この記事はこんな方におすすめ
- 「4級海技士の口述試験に落ちた…次こそ受かりたい」
- 「口述試験って何を聞かれるの?対策がわからない」
- 「合格率が低いって聞いたけど、実際どれくらい難しい?」
4級海技士の口述試験は「落ちる試験」です


4級海技士(航海)の口述試験に対して、「4級でしょ?入門レベルでしょ?」と思っている人は多いはずです。
ところが、2023年度の4級海技士(航海)の合格率は約32%です。3人に1人しか受かりません。これは筆記と口述を合わせた数字ですが、口述単体でも決して楽ではありません。
合格基準は公式には明らかにされていませんが、おおむね60%以上の正答率が必要と言われています。
筆者自身、内航8年の経験がありながら試験官に「航海の基本ができていない」と言われました。それでも後半で立て直して合格できましたが、油断していたら間違いなく落ちていたと思います。
→ 【4級海技士】口述試験に初挑戦して合格した話|実際の出題34問+模範解答+AI勉強法
口述試験の基本情報
口述試験の情報はネット上にほとんどありません。まず基本的な仕組みを押さえておきましょう。
試験の形式
指定された時間に運輸局に行き、待合室で待機します。名前を呼ばれたら試験室に入り、試験官1名と向き合って座ります。
質問はすべて口頭で、試験官が問題を出し、受験者が口頭で答える形式です。
海技試験六法は持ち込みOKです。ただし書き込み・付箋・傍線は原則禁止。また使えるのは船員法や安衛則などの「海事法令」の問題のみです。衝突予防法・海上交通安全法・港則法の問題では六法を開けません。
試験時間は1人40〜50分程度、質問数は15〜16問程度が目安です。
試験官のタイプで難易度が変わる
試験官には大きく3つのタイプがあります。
淡々・事務的タイプは、答えられなければ「はい、次」と切り替えられ、ヒントは一切ありません。会話型・誘導タイプは、ヒントをくれたり会話を広げてくれます。突っ込み型は、1問に対して「なぜ?」「具体的には?」と掘り下げてきます。
試験官の当たり外れは完全に運です。だからこそ、どのタイプが来ても対応できる準備が必要です。
口述に落ちる人の5つの共通パターン
筆者自身の反省と業界内で聞いた話から、落ちる人の共通パターンを整理します。
① 「知っている」と「言える」を混同している
口述試験の最大の罠がこれです。
テキストを読んで「分かった」と思っていても、試験官の前で口から出てこないことは普通に起きます。霧中信号の「長音1回+短音2回」がどの船のものか、保持船の義務の最初の一言が何か──頭では分かっていてもパッと出てきません。
口述は「知識テスト」ではなく「アウトプットテスト」です。声に出して答える練習をしていないと、本番で詰まります。
② 頻出問題リストだけで安心してしまう
口述対策として頻出問題リストを使う人は多いはずです。筆者も100問以上の頻出リストで勉強しました。
しかし、実際に出題された34問のうち、リストに載っていない問題がいくつかありました。ワイヤーロープの破断力計算、灯台表の照射灯の定義などです。
頻出リストは対策の土台であって、それだけでは足りません。
③ 六法を「持っているだけ」で引けない
海技試験六法は持ち込めますが、付箋は貼れません。いざ六法問題が出たときに該当の条文にたどり着けなければ、持っていないのと同じです。
索引で引くキーワードを覚えておくのが六法攻略の核心です。条文番号の暗記よりも、「飲料水」「保護具」「高所作業」などのキーワードで索引を引く練習のほうが本番で使えます。
④ 序盤のミスで心が折れる
最初の数問でつまずくと、頭が真っ白になって残りの問題も答えられなくなるパターンです。
口述試験は序盤でつまずいても後半で立て直せます。試験官の厳しい指摘は「不合格の宣告」ではなく「ここを直せ」というメッセージです。筆者も序盤で崩れかけましたが、後半の法規・気象・運用で持ち直して合格しました。
⑤ 答え方に「型」がない
知識があっても、だらだら話してしまうと試験官に「結局何が言いたいの?」と思われます。特に淡々系の試験官にはヒントを期待できないので、自分で答えを組み立てる必要があります。
覚えるフレーズは3つだけです。
「結論から述べます」──最初に言うだけで答えが整理されます。
「整理して答えます」──詰まったときの時間稼ぎ。
「以上です」──答えを終わらせます。だらだら話しません。
→ 【4級海技士】口述試験に初挑戦して合格した話|実際の出題34問+模範解答+AI勉強法
出題分野と傾向
筆者と同日受験者の合計34問から見えた出題傾向を分野別に整理します。
航海(計器・測位・海図)
ジャイロコンパスの誤差、1海里の定義と根拠、海図補正の種類、海図の種類、位置の求め方、灯台表の読み方など。
「数字」と「根拠」をセットで聞かれるのが特徴です。「1海里は1,852m」だけでなく「なぜその長さなのか」まで答えを求められます。
運用(錨泊・ロープ・船体)
投錨の宙吊り(cockbill)、ワイヤーロープの破断力計算、トン数の種類、浮力とアルキメデスの原理、錨鎖の繰出し量の目安など。
計算問題が出ることを想定しておく必要があります。ホワイトボードが用意されていれば使い倒すべきです。
法規(予防法・海交法・港則法)
衝突のおそれの判断基準、東京湾の航路と航法、港則法の小型船の定義、特定港とは何か、動力船同士の航法など。
予防法・海交法・港則法は六法を使えません。暗記で勝負する分野です。
海事法令(六法使用可)
船員労働安全衛生規則の条文(給水ホース、安全衛生教育など)。
六法を引ければ確実に得点できるボーナスゾーンです。索引の使い方を事前に練習しておけば、ここで落とすことはまずありません。
気象
温帯低気圧と熱帯低気圧の違い、低気圧と高気圧の天気、高気圧の種類、気圧配置の季節パターンなど。
「なぜそうなるか」の理屈を聞かれます。「低気圧は天気が悪い」だけではなく「上昇気流で雲が発生するから」まで答えます。
英語術語
「投錨の宙吊り、英語で?」(cockbill)、「浮力の英語は?」(buoyancy)など、唐突に聞かれます。
事前準備なしではまず出てきません。主要な英語術語は20〜30語を暗記しておくのが安全です。
→ 【4級海技士】口述試験に初挑戦して合格した話|実際の出題34問+模範解答+AI勉強法
対策の方向性
ここでは筆者が実際にやった対策法の概要を紹介します。
AIチャットで模擬練習する
ChatGPTなどのAIチャットに「口述の試験官役をやって」と指示して、1問ずつ声に出して答える練習です。
「知っている」を「言える」に変換するための方法として、非常に効果的でした。
ただし注意点が1つ。AIが出す模範解答には不正確な部分が混ざることがあります。特に法規の条文番号や専門用語の定義は、必ず海技試験六法や公式テキストで裏取りしてください。AIは「勉強の効率化ツール」であって、「唯一の情報源」にしてはいけません。
六法の索引トレーニング
付箋が貼れない以上、索引からキーワードで条文にたどり着く練習が必須です。
「飲料水」「安全衛生教育」「保護具」「高所作業」「航海当直」など、よく出るキーワードで索引を引いて条文を見つける練習を繰り返しました。
暗記カードアプリで反復する
模範解答をAnki(暗記カードアプリ)に入れて繰り返し回すのも有効です。AIに「AnkiにインポートできるTSV形式で出力して」と頼めば、そのまま取り込める形で出してくれます。
模擬練習で詰まった問題だけを「再学習」に入れて重点的に回すと効率が上がります。
→ 【4級海技士】口述試験に初挑戦して合格した話|実際の出題34問+模範解答+AI勉強法
まとめ
この記事のポイント
- 4級海技士(航海)の合格率は約32%。「4級だから簡単」ではない
- 試験官は1名・口頭形式。六法持ち込み可だが予防法・海交法・港則法では使えない
- 落ちる人の共通パターン:声に出す練習不足、頻出リスト依存、六法が引けない、序盤で折れる、答え方に型がない
- 出題は航海・運用・法規・海事法令・気象・英語術語の6分野から幅広く出る
- 口述は満点を取る試験ではない。60%を確実に取る戦い方が合否を分ける
口述試験に落ちた人も、これから受ける人も、やるべきことは同じです。「声に出して答える練習」と「六法を引く練習」、この2つに時間を使えば合格ラインは超えられます。
→ 【4級海技士】口述試験に初挑戦して合格した話|実際の出題34問+模範解答+AI勉強法
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※この記事は筆者の実体験に基づいています。口述試験の出題は受験時期・地域・試験官により異なります。本記事の情報は対策の参考としてご活用ください。