この記事はこんな方におすすめ
- 司厨の仕事内容や1日の流れを知りたい
- 司厨の仕事がきついか知りたい
- 船舶料理士の資格や給料が知りたい
- 司厨を目指すために必要なものが知りたい
司厨員(船のコック)ってどんな仕事?


司厨員とは、船に乗って乗組員の食事を作る仕事です。
甲板部や機関部のように航海や機械の操作をするのではなく、ギャレー(調理場)で朝・昼・夜の3食を作り、食材の仕入れや管理まで担当します。
船の世界では呼び方がいくつかあって、正式には司厨長>司厨次長>司厨手>司厨員という序列がありますが、現場では「しちょうじ」「オヤジさん」と呼ばれることが多いです。
船舶料理士の資格は必要?
司厨として働くために資格は必須ではありません。
ただし、遠洋区域・近海区域を航行する総トン数1,000トン以上の船舶で調理業務を管理する立場に就く場合は、船舶料理士資格証明書が必要です。
また、船会社によっては「船舶料理士・調理師・栄養士」のいずれかを応募条件にしているところもあります。
資格がなくても働ける船としては、乗船人数が5〜6人の比較的小さな船や、司厨が複数人乗っている船がおすすめです。
そこで経験と実績を積みながら資格を取得するルートが現実的です。
ちなみに、内航船の食料金は1日あたり1,200円〜2,000円程度が相場で、この予算の中で人数分の食事を作ります。
総トン数499t以下の小さな船では司厨員が乗っていないことが多く、乗組員が交代で飯当番をしたり、各自で自炊するのが一般的です。
司厨の1日の流れ
筆者が以前乗っていた内航船での司厨の1日を紹介します。
船の予定によって仕事の段取りが大きく変わるので、航海中と荷役がある日の2パターンを載せておきます。
航海中の1日
- 03:00 起床
- 03:30 朝食の準備
- 04:30 朝食完成
- 休憩
- 07:00 洗い物&昼食準備
- 10:00 昼食完成
- 12:00まで昼食提供&夕食準備
- 休憩
- 13:30 夕食準備
- 15:30 夕食完成
- 休憩
- 17:00 片付け&次の日の準備
- 18:00〜起きるまで自由時間
荷役がある日の1日
- 03:00 起床
- 03:30 朝食の準備
- 04:30 朝食完成
- 05:00 昼食準備
- 08:00 昼食完成&着桟スタンバイ
- 09:00 買い物
- 12:00 買い物終了&帰船
- 13:00 離桟スタンバイ&夕食準備
- 15:30 夕食完成
- 休憩
- 17:00 片付け&次の日の準備
- 18:00〜荷役が終わってなければ終わるまで手伝い
- 荷役が終わり次第自由時間
特に荷役がある日は休憩もまともに取れず、移動中のタクシーが唯一の休憩だったりします。
荷役が昼から夜までの場合は、夕食を先に作ってから買い物に行くことになるのでもっと大変です。
できあいの惣菜や冷凍食品を使えば労働時間は短くなりますが、ぼくは使いませんでした。
まともな食事を3食提供しようと思うと、一日のほとんどの時間をギャレーで過ごすことになります。
司厨の仕事できついこと5つ
①長時間労働
1番大変なのは長時間労働です。
1日15時間労働になることもあります。
給料と労働時間が割に合えばいいですが、ぼくは正直割に合いませんでした。
②買い物のプレッシャー
決められた時間内に大量の食材を買って帰らなければならないので、プレッシャーと疲労が半端ないです。
1度の買い物でカート7台分買うこともあります。商品をレジに通すだけで30分かかったりするので、港の近くのスーパーには船員専用レジがあったりします。
③時化で揺れる船内での調理
海が時化ると鍋が吹っ飛びます。切った野菜が床に転がっていきます。冷蔵庫の扉が勝手に開いて中のものが飛び出します。
船酔いしても司厨は3食作らなければなりません。
④乗組員の好き嫌い
乗組員の出身地方によって味付けの好みが違います。年齢によっても食の好みが違います。
肉を食べない人・魚を食べない人・野菜を食べない人が同時に乗ってます。
一生懸命作った料理が箸もつけずに残飯バケツに捨てられると、結構メンタルにきます。
⑤ハズレ司厨にならないプレッシャー
掲示板やコミュニティを見ると、司厨の評判は乗組員にとって切実な問題です。


逆に言えば、まともに料理ができる司厨は本当に感謝されます。
司厨がいない船では飯当番が乗組員の大きなストレスになっていて、「飯当番がきつくて転職したい」という声も多いです。
まともな食事を出せるだけで船の雰囲気が変わるので、やりがいのある仕事です。
船ではどんな料理を作る?


ぼくが以前乗っていた船では、せっかくだから珍しい食材を使って料理を出したこともあります。
エゾシカのロースト

あんこうの唐揚げ

結果は半分ぐらいの人が食べて、半分ぐらいの人が残しました。
頑張って珍しい料理を作っても、食べ慣れていないからか手をつけない人がいるんです。
逆に人気があったのはパエリアやナシゴレン、台湾まぜそばなどでしたが、これらも残す人はいました。
パエリア

台湾まぜそば

結局、カレーや焼きそば、唐揚げやチャーハンなど定番の家庭料理が一番人気でした。
手の込んだ料理より、「温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、できるだけ出来立てを提供する」この3つのポイントを守った基本的な料理を出せれば十分です。
司厨の給料・年収
ぼくが船舶料理士の資格を使って司厨をやっていたときの給料は、手取りで約32万円(額面で40万円ぐらい)でした。
他の司厨の求人を見ていても、給料の相場は手取りで30万〜40万程度です。
未経験だと最初は給料が低く提示されるかもしれませんが、乗船履歴をつけて船舶料理士の資格を取れば職に困ることはないです。
資格があれば手当がつくことも多いので、できる限り取得しましょう。
給料に不満があれば、高く出してくれる船会社に転職すればいいだけです。
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食材の仕入れ
司厨の大切な仕事のひとつが食材の仕入れです。
仕入れ先は大きく分けて入港地のスーパーか、船食(船の食材の専門業者)の2つです。
スーパーで仕入れる場合
自分の目で食材を選べるのがメリットです。価格も普通のスーパー価格で買えます。
ただし、商品を選ぶ手間・箱詰め・搬送が大変で、場所によっては品揃えが悪く買いたいものが買えないこともあります。
買い物のコツは3つあります。
①食材は余裕を持ってストックする
港によって品揃えが全然違いますし、台風や航海予定の変更で予定通りに入港できないこともあります。肉や魚は大きなスーパーに行ったときに多めに買って冷凍しておきましょう。
②バナナ箱を確保する
買った食材を入れるために、丈夫なバナナ箱が大活躍します。何日分の食材を買うかによりますが、だいたい10箱前後は必要です。スーパーに事前に電話してとっておいてもらうのがベストです。
③買うものはスプレッドシートで管理する
「チェックボックス・食材名・数量・ジャンル(肉、冷凍等)」で入力してソートすれば、スーパー内での無駄な移動が減って買い忘れも防げます。
船食(専門業者)で仕入れる場合
入港の2〜3日前に電話やFAXで発注しておけば、入港日に船まで届けてくれます。
自分で買い出しに行かなくていいので時間と体力の節約になりますが、普通のスーパーより2〜3割高いことが多く、発注した食材が揃わない場合もあります。
食料金に余裕があれば船食を使い、節約したいときはスーパーを使うなど、うまく使い分けましょう。
司厨の必需品・便利グッズ
包丁
どの船にもだいたい包丁はありますが、手入れがされていなかったり使いづらかったりします。
仕事で長時間使うものなので、自分で揃えることをおすすめします。
- 三徳包丁
- ペティナイフ
- 柳刃包丁
- 出刃包丁
この4本があればとりあえず困ることはないです。
包丁ケース
包丁を持ち運ぶために必要です。転船時に頻繁に持ち運ぶことになるので、軽い布巻きタイプのものがおすすめです。
靴・エプロン・帽子
司厨の作業着みたいなものです。会社から支給がない場合は自分で揃えることになります。ぼくはエプロンとキャップのスタイルで仕事をしてました。
あると便利な調理器具
低温調理器:ローストビーフはオーブンより格段に美味しくできます。タイマー管理で他の作業と並行して調理できるのもポイントです。
鬼おろし器:あら目の大根おろしができます。船内では焼き魚を出す機会が多いので、普通のおろしと使い分けると乗組員が飽きません。
個人的にあったほうがいいもの
酔い止め:司厨は時化でも関係なくご飯を作らなければなりません。下を見て作業することが多いので酔いやすいです。お守り代わりにアネロンを持っておきましょう。
カップラーメン(人数分):急な夜荷役で夜食が必要になったときや、時化でどうしても料理できないときのお守りです。意外と喜んでくれる人が多いです。
通信環境やPC・タブレットなど、船内生活に必要なものは別の記事でまとめています。
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これから司厨を目指す方へ
おすすめの船
大型船での司厨はあまりおすすめしません。
5〜6人乗りの貨物船をおすすめします。
少人数なら作る量も少なく、乗組員との距離も近いので仕事がしやすいです。
また、司厨が複数人乗っている船であれば1人よりもプレッシャーが分散されます。
資格がなくても経験を積みながら取得を目指せる環境を選びましょう。
心構え
何をやっても文句を言う人は必ずいます。いちいち気にしていたらメンタルが持ちません。
大切なのは自分の食べたい料理、作りたい料理を作ることです。
料理が好きなだけではおそらくやっていけません。体力や精神力も必要です。
でも最初は慣れない船内調理も、やっているうちに必ず慣れます。
異業種から40代で司厨に転職して活躍している人もいます。
料理のスキルがあれば年齢に関係なく求人は見つかりますし、乗船履歴を積んで資格を取れば向こうから声がかかるようになります。
まとめ
この記事のポイント
- 司厨員は船で3食を作る仕事。資格がなくても働ける船がある
- きつい仕事だが、まともに料理ができる司厨は貴重で感謝される
- 出す料理は家庭料理で十分。「温かく・冷たく・出来立て」が大事
- 給料の相場は手取り30万〜40万。資格を取れば職に困らない
- 最初は5〜6人乗りの小さな船か、司厨が複数いる船がおすすめ
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※この記事は筆者の3社勤務経験、および掲示板・業界関係者からの情報をもとに構成しています。給料や労働時間は会社・船種・時期により異なります。就職・転職の際は会社への直接の問い合わせで確認してください。