
- 時間外手当が柔軟な会社が多い





























デメリット
- 会社によって待遇の差が非常に大きい
- 業績悪化時に条件が一方的に変わるリスクがある
- 退職金がない・少ない会社が多い
- トラブル時に頼れる第三者機関がない





























船種や船の大きさでも変わる
同じ組合船でも船種によって実態はかなり異なります。


























































つまり「基本給は大型船が高いが、時間外込みの総支給では小型船が上回ることもある」ということです。どちらを取るかは個人の価値観次第です。
退職時のトラブルに注意
組合船・未組織船に関わらず、退職時にトラブルが起きるケースがあります。特に多いのが「辞めると言ったら休暇分の給料を払わない」というパターンです。





























退職時の休暇精算は法律で定められた権利です。もし会社が応じない場合は、運輸局に相談すれば会社に連絡が入ります。
ただし現実的には、次の会社に問い合わせされた際に悪い評判を立てられるリスクもあるので、円満退職を心がけるのがベストです。
食料金のルール
ちなみに、乗船中の食事についてもルールがあります。
船員法第80条には「船舶所有者は、船員の乗船中、これに食料を支給しなければならない」と定められています。
組合船では一般的に食料金(1日1,300円~2,000円程度)が支給されますが、未組織の零細船ではこのルールが守られていないケースもあります。





























もし食料金が出ない、停泊中に食事が支給されないなどの問題があれば、運輸局に相談するのが正しい対処法です。
困ったときの相談先は3つに分けて考える
船員の仕事探しや労働トラブルは、全部を同じ窓口に持ち込むより、目的ごとに分けたほうが話が早いです。
就職・転職の相談
求人検索や紹介依頼なら、海のハローワークネットが使えます。インターネットからでも求人を検索できますし、全国の船員職業安定窓口で直接相談することもできます。窓口の対応は丁寧なので、未経験の方でも気負わず相談して大丈夫です。
会社を比べたい・直接話を聞きたい
複数の会社を一度に比較したいなら、国交省が開催している「めざせ!海技者セミナー」(合同説明会・就職面接会)が便利です。筆者も漁業者セミナーに参加したことがありますが、実際に足を運んで話を聞くと、求人票だけでは分からない会社の雰囲気がつかめます。
賃金・休日・退職・ハラスメントの問題
給料未払い・休日・退職・ハラスメントのような労働条件の問題は、各地方運輸局に設置されている「船員労働の総合相談窓口」が公式ルートです。船員は労働基準法ではなく船員法の適用なので、陸の労基署ではなく運輸局が管轄になります。
転職前の相談(どこに入るか)と、入社後のトラブル相談(どう対処するか)は別物として考えると、かなり動きやすくなります。
求人で「年間休日50~60日」しかないんだけど…
未経験で求職登録した人から「連絡が来た求人がどブラックばかり」という声もあります。





























これは残念ながら事実です。求職者登録に対して積極的に電話してくる会社は、人が集まらない=何か理由がある会社の可能性が高いです。
だからといって船業界全体がブラックというわけではありません。良い会社は口コミや紹介で人が集まるので、求人を出す必要がないだけです。
対策としては、以下の方法がおすすめです。
- 電話が来た求人だけで判断せず、自分から海のハローワークネットで条件の良い会社を探す
- 海技者セミナー(合同説明会)に参加する
- 先輩船員や知人から情報を集める
- 求人の「年間休日」の定義を必ず確認する(仮バース含むかどうか等)
面接で必ず確認すべき7項目
求人票の「年間休日○日」だけでは、実際の働き方は分かりません。面接では最低でも以下の7つは確認しておくべきです。
面接で聞くべき7項目
② 実際の平均乗船期間は何日くらいか(制度ではなく実績)
③ 取り切れなかった休暇は繰越か、買い上げか、消滅か
④ 上下船旅費と食料金は別支給か
⑤ 時間外手当はどう計算するか
⑥ 退職金はあるか
⑦ 欠員時にどれくらい延長乗船が起きるか
この7つに曖昧な返答しかできない会社は、入社後も条件が見えにくい可能性があります。海のハローワークネットや船員職業安定窓口、海技者セミナーも併用して、1社だけで判断しないのが安全です。
→ 未経験・無資格・借金150万から船員になった僕の3社転職記録
結局どっちがいいの?年齢×タイプ別おすすめ
最後に、年齢と重視ポイント別のおすすめをまとめます。
| 年齢 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 10代~20代前半 | 組合船 | 標令給の積み上がり+退職金+教育環境。長期勤続の恩恵が最大 |
| 20代後半~30代前半 | 組合船 or 未組織(要検討) | 組合船なら定年までのメリット大。ただし最初の給料は安い |
| 30代後半 | どちらでも | 組合船のメリットが薄れ始める。会社の質で選ぶ |
| 40代以降 | 未組織船 | 標令給が追いつかない。経験を活かして待遇交渉できる未組織が有利 |
ただし、年齢だけで決まるわけではありません。たとえば30代でも未経験で教育重視なら組合船寄りですし、20代でも即年収重視なら未組織のほうが合うこともあります。「自分が何を一番優先するか」を先に決めてから、組合か未組織かを選ぶのが失敗しにくい考え方です。





































→ 未経験・無資格・借金150万から船員になった僕の3社転職記録
※この記事は現役・元船員の口コミをもとに構成しています。組合の協約内容や各社の待遇は時期により変わります。就職・転職の際は最新情報を全日本海員組合や各社に確認してください。





