







この記事はこんな方におすすめ
- 「ガット船って本当にやばいの?」と気になっている
- 「ガット士って何? 船長より偉いって本当?」
- 「3Gに気をつけろって聞いたけど意味が分からない」
- 「ガット船の求人を見つけたけど応募していいか迷っている」
※この記事の内容は筆者の3社勤務経験、および現役・元船員の口コミをもとにした一例です。会社や時期によって異なりますので参考程度にしてください。
ガット船とは? 何を運ぶ船なのか
ガット船は砂利・砂・石灰石・スクラップなどをグラブバケットで積み降ろしする貨物船です。正式には「砂利運搬船(Grab Dredger)」と呼ばれます。
船に取り付けられたクレーン(デリック)の先にグラブバケットという大きなハサミ型のバケツがあり、これで砂利をつかんで積んだり降ろしたりします。このグラブ操作を行う専門の乗組員が「ガット士」です。
内航のガット船は499t以下の小型船が中心で、乗組員は5〜7人程度。港湾工事や建設資材の輸送を担う、インフラを支える仕事です。
砂利だけでなく、廃材やスクラップなど「なんでも運ぶ」のもガット船の特徴。運ぶ荷物の種類が多い分、毎回の荷役条件が変わりやすい船種でもあります。
ガット船がきつい・やばいと言われる3つの理由
ガット船が業界で「きつい」「やばい」と言われる背景には、構造的な理由が3つあります。
① 荷役を船員だけでやる
他の船種との最大の違い
「自分たちで積んで、自分たちで降ろす」のがガット船の基本。陸の助けが来ない荷役が大半です。
比較すると分かりやすいのですが、鋼材船はダンネージの片付けこそ手間なものの、積み降ろし自体は陸側がやります。コンテナ船はガントリークレーンで荷役するので船員は手出ししません。タンカーは荷役を船員がやりますが、ポンプとバルブの操作が中心で体力的な負担の種類が違います。
ガット船の荷役は、体力を使う・汚れる・危険が伴うの三拍子です。




















② ガット士という独特のヒエラルキー
ガット船には他の船種にない特殊なポジションがあります。それが「ガット士」です。
グラブバケットの操作は高度な技術が必要で、この腕一つで荷役の効率が決まります。そのためガット士は船長より給料が高い船もあり、船内で大きな権限を持つことがあります。
問題は、このガット士の人柄によって船内環境が天と地ほど変わるということです。




















他の船種では、船長が船内の秩序を保つ最終権限を持っています。しかしガット船では、ガット士が事実上の最高実力者になっている船があります。
これはガット船特有の構造的な問題で、タンカーやROROで「人間関係がきつい」と言われるのとは質が違います。他の船種は「たまたま合わない人がいた」というレベルですが、ガット船は「ガット士」というポジション自体に権限が集中する仕組みになっているため、当たり外れの影響がより大きくなります。
③ 499t以下の小型船が多い
ガット船は499t以下の小型船が中心です。乗組員は5〜7人と少なく、1人あたりの負担が大きくなります。
小型船は居住スペースも狭く、人間関係の距離が近くなります。合う人とならアットホームですが、合わない人がいると逃げ場がありません。
大型船なら部門ごとに行動が分かれるので苦手な人とも距離を取れますが、小型船ではそうはいきません。荷役も食事も休憩も、常に同じメンバーと顔を合わせる生活になります。
この3つ──荷役の重さ、ガット士の権限、小型船の閉鎖性──が重なることで、ガット船は「荷役がきつい」だけでなく「人間関係もきつい」という二重のきつさを抱えやすい構造になっています。
「3G(ガット・外船・漁船)に気をつけろ」の意味
内航業界には「3Gに気をつけろ」という言い回しがあります。ガット船・外船(外国船)・漁船の3つを指し、いずれも一般の商船とは異なる文化圏として認識されている船種です。
ガット船は「陸で言えばダンプカー」に例えられることが多く、荷役のスピードが重視される現場気質が色濃いのが特徴です。衝突予防法を守らない船がいるという声や、他船への態度が荒いという指摘も掲示板では散見されます。




















ただし、これはあくまで「他の船種から見たガット船の評判」であって、全てのガット船がこうだというわけではありません。実際には真面目に運航しているガット船の方が多いはずですが、一部の荒い船が業界全体のイメージを下げてしまっている側面があります。
ガット船の評判は「他船からの視点」で語られがち










この声のように、「ガットだけが問題」ではなく、船種ごとに別のストレスがあるという視点も持っておくと冷静に判断できます。
一方で、ガット船にはメリットもある
「きつい」「やばい」の声が目立ちますが、ガット船にはメリットもあります。ネガティブな情報だけで判断するのはもったいないです。
乗船サイクルが短い
ガット船は約2ヶ月乗船で休暇が回ってくる会社が多いです。タンカーの「3〜4ヶ月乗船・1ヶ月休暇」と比べると、乗船期間が短いのは大きなメリットです。










給料は悪くない
ガット士のポジションは技術職なので、経験を積めば船長以上の給料になることもあります。部員やオペレーターでも、荷役手当がつく分、同じトン数のカーゴより手取りが多い傾向があります。
会社と人を選べば十分に働ける
前述した通り、ガット船のきつさは「ガット士の人柄」に左右される部分が大きいです。裏を返せば、ガット士がまともな船なら普通に働ける環境です。










船団単位で運航している会社なら1隻あたりの人数に余裕を持たせているところもあり、「ガット船=全部ブラック」ではありません。
同じガット船でも、何が違うのか
「会社による」とよく言われますが、具体的にどこが違うのかを分解すると、見るべきポイントが見えてきます。
| 項目 | 当たりの傾向 | ハズレの傾向 |
|---|---|---|
| 乗組員数 | 7人(余裕あり) | 5人(ギリギリ) |
| 荷役の種類 | 砂利中心で安定 | スクラップ・廃材含め何でも |
| ガット士の固定性 | 長く固定されていて安定 | 入れ替わりが多く雰囲気が荒れやすい |
| 船団運航か | 複数隻で応援が利く | 1隻だけで全部こなす |
| 休みの回り方 | サイクルが明確で崩れにくい | 繁忙期に延びる・曖昧 |
つまり、ガット船を選ぶというよりも「どんな運航体制の会社の、どんな船に乗るか」を選ぶ感覚の方が実態に近いです。求人票だけでは見えない部分が多いので、面接と体験乗船で確認することが重要になります。
他の「きつい」船種との違い
「きつい船種」と聞くとタンカーやROROも名前が挙がりますが、きつさの中身はまったく違います。
| 船種 | きつさの中身 | ガット船との違い |
|---|---|---|
| 白油タンカー | 荷役の煩雑さ+仮バースなし | 荷役は頭を使うきつさ。体力より精神的消耗 |
| RORO船 | ダイヤ拘束+仮バースゼロ | スケジュールのきつさ。甲板部はハードだが機関部は比較的楽 |
| コンテナ船(近場) | 入出港回数+睡眠不足 | ロープ出しの繰り返し。荷役は陸側がやるが入出港が多すぎる |
| ガット船 | 荷役+人間関係+小型船の閉鎖性 | 荷役も人間関係も「船種の構造」に起因するのが特徴 |
タンカーやROROは「仕事がきつい」のであって、人間関係は乗組員次第。ガット船はそれに加えて「ガット士の権限」という船種固有の構造があるため、当たり外れの振れ幅が大きくなります。
各船種の詳しい比較はこちらの記事でまとめています。
ガット船に乗るなら面接で確認すべきこと
ガット船の求人に応募するなら、面接で次のポイントは最低限確認した方がいいです。
面接で聞くべきポイント
→ 船内環境を左右する最重要ポイント。直接聞くのが一番確実です。
② 1隻あたりの乗組員は何人ですか?
→ 5人と7人では1人あたりの負担がまるで違います。
③ 乗船サイクルと休暇日数は?
→ 「2ヶ月乗船」が多いですが、繁忙期に延びる会社もあります。
④ 荷役の種類はどのくらいありますか?
→ 砂利専門か、スクラップや廃材もやるかで忙しさが変わります。
⑤ 体験乗船はできますか?
→ ガット船ほど「乗ってみないと分からない」船種はありません。可能なら必ず乗ってください。
特に①と⑤は重要です。ガット船のきつさは構造的な問題が大きいですが、逆に言えば「構造がちゃんとしている会社」を選べばリスクを大幅に減らせます。
質問より「答え方」を見る
面接では質問内容そのものより、相手がどれだけ具体的に答えるかが大事です。
「ガット士はどんな方ですか?」と聞いたときに「みんな仲いいよ」「大丈夫だよ」としか返ってこない会社は、良くも悪くも実態が見えません。逆に「今その船には何人いて、どういう役割で回しているか」まで話せる会社は、現場の整理ができている可能性が高いです。
筆者の3社の転職経験でも、休暇日数や月の航海数を具体的な数字で答えてくれた会社は入社後もギャップが少なかったです。一方、航海数を曖昧にされた会社は、入ってから聞いていた条件と違う場面がありました。特に給料面は、面接の印象と実際の手取りが食い違いやすいポイントです。
言いにくいことをちゃんと説明してくれる会社かどうか──ここが、入ってからの安心感にかなり直結します。
体験乗船で見るべきは「雰囲気」よりも仕事の回し方
体験乗船ができるなら、「なんとなく雰囲気が良さそうか」だけで終わらせないでください。見るべきは仕事の回し方です。
特に注意して見たいのは次の5つです。
- ガット士と船長の関係 ── 指示系統が機能しているか
- 乗組員同士の話し方 ── ピリついているか、普通に会話しているか
- 荷役後の片付けの回し方 ── 全員でやるか、特定の人に押し付けているか
- 未経験者への接し方 ── 説明が丁寧か、怒鳴るだけか
- 忙しいときの態度 ── 余裕がないときほど人柄が出る
ピリついていても段取りが整っている船はあります。でも、怒鳴るだけで教え方が雑な船は長く続きにくいです。体験乗船は「船を見る場」でもありますが、それ以上に「人と現場の回り方」を見る場だと思っておくと失敗しにくいです。





船会社の見分け方について詳しく知りたい方はこちら。
ガット船に向いている人・向いていない人
ここまでの内容を踏まえて、ガット船の向き不向きを3つの軸で整理します。
向いている人
・少人数の距離感が平気 ── 5〜7人と常に顔を合わせる生活に耐えられるかがポイント
・乗船期間を短く回したい ── 約2ヶ月で休暇が回る点を重視する人には合います
向いていない人
・荷役のない船が良い ── ガット船は荷役が仕事の中心。荷役に関わりたくないならフェリーや調査船の方が合います
・大きな船で適度に距離を保ちたい ── 499t以下の小型船に閉鎖感を感じるなら難しいです
「体力がある=向いている」ではなく、少人数の閉鎖空間で人間関係のストレスをどの程度受け流せるかがガット船の向き不向きの核心です。ここが問題なければ、荷役の体力面は慣れでカバーできる範囲です。
まとめ
この記事のポイント
- ガット船がきつい理由は「荷役が全部自前」「ガット士の権限が大きい」「小型船で逃げ場がない」の3つ
- 「3G(ガット・外船・漁船)に気をつけろ」は業界の定番フレーズ
- 一方で乗船サイクルが短く(約2ヶ月)、給料も悪くないというメリットがある
- きつさの大半はガット士の人柄と会社に起因するため、船と会社を選べば十分に働ける
- 面接でガット士の人柄と乗組員数を確認し、可能なら体験乗船をすること








→ 未経験・無資格・借金150万から船員になった僕の3社転職記録
これから船員を目指す方は、転職の全体像も合わせて押さえておきましょう。
給料の相場が気になる方はこちら。
※この記事は筆者の3社勤務経験、および現役・元船員の口コミをもとに構成しています。引用元の掲示板は現在閉鎖されています。給与・制度・会社の実態は時期や個人の状況により異なります。就職・転職の際は最新の公式情報や、会社への直接の問い合わせで確認してください。



