この記事はこんな方におすすめ
- 「船員のまま公務員になれるのか知りたい」
- 取締船・調査船の求人を見かけたが、民間とどう違うのか分からない
- 手取りより安定・日帰り・定年まで働ける船を探している
※この記事は、海のハローワークネットの求人データ(2026年2月〜10月に12回取得、ユニーク求人6,708件)を筆者が独自に集計したものと、船員コミュニティの口コミをもとに構成しています。数値は求人票の記載に基づく目安で、実際の待遇は採用先・時期により異なります。
船員の公務員求人はどれくらいあるのか














「船員 公務員」で検索する人の多くは、海上保安庁や海上自衛隊を思い浮かべます。ただ、それは「公務員になってから船に乗る」ルートです。この記事で扱うのは逆で、海技免状を持った船員が、公務員として船に乗る求人です。
筆者は2026年2月から10月にかけて、海のハローワークネットの全求人を12回取得し、同じ求人番号を名寄せしたうえで、事業所名と船種から「公務員・公的機関・官公庁船」の求人を抜き出しました。結果は次のとおりです。
| 区分 | 求人数(8ヶ月のユニーク) | 事業所数 | 各回の掲載数 |
|---|---|---|---|
| ① 公務員として採用(国・都道府県・市町村・警察・税関など) | 123件 | 55 | 11〜34件 |
| ② 大学・高専・独立行政法人・研究機関 | 46件 | 10 | 6〜17件 |
| ③ 民間会社が運航する官公庁船(取締船・調査船の受託運航) | 157件 | 26 | 20〜47件 |
| 民間の船会社(参考) | 6,369件 | 956 | 915〜1,582件 |
※海のハローワークネット掲載求人を2026年2月28日〜10月20日に12回取得し、求人番号で名寄せして独自集計
①〜③を合わせると326件で、全求人の約5%です。多くはありませんが、どの時点を切り取っても20件以上の公務員求人が載っているので、「公務員の船員求人はほとんどない」というのは思い込みです。
海のハローワークネットの使い方と求人票の読み方は、別記事にまとめています。
官公庁の船に乗る3つのルート














① 公務員として採用される(国・都道府県・市町村)
都道府県の漁業取締船・漁業調査船、県警の警備艇、税関の監視艇、国土交通省の浚渫船や巡視船、市町村の離島航路。これらは自治体や省庁が船員を直接雇用しています。身分は公務員(任期付きの場合もあります)で、給料は各自治体の給与条例や国の俸給表で決まります。
求人票を見分けるポイントは2つです。事業所名が「○○県」「○○市役所」「○○税関」のように役所そのものになっていること。そして、保険の欄が「その他」になっていることです。公務員は船員保険ではなく共済組合に入るため、求人票の保険欄が民間と違います(123件中90件が「その他」でした)。
② 大学・高専・研究機関の船員になる
東京海洋大学・北海道大学・鹿児島大学などの練習船、商船高専や富山高専の練習船、海技教育機構、道総研の水産試験場など、公的な教育・研究機関も船員を雇用しています。身分は法人職員で、厳密な公務員ではありませんが、待遇は公務員に準じます。
このグループの特徴は福利厚生の厚さです。労働協約あり72%、司厨員が乗る船87%、WiFi対応82%、女性設備対応87%、年間有給の中央値25日。民間ではどれも半分以下の数字です。東京海洋大学の求人には「乗船は最長連続3ヶ月程度」「雇用船員74人のうち女性9人」と明記されていました。
③ 民間の船舶会社から官公庁船に乗る(受託運航・傭船)
海のハローワークネットで「漁業取締船」「調査観測船」の求人を出している事業所の大半は、実は民間の船舶会社です。水産庁や研究機関の船を、民間会社が船員ごと請け負って運航する形で、157件と①より多い。
筆者は民間会社から官公庁系の船に傭船で乗った経験があります。仕事の中身は官公庁の業務でも、雇い主は民間会社なので身分は公務員ではなく、給料体系も保険も民間と同じです。求人票の事業所名が「株式会社」なら、このルートだと考えてください。
掲示板でも、官船(公務員)と傭船(民間受託)の違いは早い段階で指摘されています。
その代わりに漁船の知識ってのも必要になる。
漁種、季節、海域、水温、潮流etc
乗れるなら官船。傭船は安いよ。






官船はしらんが用船だと停泊当直とかあるし休みの日でもなんやかんや働かされたり
逆にきっちり休みみたいのがなくて疲れるかもな






③の乗船サイクルは求人票に具体的に書かれていることが多く、「1航海8〜10日、航海ごとに中2〜3日の休暇、年に数回2〜3週間の休暇」「年間航海日数220日前後」といった記載が典型です。司厨員が乗る船が97%、WiFi対応が99%と、生活環境は民間の中でも良い部類です。








給料・賞与・残業・定年|民間の求人と並べて比較する














求人票に記載があったものだけを集計した中央値です。
| 項目 | ① 公務員 | ② 大学・研究機関 | ③ 民間運航の官公庁船 | 民間の船会社 |
|---|---|---|---|---|
| 手取り下限(月) | 23.3万 | 24.5万 | 23.0万 | 36.0万 |
| 手取り上限(月) | 30.0万 | 30.8万 | 30.0万 | 45.0万 |
| 賞与(年) | 5.0ヶ月 | 5.0ヶ月 | 4.0ヶ月 | 2.0ヶ月 |
| 平均残業(月) | 10時間 | 10時間 | 0時間 | 20時間 |
| 年間有給 | 20日 | 25日 | 15日 | 16日 |
| 定年 | 62歳が最多(65歳も) | 65歳が最多 | 60歳が最多 | 60歳・65歳 |
| 未経験可 | 85% | 87% | 61% | 20% |
| 保険 | 共済(「その他」) | 船員保険が多い | 船員保険 | 船員保険 |
※手取りは記載のある求人のみ(①69件・②29件・③149件・民間5,711件)。賞与は「○ヶ月分」の記載がある求人のみの中央値
手取りの差は月13万円です。ただし賞与の差が大きく、民間の2ヶ月に対して公務員は5ヶ月。手取り月額に「12+賞与月数」を掛けた概算で並べると、民間が約500万、公務員が約400万になります。年収ベースでも公務員のほうが2割ほど低いというのが、求人票から読める現実です。
一方で、残業は半分、有給は多く、定年は長い。民間の内航船員が「乗船中の出費が少ないから貯まる」のに対して、公務員船員は「長く・安定して・体を壊さずに働く」ことで帳尻を合わせる働き方です。
掲示板では、県の調査船について給料の上限がはっきり語られています。






これは重要な指摘で、公務員の船員は多くの自治体で「技能労務職」や「船舶職員」という区分で採用されます。一般行政職のように管理職へ上がる昇給カーブとは別の扱いになることが多く、「公務員だから年功で上がり続ける」とは限りません。求人票の備考欄に「給与は○○市職員給与条例による」とだけ書かれている場合は、採用ページで給料表の区分を確認してください。
民間船員の給料相場は、船種別・役職別に別記事でまとめています。
どんな船に乗るのか|取締船・調査船だけではない














①公務員123件の船種の内訳です。
公務員求人123件の船種(2026年2〜10月)
・巡視船/警備艇:24件(県警・税関・防衛事務所・国交省地方整備局)
・漁業取締船:20件(都道府県)
・旅客船・フェリー:25件(市町村の離島航路)
・練習船/実習船:11件(県立水産高校・海洋高校)
・浚渫船:7件(国交省の港湾事務所)
・調査観測船:4件(気象庁・東京都など)
船種ごとに、働き方はまったく違います。求人票の記載から、いくつか具体例を挙げます。
税関の監視艇──「原則日帰り(月に1〜2回程度船中泊の場合あり)」「土日祝日、年末年始が休み」と、陸上勤務に近い働き方です。手取りは機関士で22〜40万円の幅で、国家公務員宿舎あり、転勤の可能性ありと記載されていました。
国交省の浚渫船──「原則月曜出港〜金曜帰港」で、週末は自宅に帰れます。甲板員で手取り31万円、賞与4.6ヶ月という求人がありました。公務員の中では高めの水準です。
県の漁業取締船──熊本県の求人では「漁業取締事務所または水産研究センターに勤務」「配属先は未定」「採用は航海士5人・機関士2人」「受験資格は45歳以下、免許取得見込みでも可」と、採用試験の案内そのものが求人票に書かれていました。船に乗るだけでなく、陸上の事務所勤務が含まれるのが公務員らしい点です。
市営・村営のフェリー──離島航路の船長・機関長の求人で、「乗船勤務または陸上勤務(運航管理)」と書かれているものが目立ちます。給料は市職員給与条例によるため、手取りの記載がない求人が多く、記載がある例では船長で17万円台(賞与1.3ヶ月)という低い水準のものもありました。
調査船については、掲示板で「楽」と「当たり外れ」の両方が語られています。












公務員の船は少人数で乗組員が固定されやすく、民間のように「合わなければ次の船へ」という逃げ方がしにくい構造です。人間関係のリスクは、安定の裏返しとして残ります。警備艇では、船員が技術職員として採用され、警察官との間に上下の空気があるという声もありました。
船種ごとの働き方の違いは、別記事で18船種を比較しています。
応募の現実|採用試験・年齢上限・免状・任期














採用試験がある
公務員123件のうち45件は、備考欄に「詳細はホームページの採用案内を確認」と書かれていました。採用選考や試験日を明記している求人も25件あります。熊本県の例では、7月・9月・11月の3回の試験日が設定され、県のホームページで「船舶職員選考」を検索するよう案内されていました。
つまり、求人票を見て電話をかけて乗る、という民間の流れとは違います。募集期間(中央値51日)の間に、必要書類を揃えて選考を受けるのが公務員ルートです。
年齢上限がある
公務員求人の年齢上限は、記載のある95件の中央値が59歳です。ただし分布には2つの山があります。
公務員求人の年齢上限(記載のある95件)
・45〜50歳:16件
・54〜65歳:50件(定年までの採用)
・記載なし:28件
警察の警備艇や一部の県の取締船は、若手採用の枠です。一方、市営航路や水産試験場には60歳前後まで応募できる求人もあります。年齢で足切りされるかどうかは、求人票の年齢欄を最初に見てください。
機関の免状が強い
公務員123件の職種は、機関士25・機関員19・機関長12と、機関部で56件。航海士17・甲板員21の航海部より多くなっています。免状の要件は機関5級が最多で、次いで機関6級・機関4級・航海5級・航海6級。5級か6級で応募できる求人が要件記載分の7割を占めます。
上級免状は必須ではありませんが、同じ求人に経験者が応募すれば順位は下がります。5級・4級の筆記対策は別記事にまとめています。
「公務員」でも任期付きがある
公務員123件のうち28件(23%)は雇用期間区分が「期間雇用」でした。任期付きの船舶職員や臨時的な採用で、公務員の求人イコール終身雇用ではありません。求人票の「雇用期間区分」と備考欄の任期の記載を確認し、更新の有無を採用担当に聞いてください。
→ 未経験・無資格・借金150万から船員になった僕の3社転職記録
公務員の船員に向いている人・向いていない人
向いている人
・日帰りや週末帰宅など、陸に近い生活リズムで船に乗りたい
・取締・調査・教育といった「運ぶ以外の仕事」に関心がある
・機関の免状(5級以上)を持っている、または取る予定がある
・採用試験の準備と、募集期間に合わせた転職活動ができる
向いていない人
・乗船中に集中して貯めて、休暇でまとめて休む働き方が好き
・合わない船からすぐ移りたい(公務員は異動が少なく、人間関係が固定されやすい)
・年齢上限(警察系は30〜35歳、県によっては45歳)を超えている
海上保安庁・海上自衛隊から内航への転職や、学校から公務員船を目指すルートは、それぞれ別記事で扱っています。
まとめ
この記事のポイント
- 海のハローワークネットには公務員の船員求人が常時20〜30件ある(8ヶ月で123件・55機関)
- 官公庁の船に乗るルートは3つ。①公務員として採用 ②大学・研究機関 ③民間会社の受託運航。③は公務員ではない
- 手取りは民間より月13万低いが、賞与5ヶ月・残業10時間・定年62〜65歳。年収ベースでは2割ほど低い
- 船種は取締船・調査船のほか、市営フェリー・税関監視艇・浚渫船・実習船。日帰りの船もある
- 応募は各機関の採用試験。年齢上限(40歳以下が29件)と任期付き(23%)に注意
- 職種は機関部が多く、免状は機関5級が最多。5級・6級で応募できる求人が7割
この記事を読んだあと、最初にやること3つ
- ① 海のハローワークネットで事業所名を見る:「県」「市役所」「税関」「国土交通省」なら公務員、「株式会社」なら民間の受託運航です
- ② 年齢上限と雇用期間区分を確認する:年齢で足切りされていないか、「期間雇用」なら任期と更新の有無を採用担当に聞く
- ③ 採用ページで給料表の区分を確認する:「給与条例による」としか書かれていない求人は、技能労務職か一般職かで昇給カーブが変わります
※この記事は、海のハローワークネットの求人データ(2026年2月28日〜10月20日に12回取得、求人番号で名寄せしたユニーク求人6,708件)を筆者が独自に集計したものと、船員コミュニティの口コミをもとに構成しています。公務員・公的機関・民間受託の分類は事業所名と船種から筆者が判定したもので、各機関の正式な身分区分を保証するものではありません。口コミ部分は投稿者の主観であり、すべての職場に当てはまるものではありません。採用条件・給与・任期は必ず各機関の採用案内でご確認ください。





