

この記事はこんな方におすすめ
- 「どの船種に就職しようか迷ってる」
- 「船種ごとの乗船サイクルや荷役の違いを知りたい」
- 「転職先の船種を検討中」
- 「フェリーとタンカーどっちがいい?って聞かれて答えられない」
※この記事の内容は筆者の3社勤務経験、および現役・元船員の口コミをもとにした一例です。会社や時期によって異なりますので参考程度にしてください。
船種を比較するときに見るべき5つのポイント
船種を選ぶときに気にしたいポイントは大きく5つあります。
① 乗船サイクル ── 何日乗って、何日休めるか
② 荷役の負担 ── 自分たちで荷物を積み下ろすか、しないか
③ 生活の自由度 ── 港で上陸できるか、住む場所を選べるか
④ 入出港の頻度 ── 1日に何回入出港するか(睡眠に直結する)
⑤ 甲板部と機関部の差 ── 同じ船でも部門で忙しさが違う
同じ「きつい」でも、コンテナやROROのように入出港回数が多くて睡眠が削られるきつさと、タンカーやガットのように荷役そのものが重いきつさでは中身が全然違います。
このあと紹介する各船種は、この5つの軸で読むと「自分に合うかどうか」が判断しやすくなります。
「船種名」だけでは判断できない
もうひとつ大事なのは、同じ船種名でも船のサイズ・航路・港数で生活がかなり変わるということです。
たとえば「コンテナ船」でも、京浜近場で1日4港回る船と、東京〜博多の長距離航路ではきつさの質が違います。「カーゴ」でも499tの小型と8,000tクラスでは乗組員の人数も役割分担も別物です。
船種名だけで「ここは楽」「ここはきつい」と決めつけず、航路・船のサイズ・乗組員の人数まで見るようにしてください。
甲板部と機関部で体感が違う
この記事の口コミにも繰り返し出てきますが、同じ船種でも甲板部と機関部で忙しさがまるで違うケースがあります。
たとえばROROやコンテナでは「機関部は楽だが甲板部はハード」、セメント船では「機関士で13時間はやばいが甲板なら普通」という声があります。船種だけでなく「自分がどの部門で乗るか」も重要な判断ポイントです。
全船種の比較表
まずは全体像を把握しましょう。各船種の忙しさ・給料・上陸のしやすさ・荷役の関わり方を一覧にまとめます。
| 船種 | 忙しさ | 給料 | 上陸・仮バース | 荷役の関わり |
|---|---|---|---|---|
| フェリー | ★★★☆ | 普通~高め | ダイヤ制で仮バースなし | 監視のみ |
| 白油タンカー | ★★★★★ | 高め | 少ない | 船員が全面的に行う |
| 黒油タンカー | ★★★ | 高め | 少ない | 船員が行うが白油より楽 |
| ケミカルタンカー | ★★★★ | 高い | 比較的あり | 船員が行う+タンク洗浄 |
| セメント船 | ★★★ | 普通~高め | 仮バース多め | 本船荷役(ワッチ制) |
| カーゴ(一般貨物) | ★★☆ | 安め | 比較的あり | 荷役は陸側が担当 |
| 鋼材船 | ★★☆ | 普通 | 比較的あり | 荷役は陸側が担当 |
| コンテナ船 | ★★★☆ | 普通~高め | あり | 荷役は陸側。入出港が多い |
| ガット船 | ★★★★★ | 普通 | 少なめ | 船員だけで荷役 |
| RORO船 | ★★★☆ | 高め | 仮バースほぼなし | 車両の固縛・誘導 |
| タグボート | ★★★ | 地域差大 | 毎日帰宅可(招集あり) | なし(操船のみ) |
| 調査船 | ★☆☆ | 普通~高め | 会社による | なし |
| バンカー船 | ★★☆ | 高め | 毎日帰宅可 | あり |
| LPG船 | ★★☆ | 高い | かなり少ない | 船員が行うがシンプル |
| 曳船・押船 | ★★☆ | 安め~普通 | まとまった休み少ない | なし(台船を引くだけ) |
| 官庁船 | ★★☆ | 普通 | スケジュール運航で安定 | なし(ワッチのみ) |
| 客船 | ★★★ | 会社による | 定期航路 | なし(接客あり) |
| 浚渫船 | ★★☆ | 普通 | 土日休みの場合あり | 要確認 |
この表はあくまで目安です。同じ船種でも499tと大型船では全く違いますし、会社によっても大きく変わります。以下、船種ごとに詳しく解説します。
船種ごとの1日の流れが気になる方は、こちらの記事も参考にしてください。
フェリー
フェリーは毎日同じ港に出入りする「定期航路」の船です。ダイヤが決まっていて、時間通りに出港して時間通りに入港します。
乗船サイクルは、短いところで「1週間乗船・2〜3日休暇」、長いところで「20日乗船・10日休暇」くらい。他の船種に比べてサイクルが短いのが最大の特徴です。
荷役については、士官が直接荷役することはほとんどありません。バラスト調整、台数チェック、ステベの監視がメインです。
一括公認制度(会社の在籍期間がそのまま乗船履歴になる制度)が使えるので、上級免状が比較的早く取れるのも大きなメリットです。
ただし居住地の指定がある会社が多い点は注意。乗下船のサイクルが短い分、寄港地の近くに住む必要があります。長距離フェリーだと「どこ住みでもOK」のところもあるので、気になる会社には直接聞いてみましょう。
大型フェリーで士官になるなら、2級筆記は最低でも必要です。中途で甲板員として入る場合でも、大手だと3級を求められることがあります。
フェリーのメリット



きつい面
・フェリーは「街の路線バスの海版」。仮バースや沖アンカーがない
・居住地指定がある会社が多く、住む場所を選べない場合がある


石油タンカー(油槽船、Tanker、Oil Carrier)
タンカーは求人が多くて、新卒でも中途でも入りやすい船種のひとつです。
乗船サイクルは、内航の場合「3〜4ヶ月乗船・1ヶ月休暇」が一般的。仮バースはほとんどない船もあります。
荷役は自分たちで行います。覚えることは多いですが慣れれば体が動くようになります。
社船とグループ船の違いに注意
○○タンカーに入ってもグループ船の会社に入ってもタンカーとしての仕事内容は同じ。でも給料・休暇・福利厚生は会社によって全然違います。
就活の時にこの仕組みを知らないと、あとから「同じ船に乗ってるのに待遇が違う…」ってなるので注意してください。
現場の声




転職のしやすさ


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ケミカルタンカー (Chemical Tanker)
ケミカルタンカーは化学薬品や油脂類を運ぶ船です。石油タンカーと比べて荷役が複雑で、タンククリーニングの作業が加わるのが特徴です。
きつい理由

現場の声




セメント・タンカー(Cement Carrier)
セメント船は本船荷役(船の設備で荷役する)の船種です。大型は24時間稼働で昼夜問わず荷役しますが、荷役はワッチ制なのでワッチ外の時間は買い物に行けたりします。
現場の声






粉塵について



メリット



ばら積み貨物船(Bulk Carrier、Bulker)
バラ積み船はトン数と航路で生活がかなり変わります。内航8,000トンクラスだと、乗船サイクルは「3〜4ヶ月乗船・1ヶ月休暇」で仮バースなし。荷役中は部員・士官関係なく1人当直、荷役時間は半日前後。アンカー中は全員で整備作業。昼夜問わず出入港する生活です。
現場の声



鋼材船はどう?






コンテナ船(Container Ship)
コンテナ船は1日に何港も寄ることがあり、入出港の頻度が非常に高い船種です。荷役自体はガントリークレーンで行うので手作業ではありませんが、接岸・離岸の準備(ロープ出し)が頻繁にあります。
特に京浜エリアのコンテナ船はかなり忙しいとされています。
きつい理由




比較すると…


ガット船(砂利運搬船、Grab Dredger)
ガット船は砂利・砂・石灰石・スクラップなどをグラブバケットで積み降ろしする貨物船です。内航業界では「3G(ガット・外船・漁船)に気をつけろ」と言われるほど、独特の文化を持つ船種として知られています。
きつい理由
①荷役を船員だけでやる──鋼材船やコンテナ船は荷役を陸側の作業員(沖仲仕)に任せられますが、ガット船はグラブ操作・ハッチカバーの開閉・船倉清掃までほぼ全て船員が行います。陸の助けが来ない荷役が大半です。
②「ガット士」という独特のヒエラルキー──グラブバケットを操るガット士は船長より給料が高い船もあり、船内で大きな権限を持ちます。ガット士の人柄次第で船内環境が天と地ほど変わります。
③船のサイズが小さい(499t以下が多い)──少人数で全ての業務をこなすため、1人あたりの負担が大きくなりがちです。
現場の声






一方で…
ネガティブな声が多いですが、一方で「2ヶ月で休みが回ってくる」「給料は多め」というメリットを挙げる声もあります。きつさの大半は荷役と人間関係に集中しているため、乗る船・会社を選べば働きやすいケースもあります。



RORO船(ロールオン・ロールオフ船、Roll-on/Roll-off Ship)
RORO船はトラックやシャーシ(台車)ごと貨物を積み降ろしできる船です。フェリーに似ていますが、旅客は乗せません。定期航路で毎日決まったスケジュールを走るため、ダイヤに追われる独特のきつさがあります。
きつい理由
定期航路で毎日入出港を繰り返すため、スケジュールに余裕がありません。仮バース(荷役のない日に岸壁に停泊して休むこと)はほぼゼロ。アンカー(錨泊)すらない船もあります。
また、大型船のため甲板部と機関部で乗組員が分かれていますが、甲板部から見ると「機関部は楽そうなのに自分たちは毎日荷役」という格差を感じやすい構造です。
現場の声


機関部なら楽という声も
一方で、機関部視点では「カーゴよりROROのほうが楽」という声もあります。大型船は機関のオートメーション化が進んでいるため、機関士の負担は小型カーゴより軽いケースがあります。




タグボート
タグボートは他の船種と生活スタイルが根本的に違います。港を拠点にした日帰り勤務が基本で、長期乗船はありません。ただし曳航もやる会社だと数日〜数週間離れることもあります。
荷役はなく、大型船の入出港の補助がメインです。
ハーバー専門の会社と曳航もやる会社で給料の水準がかなり違うので、そこは事前に確認しましょう。
現場の声


飯炊き文化に注意

供食のパターンは会社によって違って、こんな感じに分かれます。
- 若手が毎日作る(一番大変)
- 乗組員のローテーション
- 司厨がいる(タグでは珍しい)
- 昼は各自で買いに行く
また、タグ業界には暗黙のルールがあって、同じ港のタグ協会に加盟する会社間では直接の転職が嫌がられる傾向があります。「一社間を挟まないと、採りたくても採れない」という声も。なかには操舵スタンドの舵とエンジンレバーの配置をわざと左右逆にして人材流出を防いでいる会社もあるらしいです。
とはいえ法的な制約はないので、興味のある会社には直接聞いてみるのが一番です。
調査船
調査船は商船とまったく別の世界です。国が絡んだ仕事が多く、民間の貨物船に比べるとかなり落ち着いた環境で働けます。
女性が働きやすい船種としても知られていて、司厨部や調査部には女性がそこそこいるとのこと。
待遇面では、GODI(日本郵船系列)、三井海洋開発、海洋技術開発あたりが良いとされますが、入社のハードルも高いです。
ホワイトな環境



仕事内容


転職の注意点
「将来は商船にも乗りたい」なら、先に貨物船で経験を積んでから調査船に移る方がキャリアの選択肢は広がります。
その他の船種
バンカー船(燃料補給船)
バンカー船は他の船に燃料を届ける仕事です。港を拠点にした日帰り勤務で、タグボートと似た生活スタイル。
甲種危険物取扱者は入社時に持っていなくても大丈夫。入社後に会社負担で取得するのが一般的です。タンカー未経験者でも応募できます。


LPG船(液化ガス船)
プロピレンやブタンなどの液化ガスを運ぶ船。荷役の仕組みが石油タンカーとまったく異なり、「スリップチューブ」という特殊な計測を行うなど、独特の技術が求められます。

客船
操船技術に加えて接客やホスピタリティも求められる特殊な世界です。運航会社がサービス会社を兼ねているケースもあり、求人の探し方が他の船種と違うことがあります。
客船→商船の転職はギャップが大きいと言われています。特に甲板部は荷役経験がないため苦労するとのこと。

冷凍運搬船
特にマグロを運ぶ船はかなり過酷。マイナス60℃の船艙での作業を伴い、洋上でマグロ漁船と接舷して乗組員が手で積み付けます。

オーシャンタグ

自動車運搬船


浚渫船・港湾工事船
「土日休みの船はないの?」という質問に対して候補に挙がるのがこの船種。工事業者が土日に稼働しないため、船も休みになるケースがあります。
ただし海洋工事のリグなどでは「船上作業員」扱いの求人になる場合があり、乗船履歴が加算されないことがあるので事前確認が必須です。

船種よりも「会社選び」が大事
ここまで船種ごとの違いを書いてきましたが、正直に言うと船種より会社選びの方がずっと大事です。
同じフェリーでも会社によって生活は全然違うし、同じタンカーでも社船かグループ船かで待遇が違います。
筆者が3社経験して感じた「会社差」
筆者は3社を経験しましたが、乗船サイクルはどの会社も約2ヶ月で大差ありませんでした。でも仮バースの回数は月1回の会社と月7回の会社がありました。同じ「2ヶ月乗船」でも、月に何日休める日があるかで体感のきつさはまるで違います。
それ以上に大きかったのが人間関係です。小型船は乗組員の距離が近い分、いい意味でも悪い意味でも関係が濃くなります。相性が良ければ家族のようになれるし、合わなければ逃げ場がありません。
求人票では分からなかったこともたくさんありました。特にスマホの電波事情と人間関係は、入ってからでないと分かりません。「ここなら長くいられる」と思えた会社と、そう思えなかった会社の差は、結局のところ人間関係に集約されます。
| A社 | B社 | C社 | |
|---|---|---|---|
| 乗船サイクル | 約2ヶ月 | 約2ヶ月 | 約2ヶ月 |
| 仮バース | 月1回 | 月7回 | 月5回 |
| 人間関係の密度 | 適度(大型船) | 薄い(大人数) | 濃い(小型船) |
船種名は同じでも、会社によってこれだけ違います。求人票の給与額や乗船日数だけで判断せず、面接で踏み込んだ質問をすることが大切です。
最初の船種がその後のキャリアに影響する
もうひとつ意識しておきたいのが、最初に選んだ船種がその後の転職に影響するということです。
記事中でも触れましたが、調査船→商船は荷役経験がないため難しく、客船→商船もギャップが大きいと言われます。逆にタンカー経験者がフェリーに転職するのは年齢次第で十分可能です。
「目の前の楽さ」だけでなく、2〜3年後にどの船種にも動ける経験が積めるかという視点も持っておくと、選択肢が広がります。
応募前に確認したいこと|面接で聞くべき8項目
求人票だけでは分からないことが多いので、面接では最低限次の8項目は確認した方がいいです。
面接で聞くべき8項目
② 月に何回くらい入出港があるか
③ 仮バースや沖アンカーはあるか
④ 荷役は船員主体か陸主体か
⑤ 甲板部と機関部で忙しさはどう違うか
⑥ 社船かグループ船か
⑦ 船内の食事は誰が作るか(司厨・ローテ・若手)
⑧ 体験乗船はできるか
筆者の経験上、船種より会社差の方が大きい場面は多いです。ここを聞かずに入ると、「思っていた船種と違った」ではなく「思っていた会社と違った」になりやすいです。
特にスマホの電波事情や人間関係の雰囲気は、面接だけでは分からない部分も多いので、可能なら体験乗船をさせてもらうのがベストです。
この記事を読んだあとにやること
気になる船種が見つかったら、次は「船種を決める」より「候補の会社を比べる」段階に進みましょう。
筆者の場合
筆者は30代の未経験から船員になりました。調べていくと、未経験の30代だと大型船がほぼ唯一の選択肢で、そのなかでも求人が多いタンカーを選びました。
最初の会社は、先方から連絡をもらったのがきっかけです。正直なところ判断基準がなく、「悪い気はしなかった」からそのまま入社しました。
今振り返ると、もっと会社を選ぶべきでした。30代でも選択肢は他にあったはずですし、学校に行くルートも検討する価値がありました。「早く乗りたい」という焦りで、比較検討を飛ばしてしまったのが一番の反省点です。
おすすめの動き方
① 自分の優先順位を決める
「稼ぎたいのか」「睡眠を確保したいのか」「毎日帰りたいのか」「キャリアアップしたいのか」。この記事の5つの比較軸を見ながら、自分が何を重視するかを先に決めてください。
② 船種を2つくらいに絞る
全部の船種を同時に検討すると決まらないので、気になるものを2つ程度に絞りましょう。
③ 海のハローワークネットで求人票を比較する
国土交通省の海のハローワークネットで、船種・必要資格・勤務地などで絞り込んで求人を比較できます。乗船サイクル・休暇・手当の出し方まで求人票に書いてある会社も多いので、まずはここで情報を集めましょう。
④ 迷ったら船員職業安定窓口で相談する
全国の運輸局・運輸支局には船員職業安定窓口があり、未経験者の相談にも対応しています。「どの船種が自分に向いているか分からない」という段階でも相談できます。
⑤ 会社説明会・体験乗船で答え合わせをする
求人票と面接だけでは分からないことは必ずあります。年に数回開催される「めざせ!海技者セミナー」(国交省主催の企業説明会・面接会)に参加したり、体験乗船ができる会社なら実際に乗ってみるのが一番確実です。
船種選びは入口ですが、入ってからの満足度を決めるのは会社の運航形態・人の雰囲気・休み方・教育体制です。記事を読んで終わりではなく、求人票と面接で答え合わせをするところまでが船選びです。


船種だけでなく、会社選びも重要です。ブラック船会社の見分け方は以下の記事で解説しています。
これから船員を目指す方は、転職の全体像も合わせて押さえておきましょう。
給料の相場が気になる方はこちら。
※この記事は筆者の3社勤務経験、および現役・元船員の口コミをもとに構成しています。引用元の掲示板は現在閉鎖されています。給与・制度・会社の実態は時期や個人の状況により異なります。就職・転職の際は最新の公式情報や、会社への直接の問い合わせで確認してください。