こんにちは。船員くんです。(@tankerkun)



この記事で分かること
- 船種別の乗船/休暇比率(一覧表つき)
- 乗船延長が起きる構造的な理由
- 零細の「口約束」で搾取されないための対策
- 有給買取・休日買上げの実態と金額
- 給料と休暇のトレードオフの考え方
- 面接で確認すべき休暇関連の項目
「3ヶ月乗船1ヶ月休暇」は本当か
結論から言うと、「3ヶ月乗船1ヶ月休暇」は額面通りにならないケースが多いです。
内航船の乗船/休暇比率は、船種・会社規模・予備員の有無で大きく変わります。筆者の経験と業界の口コミをもとに、船種別の目安をまとめました。
船種別 乗船/休暇の目安
| 船種 | 乗船期間 | 休暇 | 比率 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 白油タンカー | 3ヶ月 | 20〜30日 | 3:1〜4:1 | 延長されやすい |
| ケミカルタンカー | 3ヶ月 | 20〜30日 | 3:1〜4:1 | 白油と同傾向 |
| カーゴ(499t) | 2〜3ヶ月 | 20〜30日 | 3:1程度 | タンカーよりマシな傾向 |
| RORO船 | 2〜3ヶ月 | 1ヶ月前後 | 3:1程度 | 大手は比較的安定 |
| フェリー | 変動 | 変動 | — | 休日買上げが常態化 |
| 好条件の船 | 1ヶ月 | 1ヶ月 | 1:1 | 1日12時間勤務が条件 |
| 公務員船 | — | 年間休日150日 | — | 陸上勤務期間あり |
注目すべきはタンカーの延長されやすさです。カーゴは比較的3:1で回る会社が多いのに対し、タンカーは4:1やそれ以上になることも珍しくありません。



「1ヶ月乗船1ヶ月休暇」のような好条件の船も実在しますが、その場合は1日12時間勤務など、乗船中の負担が大きい傾向にあります。休暇が長い=楽、ではないということは知っておくべきです。

乗船延長はなぜ起きるのか
「3ヶ月の約束で乗ったのに、気づけば4ヶ月、5ヶ月…」。これは内航業界で最もよく聞く不満のひとつです。
乗船延長が起きる根本的な原因は、代わりの人員(予備員)がいないことです。
あなたが下船するには、代わりに乗る人が必要。しかし内航は慢性的な人手不足で、予備員を十分に確保できている会社は多くありません。特に小規模な会社や、タンカーのように専門知識が必要な船種ではこの傾向が顕著です。


さらに深刻なのは、錨泊や停泊を「休暇」としてカウントする会社が存在すること。船の上にいるのに「休暇扱い」にされれば、帳簿上は3:1でも実態はまったく違うということになります。



「タンカーで13ヶ月乗っている人がいた」という証言もあります。もちろんこれは極端な例ですが、4〜6ヶ月の延長は珍しくないのが現実です。


さらに悪質なケースとして、上司が意図的に休暇を切り上げるパターンもあります。



不定期船で多少のズレが出るのは仕方ありません。しかし「毎回」「慢性的に」短くなるのは、会社または船長の問題です。買い上げすらされていないなら、声を上げるか、転職を検討すべきです。

零細の口約束リスク — 契約は書面で確認せよ
「3ヶ月乗船1ヶ月休暇」と口で言われて入社したのに、実際は「40日乗り10日休み」——こういうケースは零細の小型船で特に多く見られます。

19tクラスの零細では、「若いから休暇は10日でいいだろう」と言われたケースも報告されています。法的にはグレーですが、書面で雇入契約を交わしていなければ泣き寝入りになりかねないのが現実です。
零細で搾取されないための対策
① 雇入契約書を書面でもらう:乗船期間・休暇日数・給料を明記させる
② 「実際の」休暇日数を聞く:「規定では3ヶ月1ヶ月だけど、直近1年はどうでしたか?」と具体的に
③ 予備員の有無を確認する:「自分が下船するとき、代わりの人はいますか?」
④ 口約束を信じない:「まあ、大体3ヶ月くらいで交代するよ」は何の保証にもならない
特に19tクラスの小型船は、乗組員が2〜3名しかおらず予備員という概念自体がない会社も多い。若い船員が入ってこない理由がここにあると言っても過言ではありません。

有給買取と休日買上げの実態
内航業界には、「消化できなかった休暇をお金で買い取る」という独特の文化があります。
これには大きく分けて2つのパターンがあります。
有給買取(一般的な内航船)
有給休暇が消化しきれないとき、会社が1日あたりの金額を決めて買い取る仕組みです。


1日2万円の買取であれば、10日分で20万円。200日分を一括で売った猛者もいるようで、そうなると400万円です。
ただし、組合船の場合は買取上限が設定されていることが多く、10日までという規定が一般的。これはタンカー会社が組合に圧力をかけた結果だという声もあります。
フェリーの休日買上げ
フェリーには独特の「休日買上げ」文化があります。組合で年間休日が決められているものの、人手不足で消化しきれず、買上げが常態化しているのが実情です。
筆者が業界関係者から集めた情報によると、個人の希望で休日を取れるのが理想だが、実際は人員が足りず全員分の休日が買上げになるケースがほとんど。買上げ額によっては、ボースン(甲板長)が士官より手取りが多くなることもあるそうです。
ただし注意点もあります。休日買上げのお金からも社会保険料と税金が引かれるため、額面がそのまま手元に残るわけではありません。支給タイミングは年度末や決算月にまとめてというケースが多いです。

給料と休暇のトレードオフ
内航の世界では、「給料が高い会社は休暇が少ない」「休暇が多い会社は給料が安い」というトレードオフがつきまといます。
たとえば年間休暇120日の会社は、月給が相場より低めに設定されていることがほとんどです。逆に、手取り40万円超の会社は乗船3ヶ月に対して休暇1ヶ月以下ということも珍しくありません。
ここで重要なのが、「月給だけ」で比較しても意味がないということ。
休暇と合わせて比較すべき項目
・ボーナス(基本給の何ヶ月分×年何回か)
・退職金制度の有無
・休暇時の給料(固定給か、手当が外れて下がるか)
・有給買取の有無と金額
・予備員率(代わりが確保されているか)
・船内の雰囲気
手取り35万円で休暇がしっかり1ヶ月取れる会社と、手取り45万円で休暇が20日しか取れない会社。年収だけ見れば後者が上ですが、「1日あたりの実質日給」で計算すると差が縮まることもあります。

給料の詳しい相場は別記事にまとめています。
面接で確認すべき休暇関連の項目
転職・就職の面接で、休暇について確認すべきポイントをまとめます。
面接で確認すべき5項目
① 直近1年の実績: 「規定では何ヶ月ですか?」ではなく「直近1年、実際に何日乗って何日休みましたか?」
② 予備員の有無: 代わりの人がいなければ、休暇は絵に描いた餅
③ 乗船延長時の扱い: 延長した場合に手当がつくのか、ただ延びるだけか
④ 有給の消化状況: 有給が取れているか、買取があるなら1日いくらか
⑤ 休暇時の給料: 固定給か、乗船手当が外れて減額になるか
この5つを聞いて嫌な顔をする会社は、休暇が回っていないことを自覚している会社です。まともな会社ほど、これらの質問にはっきり答えてくれます。

休暇中の過ごし方
参考までに、船員の休暇中の過ごし方を紹介します。
長期休暇は船員の大きなメリットのひとつ。陸上の会社員にはなかなかない「1ヶ月近いまとまった休み」が取れるのは、この仕事ならではです。休暇中も給料が支払われるのも大きいポイントです。
定期航路でない船の場合、乗船場所と下船場所が違うこともあり、下船地から観光して帰るという楽しみ方もできます。免状取得の勉強に充てる人も多いですし、海外旅行に行く人もいます(台湾やベトナムなら往復4万円程度で行けます)。
一方で、乗船中に仮バースがほとんどなかった場合は、休暇の前半はとにかく寝て回復に充てるのが現実。休暇の長さだけでなく、乗船中の負担との兼ね合いで過ごし方は変わってきます。


まとめ
この記事のポイント
- 「3ヶ月乗船1ヶ月休暇」は目安。タンカーは延長されやすく、カーゴは比較的安定
- 乗船延長の根本原因は予備員不足。面接で「直近1年の実績」を聞くのが鉄則
- 零細の口約束は信用しない。雇入契約書を書面でもらうこと
- 有給買取は1日2万円が目安。フェリーの休日買上げは常態化している
- 給料と休暇はトレードオフ。月給だけで比較せず、トータルの待遇で判断する
- まともな会社ほど、休暇に関する質問にはっきり答えてくれる
これから船員を目指す方は、まず転職の全体像を押さえておくことをおすすめします。
退職を考えている方はこちらも参考にしてください。
※この記事は筆者の3社勤務経験、および掲示板・業界関係者からの情報をもとに構成しています。引用元の掲示板は現在閉鎖されています。休暇制度は会社・時期・個人の状況により異なります。就職・転職の際は最新の公式情報や、会社への直接の問い合わせで確認してください。