







この記事はこんな方におすすめ
- 「船員の人手不足って具体的にどのくらい?」と気になっている方
- 「船員への転職を検討していて、求人状況を知りたい方」
- 「甲板部と機関部、どちらが求人が多いか知りたい方」
この記事では、国土交通省が公表している「船員職業安定年報」の令和5年〜令和7年のデータをもとに、船員の求人・求職・成立数の推移と、部門別・船種別の求人倍率を整理しています。
船員の有効求人倍率は4.97倍
令和7年の船員の有効求人倍率は4.97倍でした。同時期の陸上の有効求人倍率は1.19倍(令和7年12月・季節調整値)なので、船員1人に対して約5社が求人を出している計算になります。
この倍率は年々上がっています。
| 令和5年 | 令和6年 | 令和7年 | |
|---|---|---|---|
| 有効求人倍率 | 3.95倍 | 4.78倍 | 4.97倍 |
ただし、倍率が上がった理由は「求人が増えたから」ではありません。新規求人数は3年間でほぼ横ばいです。倍率が上がっている最大の理由は、求職者の減少です。
この数字をどう読むか
倍率が高いということは、応募先の選択肢が多いということです。ただし、それは「条件の良い会社が多い」という意味ではありません。
求人倍率が高い市場で大事なのは、「入れるかどうか」ではなく「入ったあと続けられるかどうか」です。人手不足だからこそ採用のハードルが下がることがあります。そのぶん、応募する側が条件を見極める力がより重要になります。
この記事のデータは「どのくらい足りていないか」を示すものです。「だから今すぐ転職すべき」ではなく、自分がどの部門・どの船種を狙うのかを考える材料として使ってください。
求職者が減り続けている
3年分の全体像を並べると、求人と求職の動きの違いがはっきり見えます。
| 令和5年 | 令和6年 | 令和7年 | 3年変化 | |
|---|---|---|---|---|
| 新規求人数 | 15,251 | 14,926 | 15,068 | ほぼ横ばい |
| 新規求職数 | 3,226 | 2,622 | 2,574 | −20.2% |
| 成立数 | 709 | 545 | 462 | −34.8% |
| 有効求人倍率 | 3.95倍 | 4.78倍 | 4.97倍 | +1.02pt |
| 充足率 | 1.88% | 1.45% | 1.21% | −0.67pt |
| 就職率 | 7.43% | 6.94% | 6.01% | −1.42pt |
求人は3年間で15,000件前後を維持しています。一方、新規求職者数は3,226人から2,574人に減り、3年で約20%減少しました。
その結果、運輸局を通じた求人と求職のマッチング(成立数)は709件から462件に減り、3年で35%近く落ちています。
充足率は1.21%まで低下しました。充足率とは「月間有効求人数に対する成立数の割合」で、簡単に言うと求人がどのくらい埋まったかを示す指標です。
成立数が減っていることの意味
成立数が3年で35%減っているということは、会社側から見ると「求人を出しても以前より採用できなくなっている」ということです。求職者側から見ると「応募できる会社はたくさんあるが、運輸局の窓口を使って就職する人自体が減っている」ということです。
つまり今の船員市場は、求人は多いのにマッチングが成立しにくい状態にあります。会社側が条件を改善しないと人が来ない、という構造が数字に表れています。






海のハローワーク経由と直接応募の違い
実際の船員転職では、運輸局を通さずに会社に直接連絡して採用されるケースも多くあります。筆者の場合、3社のうち2社は運輸局経由で、残り1社は会社のホームページから直接応募して入りました。
運輸局経由のメリットは、求人条件が一定の書式で公開されていて比較しやすいことです。一方、直接応募のメリットは、求人票を出していない会社にも声をかけられることです。
気になる会社があるなら、海のハローワークネットで求人を探すだけでなく、会社のホームページを直接確認してみるのもおすすめです。求人を出していなくても、問い合わせたら「ちょうど人を探していた」というケースは珍しくありません。
甲板部と機関部の差
「人手不足」と一口に言っても、部門によって状況はかなり違います。月間有効求人倍率を甲板部と機関部で比較してみます。
| 令和5年 | 令和6年 | 令和7年 | |
|---|---|---|---|
| 甲板部 求人倍率 | 3.67倍 | 4.40倍 | 4.62倍 |
| 機関部 求人倍率 | 5.12倍 | 6.05倍 | 6.23倍 |
甲板部の4.62倍に対して、機関部は6.23倍。機関部のほうが求人倍率が約1.3倍高く、人手不足がより深刻です。
この差は3年間で一貫しており、機関部は常に甲板部を上回っています。
船種ごとの働き方の違いはこちらの記事で詳しく解説しています。
船種別に見ると差がさらに開く
機関部の求人倍率を船種別に見ると、船種によって大きな差があります。令和7年の新規求人数・新規求職数から算出した倍率です。
| 船種 | 機関 求人 | 機関 求職 | 新規求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 内航 | 3,046 | 454 | 6.71倍 |
| 近海 | 665 | 48 | 13.85倍 |
| 旅客船 | 288 | 67 | 4.30倍 |
| その他(曳船・作業船等) | 965 | 110 | 8.77倍 |
| 漁船 計 | 514 | 39 | 13.18倍 |
近海の機関は13.85倍、漁船の機関は13.18倍です。内航の6.71倍と比べても倍以上の差があります。
機関職員の求職者が減り、機関部員の求人が増えている
この差をもう少し掘り下げると、商船等の機関部では2つの動きが同時に起きています。
ひとつは機関職員(免状を持つ機関士)の求職者が3年で22.3%減っていることです。令和5年の726人から令和7年の564人に減りました。免状保有者が求職市場に出てこなくなっています。
もうひとつは、機関部員(免状なし)の求人が3年で16.8%増えていることです。令和5年の647件から令和7年の756件に増えました。免状を持った機関士が見つからないため、免状がなくても採用したいという動きが広がっていると考えられます。
現場で「機関士が足りない」という声はよく聞きますが、統計データでもその傾向がはっきり表れています。機関部は甲板部に比べて仕事の専門性が高く、陸上の整備工場やメーカーとも人材を取り合う構造があるため、求職者が集まりにくい面があります。
未経験者はどう見るべきか
未経験から船員を目指す場合、このデータは「入りやすさの目安」にはなりますが、そのまま「簡単に入れる」という意味にはなりません。
求人倍率が高いのは主に免状保有者(職員)の市場です。未経験者が応募できるのは部員の求人が中心になるため、倍率の数字がそのまま自分に当てはまるわけではありません。
ただし、機関部員の求人が3年で16.8%増えていることからも分かるように、未経験者を受け入れる土壌は広がっています。未経験で船員を目指すなら、「どの部門のどの船種に入るか」を先に決めてから求人を探したほうが、ミスマッチを減らしやすいです。






未経験から船員になる方法はこちらにまとめています。
辞める人は増えている
求職者が減っているということは、「船員になりたい人が減っている」のか、それとも「辞める人は増えているけど求職登録しない」のか。
失業等給付(雇用保険)の受給状況を見ると、ヒントがあります。
| 令和5年 | 令和6年 | 令和7年 | |
|---|---|---|---|
| 失業保険 受給者延件数 | 1,672 | 1,410 | 1,549 |
| 支給金額(千円) | 247,797 | 203,652 | 234,387 |
令和6年にいったん減少した受給者数が、令和7年で1,549件に増加に転じています。支給金額も同様に増えています。
辞める船員は増えている一方で、新規の求職者数は減り続けている。この2つの事実を合わせると、辞めた後に別の業界に転職しているか、運輸局を通さずに直接会社に応募しているケースが多いと考えられます。
いずれにしても、船員になりたい人が公的な窓口を通じて船員市場に入ってくる流れは、年々細くなっています。
応募前に確認しておきたいこと
船員不足のデータを見て転職を考えるなら、応募前に最低限確認しておきたいポイントがあります。
① 乗船期間と休暇の回し方
求人票の給与だけでなく、実際にどれくらい乗って、どれくらい休めるのかを確認してください。同じ「2ヶ月乗船」でも、月に仮バースが何日あるかで体感のきつさはまるで違います。筆者の経験では、月1日の会社と月7日の会社がありました。
② 必要資格と教育体制
「資格がなくても入れるか」だけでなく、「入ってからどう育てる前提なのか」も見たほうが安心です。特に未経験者やこれから上位資格を目指す人にとっては、教育体制の有無が長く続けられるかどうかに直結します。
③ 応募経路は複数持つ
この記事のデータは海のハローワーク経由の数字ですが、実際には会社ホームページや紹介で採用されるケースも多いです。海のハローワークネットで求人を比較しつつ、気になる会社には直接問い合わせてみると選択肢が広がります。
ブラック船社の見分け方はこちらにまとめています。
まとめ
この記事のポイント
- 船員の有効求人倍率は4.97倍。陸上(1.19倍)の約4倍
- 求人は横ばいだが、求職者が3年で20%減少
- 成立数は3年で35%減。充足率は1.21%
- 機関部(6.23倍)は甲板部(4.62倍)より人手不足が深刻
- 近海の機関は13.85倍、漁船の機関は13.18倍
- 失業保険の受給者は令和7年で増加に転じている






→ 未経験・無資格・借金150万から船員になった僕の3社転職記録
※この記事は国土交通省「船員職業安定年報」令和5年・令和6年・令和7年のデータをもとに構成しています。陸上の有効求人倍率は厚生労働省の公表値(令和7年12月・季節調整値)を使用。データは学卒者を除く数値です。


