















この記事はこんな方におすすめ
- 「ガット船って本当にやばいの?」と気になっている
- 「結局ガット船の給料っていくらなの?」
- 「ガット士って何? 船長より偉いって本当?」
- 「休みはどれくらい? 何日乗って何日休めるの?」
- 「ガット船の求人を見つけたけど応募していいか迷っている」
※この記事の内容は筆者の3社勤務経験、現役・元船員の口コミ、および海のハローワークネット求人の独自集計(2026年2〜10月・12回定点観測)をもとにした一例です。会社や時期によって異なりますので参考程度にしてください。
ガット船とは? 何を運び、誰が何をする船なのか
ガット船は、船に積んだクレーンとグラブバケットで砂利・砂・砕石などを自分たちで積み降ろしする貨物船です。鋼材船やコンテナ船のように陸側の荷役業者に任せるのではなく、「自分たちで積んで、自分たちで降ろす」のがガット船の基本です。
港湾工事や建設資材の輸送を担う、インフラを支える仕事です。給料の相場を先に書いておくと、求人票の手取りは下限の中央値で40万円、上限の中央値で53万円。月給の上限で見ると内航の全船種でトップです。その金額が出る理由と、引き換えになっているものを、この記事の中で順に説明します。
■ ガット船が運ぶもの:砂・砂利・砕石・残土・スラグ
海のハローワークネットのガット船求人292件の「主要積載貨物」欄を見ると、土・砂利・砕石、建設資材、砂・残土、砕砂・スラグ、石灰、石炭が並びます。砂利系が大半で、ほかにスラグ(製鉄の副産物)や石炭、クリンカ(セメントの原料)を運ぶ船もあります。口コミではスクラップや廃材を運ぶ船の話も出てきますが、求人票の積載貨物欄にスクラップと書いた求人はありませんでした。
船に取り付けられたクレーン(デリック)の先に、グラブバケットという大きなハサミ型のバケツが付いています。これで荷をつかんで船倉に積み、着いた港でつかんで降ろします。運ぶ荷物の種類が多い船ほど、毎回の荷役条件と船倉清掃の手間が変わります。
■ ガット船の仕事内容:航海当直+荷役+船倉清掃
ガット船の乗組員の仕事は、航海当直(ワッチ)と入出港作業に、荷役と船倉清掃が乗ります。クレーンを操作するのはガット士(クレーン士)ですが、グラブで取りきれない荷は残りの乗組員が船倉に降りてかき集めます。ハッチカバーの開閉や甲板の洗い流しも自分たちの仕事です。












砂利や石灰石の専用船なら毎回同じ荷なので船倉清掃は軽く済みます。スラグから残土まで何でも運ぶ船は、荷が変わるたびに船倉を掃除する必要があり、ここがきつさの分かれ目になります。
■ ガット士・クレーン士とは? 資格は必要か
ガット船には他の船種にない「ガット士」というポジションがあります。グラブバケットを操作する乗組員で、求人票では「ガット士」「クレーン士」の2つの職名で出てきます。この腕一つで荷役の時間が決まるため、船内で大きな発言力を持つことがあります(詳しくは後述の「きつい理由②」で)。
資格について、求人データで分かることを書いておきます。ガット船と砂利運搬船のガット士・クレーン士の求人27件を見ると、クレーンの免許を応募条件にした求人はゼロでした。代わりに求められているのは海技免状と海上実歴で、27件中18件が航海(または機関)の海技免状を必須とし、全件が海上実歴ありの条件です。必要な級は6級が14件、5級が3件です。
つまりガット士・クレーン士は「クレーンだけを扱う専門職」ではなく、航海士を兼ねる職員のポジションです。ワッチ(航海当直)に入るかどうかは船によりますが、ガット士もワッチに入る船が多いという声があります。グラブ操作そのものは船内で先輩から教わって覚えるのが実態で、「クレーンを習いたい人も募集。習い始めたらクレーン手当が付く」と書いた求人もあります。
■ 「ガット船」と「砂利運搬船」の違い
海のハローワークネットでは「ガット船」と「砂利運搬船」が別の船種区分になっていて、2026年2〜10月の求人はガット船292件、砂利運搬船109件です。どちらも砂利を運ぶ船で、クレーンを載せていれば現場ではどちらも「ガット」と呼ばれます。給料の下限中央値は両方とも40万円で、違いは会社の登録の仕方の差と考えてください。この記事は「ガット船」区分の292件で集計しています。
クレーンを載せた台船(ガットバージ)は自力で走れない別物で、求人上も「台船」「作業船」の区分です。
■ サイズと乗組員:499tに5人乗りが標準
内航のガット船は499t以下の小型船が中心です。求人292件のトン数中央値は499t、400〜499tが77%を占め、残りは700t台が中心です。乗組員数は5人が最多(42%)で、4〜6人が全体の75%。499tの船を5人で回すのが標準形で、1人あたりの負担が大きくなる理由はここにあります。
航行区域は沿海が80%、平水10%、近海9%。会社の数は57社で、各時点で40〜80件の求人が出ています。
ガット船の給料はいくら? 手取り・年収・賞与を求人292件で解説
















ガット船の給料・結論
- 手取り月額:下限の中央値40万円、上限の中央値53万円(求人292件・給与記載276件)
- 月給の上限は26船種中トップ。下限は貨物船と同じ40万円で「中の上」
- 年収の目安:約520〜690万円(手取り月額×13ヶ月)
- 賞与は中央値1.0ヶ月で、賞与月数の記載がある20船種中で最も低い水準
- 2026年2〜10月で、同じ求人の給与が変わったのは460件中4件。募集給与は動いていない
■ 職種別の手取り:下限と上限の中央値
海のハローワークネットに2026年2月28日〜10月20日の12回の定点観測で掲載された求人6,708件のうち、ガット船292件を独自に集計しました。求人票には手取りの「下限」と「上限」が書かれているので、その両方の中央値を職種別に並べます。
| 職種 | 手取り下限(中央値) | 手取り上限(中央値) | 求人数 |
|---|---|---|---|
| 船長 | 45.0万円 | 60.0万円 | 26件 |
| 機関長 | 42.0万円 | 60.0万円 | 39件 |
| 一航士 | 40.0万円 | 57.0万円 | 38件 |
| 一機士 | 40.0万円 | 55.0万円 | 29件 |
| 二航士 | 43.0万円 | 52.5万円 | 23件 |
| 航海士(級の指定なし) | 36.5万円 | 50.0万円 | 29件 |
| 機関士(級の指定なし) | 40.0万円 | 50.0万円 | 26件 |
| 甲板員 | 30.9万円 | 40.0万円 | 26件 |
| 機関員 | 30.0万円 | 39.5万円 | 16件 |
| ガット士・クレーン士 | 47.5万円 | 62.5万円 | 11件 |
| ガット船 全体 | 40.0万円 | 53.0万円 | 292件 |
※海のハローワークネット求人6,708件(2026年2月28日〜10月20日・12回定点観測のユニーク求人)のうちガット船292件を独自集計。給与欄が空欄の求人(16件)は除く。上限は上限が記載された求人(217件)の中央値
■ 全船種と比べると:部員・若手職員で差が大きい
同じ役職を全船種の中央値と比べると、ガット船の高さがどこにあるかが見えます。
| 役職 | ガット船(下限/上限) | 全船種(下限/上限) |
|---|---|---|
| 部員(甲板員・機関員など) | 30.5万/40.0万 | 28.0万/36.0万 |
| 航海士・機関士(級の指定なし)・三航士 | 40.0万/50.0万 | 34.0万/45.0万 |
| 二航士・二機士 | 43.0万/53.0万 | 38.0万/45.0万 |
| 一航士・一機士 | 40.0万/55.0万 | 40.0万/49.0万 |
| 船長・機関長 | 45.0万/60.0万 | 45.0万/52.0万 |
※手取り下限・上限それぞれの中央値(万円)。同上の独自集計
下限(入り口の最低保証)で差がつくのは部員と若手職員で、甲板員・機関員で2〜3万円、級の指定のない航海士・機関士と二航士・二機士で5〜6万円、ガット船のほうが高いです。一航士・一機士と船長・機関長は、下限は全船種と同じで、上限で6〜8万円高くなります。若手は入り口から高く、幹部は到達点が高い、という形です。
部員クラスでも甲板員30.9万円・機関員30.0万円は、全船種の26万円・27万円より高い水準です。荷役手当や技術手当が上乗せされるのがガット船の給料構造です。
■ ガット士・クレーン士の給料:船長を上回る求人がある
特に目を引くのがガット士・クレーン士です。ガット船の求人11件(給与記載10件)で、下限の中央値は47.5万円、上限の中央値は62.5万円、最高は上限95万円の求人でした。上限62.5万円は、ガット船の船長(60万円)も全船種の船長(55万円)も上回ります。グラブ操作という技術に、それだけの値段がついているということです。
ただし件数が少ないので、幅も大きいです。下限32万円から始まる求人もあれば、上限95万円の求人もあります。砂利運搬船を含めた27件で見ると下限45万円・上限58万円が中央値で、「船長級の給料が出る職種」という見方は変わりません。












■ ガット船の年収はいくら? 手取り月額から換算する
















求人票の多くは月給の表記で止まっており、年収がいくらになるのかが分かりません。そこで、職種別の手取りに賞与1.0ヶ月分(ガット船の賞与中央値)を加えた13ヶ月相当で年収を概算しました。
| 職種 | 手取り月額(下限〜上限の中央値) | 手取り年収の目安 |
|---|---|---|
| 甲板員 | 30.9〜40.0万円 | 約400〜520万円 |
| 機関員 | 30.0〜39.5万円 | 約390〜510万円 |
| 航海士(級の指定なし) | 36.5〜50.0万円 | 約475〜650万円 |
| 機関士(級の指定なし) | 40.0〜50.0万円 | 約520〜650万円 |
| 二航士 | 43.0〜52.5万円 | 約560〜680万円 |
| 一航士 | 40.0〜57.0万円 | 約520〜740万円 |
| 一機士 | 40.0〜55.0万円 | 約520〜715万円 |
| 機関長 | 42.0〜60.0万円 | 約545〜780万円 |
| 船長 | 45.0〜60.0万円 | 約585〜780万円 |
| ガット士・クレーン士 | 47.5〜62.5万円 | 約620〜810万円 |
| ガット船 全体 | 40.0〜53.0万円 | 約520〜690万円 |
※手取り月額×13ヶ月で算出した概算。海のハローワークネット求人6,708件(2026年2〜10月・12回定点観測)のガット船292件を独自集計
数字を見るときの注意点を2つ挙げておきます。
ひとつは、上限側の数字は到達点だということです。求人票の給与レンジの上限なので、入社直後からこの金額が出るわけではありません。経験年数と役職が上がった先の数字と考えてください。
もうひとつは賞与の扱いです。ここでは手取り月額の1ヶ月分を単純に足していますが、実際の賞与は基本給をベースに計算される会社がほとんどで、手取り1ヶ月分より少なくなるケースが一般的です。年収の目安は上振れ側に見ていると思っておいた方が安全です。
■ 見落とされがちな「賞与の薄さ」:年収で比べると順位が変わる
ここまでは月給の話です。年収ベースで考えるなら、賞与(ボーナス)の水準を無視できません。
求人票の賞与月数の欄を集計すると、ガット船の中央値は1.0ヶ月(記載57件のうち50件が1ヶ月)でした。賞与月数の記載が20件以上ある20船種の中で最も低い水準です。
| 船種 | 賞与中央値(年間) | 手取り上限(中央値) | 年収の目安(上限×賞与込み) |
|---|---|---|---|
| セメント船 | 4.0ヶ月 | 45万円 | 約720万円 |
| RORO船 | 4.3ヶ月 | 43万円 | 約700万円 |
| ケミカル船・LPG船 | 2.0ヶ月 | 50万円 | 約700万円 |
| ガット船 | 1.0ヶ月 | 53万円 | 約690万円 |
| 貨物船 | 2.0ヶ月 | 46万円 | 約645万円 |
| タンカー | 2.0ヶ月 | 45万円 | 約630万円 |
※手取り上限の中央値×(12+賞与月数の中央値)で算出した概算。海のハローワークネット求人6,708件(2026年2〜10月・12回定点観測)を独自集計。賞与月数は記載のある求人のみ(ガット船57件)
月給の上限はガット船がトップですが、各船種の賞与を足すと、セメント船やRORO船に抜かれて4位になります。月給が高い船種ほど賞与が薄いという逆相関があり、ガット船はその代表格です。
下限で同じ計算をすると、ガット船は約520万円で、貨物船・セメント船の約560万円、RORO船の約570万円より下です。「ガット船は稼げる」は月給の話で、年収ベースでは中位。この差し引きを知らずに月給だけで選ぶと、1年目の年収で「思ったより伸びない」と感じることになります。
■ 未経験でガット船に乗った場合の給料
ガット船の甲板員・機関員の求人のうち、海上実歴「不要」は20件(甲板員10・機関員10)で、下限の中央値はどちらも30万円。実歴「要」の求人(30.9万円)とほぼ差がありません。未経験でも手取り30万円前後から始まるのがガット船の部員の相場です。全船種の甲板員(実歴不要)の25万円と比べると5万円高い水準です。
ただし、求人票の「海上実歴不要」は「自社での経験は問わない」という意味であることが多く、完全未経験の場合は条件が変わる可能性も踏まえておきましょう。
■ 2026年2〜10月、ガット船の募集給与は動いたか
「船員不足で給料が上がっている」と言われますが、求人票で確認できる範囲ではガット船も動いていません。12回の定点観測で同じ求人番号の給与を前後で比べると、460件のうち据え置きが99.1%。引き上げは2件(30万→40万円の機関長、30万→34万円の甲板員)、引き下げも2件でした。期限切れで出し直された求人(同じ会社×職種の84組)でも、据え置き75・引き上げ2・引き下げ7です。
求人の件数は常時60〜80件で、夏に40〜60件に減る以外は一定です。「人が足りないから給料を上げる」という動きは、2026年の求人票には出ていません。
給料の全体像や船種横断の年収相場を詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。










ガット船の休み・乗船サイクル:40〜60日乗船・20日休暇が中心
















ガット船の求人292件のうち、乗船サイクルの記載がある235件を集計しました。サイクル運航(乗船30日以上)の210件で、乗船期間の中央値は45日、休暇は20日です。最も多い組み合わせは「40日乗船・20日休暇」(65件)と「60日乗船・20日休暇」(64件)で、この2つで6割を占めます。次いで「45日乗船・15日休暇」「45日乗船・14日休暇」が続きます。
| 船種 | 乗船期間(中央値) | 休暇(中央値) | 乗船45日以内 | 乗船90日以上 |
|---|---|---|---|---|
| ガット船 | 45日 | 20日 | 58% | 4% |
| 貨物船 | 60日 | 20日 | 18% | 18% |
| タンカー | 70日 | 25日 | 4% | 34% |
| ケミカル船 | 70日 | 20日 | 3% | 32% |
| セメント船 | 84日 | 30日 | 12% | 50% |
| RORO船 | 90日 | 30日 | 12% | 55% |
| 全船種 | 60日 | 24日 | 14% | 34% |
※乗船30日以上のサイクル運航の求人(ガット船210件・全船種4,816件)を独自集計。海のハローワークネット求人6,708件(2026年2〜10月・12回定点観測)
ガット船は乗船45日以内の求人が58%、90日以上はわずか4%です。タンカーは中央値70日で3割が90日以上、セメント船やRORO船は半分以上が90日以上の乗船なので、「1回の乗船が短い」のはガット船のはっきりしたメリットです。
ただし、休みが「多い」わけではありません。乗船日数に対する休暇の比率は、ガット船も全船種も25%で同じです。年間の乗船日数に換算すると、40日乗船・20日休暇で約243日、60日乗船・20日休暇で約274日。短いサイクルで回る分、家に帰る回数は増えますが、年間の休日数は他の船種と大きく変わらないと考えておいてください。
求人の中には「乗下船サイクルに関しては応相談」としか書いていない会社もあります。サイクルが明記されていない会社は、繁忙期に乗船が延びるリスクを考慮しておいた方がいいです。日帰り・通勤型の求人も15件(5%)あり、港湾工事に張り付く船では「毎週同じ港に仮バースするので家に帰りやすい」と書いた求人もありました。












乗船延長や有給の買い取りなど、内航全体の休暇事情はこちらでまとめています。
ガット船がきつい・やばいと言われる3つの理由
ガット船が業界で「きつい」「やばい」と言われる背景には、構造的な理由が3つあります。
① 荷役を船員だけでやる
他の船種との最大の違い
「自分たちで積んで、自分たちで降ろす」のがガット船の基本。陸の助けが来ない荷役が大半です。
比較すると分かりやすいのですが、鋼材船はダンネージの片付けこそ手間なものの、積み降ろし自体は陸側がやります。コンテナ船はガントリークレーンで荷役するので船員は手出ししません。タンカーは荷役を船員がやりますが、ポンプとバルブの操作が中心で体力的な負担の種類が違います。
ガット船の荷役は、体力を使う・汚れる・危険が伴うの三拍子です。
























② ガット士という独特のヒエラルキー
グラブバケットの操作は高度な技術が必要で、この腕一つで荷役の効率が決まります。そのためガット士は船長より給料が高い船もあり、船内で大きな権限を持つことがあります。前述の給料セクションで見た通り、これは口コミだけでなく求人データでも裏付けられている話です。
問題は、このガット士の人柄によって船内環境が天と地ほど変わるということです。












他の船種では、船長が船内の秩序を保つ最終権限を持っています。しかしガット船では、ガット士が事実上の最高実力者になっている船があります。
これはガット船特有の構造的な問題で、タンカーやROROで「人間関係がきつい」と言われるのとは質が違います。他の船種は「たまたま合わない人がいた」というレベルですが、ガット船は「ガット士」というポジション自体に権限が集中する仕組みになっているため、当たり外れの影響がより大きくなります。
③ 499t以下の小型船が多い
ガット船は499t以下の小型船が中心で、乗組員は5人が最多。1人あたりの負担が大きくなります。
小型船は居住スペースも狭く、人間関係の距離が近くなります。合う人とならアットホームですが、合わない人がいると逃げ場がありません。
大型船なら部門ごとに行動が分かれるので苦手な人とも距離を取れますが、小型船ではそうはいきません。荷役も食事も休憩も、常に同じメンバーと顔を合わせる生活になります。
この3つ──荷役の重さ、ガット士の権限、小型船の閉鎖性──が重なることで、ガット船は「荷役がきつい」だけでなく「人間関係もきつい」という二重のきつさを抱えやすい構造になっています。
■ データで見る「金は出るが環境は厳しい」:6項目で他船種と比較
「きつい」「やばい」の一方で「給料は悪くない」という声もあります。求人票の設備・制度の欄で、他船種と比べました。
| 項目 | ガット船 | タンカー | 貨物船 | セメント船 | RORO船 |
|---|---|---|---|---|---|
| 手取り上限(中央値) | 53万 | 45万 | 46万 | 45万 | 43万 |
| WiFi対応済み | 41% | 92% | 72% | 95% | 88% |
| 司厨員が乗船 | 8% | 79% | 15% | 77% | 97% |
| 労働協約あり | 5% | 23% | 14% | 38% | 53% |
| 女性設備対応済み | 4% | 17% | 10% | 41% | 52% |
| 海上実歴「不要」の求人 | 13% | 22% | 13% | 15% | 16% |
※海のハローワークネット求人6,708件(2026年2〜10月・12回定点観測)を独自集計。各項目は記載のある求人に対する比率
手取りの上限はトップ。しかしWiFi・司厨・労働協約・女性設備は、比較した5船種の中で全て最下位です。求人が30件以上ある26船種の中でも、WiFiは下から2番目、労働協約は下から4番目でした。
特に司厨8%という数字の意味は大きく、ガット船の92%は司厨がいない=全員が自炊です。食料金として月4〜6万円(1日2,000円や月5万円の会社が多い)が別途支給されますが、荷役で疲れた後に自分で飯を作る生活が待っています。タンカーの79%、RORO船の97%に司厨が乗っているのと比べると、この差は毎日の生活に直結します。
労働協約5%は、ほぼ全てが未組織船という意味です。昇給・ボーナスの最低ラインを守る協定がなく、給料体系は会社の裁量次第。「手取りが高い代わりに、守ってくれるルールが何もない」という構造が数字に表れています。賞与が1.0ヶ月と薄いのも、この構造の裏返しです。










船のWiFi事情については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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船の上・海上で使えるポケットWiFi|繋がるキャリア・SIM・Starlink比較
海の上で電波が強いのはドコモとauです。初めて乗る人はドコモ回線のルーター付きポケットWiFi、大容量ならSIM+ルーターが現実的です。2026年10月からの楽天のau回線縮小への対処と、圏外で使える衛星直接通信の違いも解説しています。
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司厨がいない船の食事事情はこちら。
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司厨員の仕事内容・給料・きついこと|船の食事事情まるわかり
司厨員は船で3食を作る仕事です。1日の流れ、きついこと、給料相場、食材の仕入れ方から、司厨がいない船の自炊事情・時化の日の食事術まで、元司厨の現役船員が解説します。
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組合船と未組織船では給料の決まり方、休暇日数、退職金が根本的に違います。年齢別のおすすめ、額面だけでは比較できない理由、面接で確認すべき7項目まで、両方を経験した船員の声とともに解説します。
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「3G(ガット・外船・漁船)に気をつけろ」の意味
内航業界には「3Gに気をつけろ」という言い回しがあります。ガット船・外船(外国船)・漁船の3つを指し、いずれも一般の商船とは異なる文化圏として認識されている船種です。
ガット船は「陸で言えばダンプカー」に例えられることが多く、荷役のスピードが重視される現場気質が色濃いのが特徴です。衝突予防法を守らない船がいるという声や、他船への態度が荒いという指摘も掲示板では散見されます。
























ただし、これはあくまで「他の船種から見たガット船の評判」であって、全てのガット船がこうだというわけではありません。実際には真面目に運航しているガット船の方が多いはずですが、一部の荒い船が業界全体のイメージを下げてしまっている側面があります。
ガット船の評判は「他船からの視点」で語られがち












この声のように、「ガットだけが問題」ではなく、船種ごとに別のストレスがあるという視点も持っておくと冷静に判断できます。
それでもガット船を選ぶ理由と、会社の見分け方
数字だけ見ると「環境が悪い」の一言ですが、だからこそ逆にメリットが際立つ船種でもあります。
① 月給の到達点が高い
手取り上限の中央値53万円は、タンカー・セメント船の45万円、RORO船の43万円より8〜10万円高い水準です。ガット士・クレーン士は上限62.5万円で船長の中央値を上回り、部員クラスでも甲板員・機関員は全船種より3〜5万円高く始まります。賞与の薄さを差し引いても、月々の手取りを最優先するなら数字の裏付けがある船種です。












② 乗船サイクルが短い
前述の通り、乗船45日が中央値で、90日以上の求人は4%しかありません。「40日乗船20日休暇」「60日乗船20日休暇」と具体的なサイクルを明記している会社が多いのもガット船の特徴です。
③ 会社を選べば十分に働ける
ガット船は57社が求人を出しています。その中身を見ると、同じガット船でも会社間の差は歴然です。
求人の備考欄を読むだけで「まともな会社」と「情報が薄い会社」の差が見えてきます。292件のうち備考欄が空欄の求人は50件(17%)、50字未満の一行だけの求人が139件(48%)でした。
備考欄から読み取れる「まともな会社」の特徴
- 「全船スターリンクが整備されており…」── WiFi完備を明記
- 「年末年始は自宅にて7日〜10日間、休めます」── 休暇を具体的に保証
- 「企業年金制度、退職金制度等の充実した福利厚生制度あり」── 長期の待遇を明示
- 「賞与は原則年2回、採用1年目から支給」── ボーナスが初年度から出ることを公言
- 「食事は会社負担」「食料金月額45,000円支給」── 自炊前提でも補助が手厚い
- 「四級海技士までの資格取得支援制度あり」── 免状取得をバックアップ
- 「クレーンを習いたい人も募集。習い始めたらクレーン手当」── ガット士の育成姿勢がある
一方、備考欄に事務的な一行しか書いていない会社や、そもそも空欄の会社もあります。情報量の差がそのまま会社の透明性の差です。
海のハローワークネットの求人票は、給与欄やサイクル欄が空欄のまま出ていることも多く、「書いていない」ことの意味を読む必要があります。空欄の読み方はこちらで詳しく解説しています。
海のハローワークネットの空欄問題
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海のハローワークは使いにくい?求人1,500件で見えた空欄問題
システム改修後も使いにくさは残ったままです。求人1,500件分のデータを取得して調べたところ、手取額はほぼ全社が書くのに、乗船サイクルや残業時間は3〜5割が空欄でした。求人票で確認すべき項目もまとめています。
同じ船種でも、見るべきポイントを押さえれば当たりとハズレの判断はかなりつきます。
| 項目 | 当たりの傾向 | ハズレの傾向 |
|---|---|---|
| 乗組員数 | 6〜7人(余裕あり) | 4〜5人(ギリギリ) |
| 荷役の種類 | 砂利中心で安定 | スラグ・残土含め何でも |
| ガット士の固定性 | 長く固定されていて安定 | 入れ替わりが多く雰囲気が荒れやすい |
| 船団運航か | 複数隻で応援が利く | 1隻だけで全部こなす |
| 休みの回り方 | サイクルが明確で崩れにくい | 「応相談」のみ・繁忙期に延びる |
| 備考欄の情報量 | WiFi・食料金・休暇を具体的に記載 | 空欄 or 一行だけ |
つまり、ガット船を選ぶというよりも「どんな運航体制の会社の、どんな船に乗るか」を選ぶ感覚の方が実態に近いです。












船団単位で運航している会社なら1隻あたりの人数に余裕を持たせているところもあり、「ガット船=全部ブラック」ではありません。
他の「きつい」船種との違い
「きつい船種」と聞くとタンカーやROROも名前が挙がりますが、きつさの中身はまったく違います。
| 船種 | きつさの中身 | ガット船との違い | 手取り上限(中央値) |
|---|---|---|---|
| 白油タンカー | 荷役の煩雑さ+仮バースなし | 荷役は頭を使うきつさ。体力より精神的消耗 | 45万 |
| RORO船 | ダイヤ拘束+仮バースゼロ | スケジュールのきつさ。甲板部はハードだが機関部は比較的楽 | 43万 |
| コンテナ船(近場) | 入出港回数+睡眠不足 | ロープ出しの繰り返し。荷役は陸側がやるが入出港が多すぎる | 45万 |
| ガット船 | 荷役+人間関係+小型船の閉鎖性 | 荷役も人間関係も「船種の構造」に起因するのが特徴 | 53万 |
※手取り上限は求人票の上限の中央値。海のハローワークネット求人6,708件(2026年2〜10月)を独自集計
タンカーやROROは「仕事がきつい」のであって、人間関係は乗組員次第。ガット船はそれに加えて「ガット士の権限」という船種固有の構造があるため、当たり外れの振れ幅が大きくなります。
一方で、手取りの列を見てください。ガット船は「きつい船種」の中で月給が頭一つ抜けています。タンカー・コンテナ船との差は8万、RORO船との差は10万。月々では96万〜120万円の差になります(賞与を含めた年収では差が縮まることは前述の通りです)。「きつさの対価」が最も明確に月給に出るのがガット船です。
各船種の詳しい比較はこちらの記事でまとめています。
ガット船に乗るなら面接で確認すべきこと
ガット船の求人に応募するなら、面接で次のポイントは最低限確認した方がいいです。
面接で聞くべきポイント
→ 船内環境を左右する最重要ポイント。直接聞くのが一番確実です。
② 1隻あたりの乗組員は何人ですか?
→ 5人と7人では1人あたりの負担がまるで違います。
③ 乗船サイクルと休暇日数は?
→ 「40日乗船20日休暇」「60日乗船20日休暇」が多数ですが、「応相談」の会社は繁忙期に延びることがあります。
④ 荷役の種類はどのくらいありますか?
→ 砂利専門か、スラグや残土もやるかで船倉清掃の手間が変わります。
⑤ 体験乗船はできますか?
→ ガット船ほど「乗ってみないと分からない」船種はありません。可能なら必ず乗ってください。
⑥ 求人票の備考欄は事前にチェックしましたか?
→ WiFi・食料金・乗船サイクルが備考欄に書いてある会社は情報開示に前向きです。ガット船は備考欄の情報量と会社の透明性が比例する傾向があります。面接前に読んでおくと質問の精度が上がります。
特に①と⑤は重要です。ガット船のきつさは構造的な問題が大きいですが、逆に言えば「構造がちゃんとしている会社」を選べばリスクを大幅に減らせます。
質問より「答え方」を見る
面接では質問内容そのものより、相手がどれだけ具体的に答えるかが大事です。
「ガット士はどんな方ですか?」と聞いたときに「みんな仲いいよ」「大丈夫だよ」としか返ってこない会社は、良くも悪くも実態が見えません。逆に「今その船には何人いて、どういう役割で回しているか」まで話せる会社は、現場の整理ができている可能性が高いです。
筆者の3社の転職経験でも、休暇日数や月の航海数を具体的な数字で答えてくれた会社は入社後もギャップが少なかったです。一方、航海数を曖昧にされた会社は、入ってから聞いていた条件と違う場面がありました。特に給料面は、面接の印象と実際の手取りが食い違いやすいポイントです。
言いにくいことをちゃんと説明してくれる会社かどうか──ここが、入ってからの安心感にかなり直結します。
体験乗船で見るべきは「雰囲気」よりも仕事の回し方
体験乗船ができるなら、「なんとなく雰囲気が良さそうか」だけで終わらせないでください。見るべきは仕事の回し方です。
特に注意して見たいのは次の5つです。
- ガット士と船長の関係 ── 指示系統が機能しているか
- 乗組員同士の話し方 ── ピリついているか、普通に会話しているか
- 荷役後の片付けの回し方 ── 全員でやるか、特定の人に押し付けているか
- 未経験者への接し方 ── 説明が丁寧か、怒鳴るだけか
- 忙しいときの態度 ── 余裕がないときほど人柄が出る
ピリついていても段取りが整っている船はあります。でも、怒鳴るだけで教え方が雑な船は長く続きにくいです。体験乗船は「船を見る場」でもありますが、それ以上に「人と現場の回り方」を見る場だと思っておくと失敗しにくいです。










船会社の見分け方について詳しく知りたい方はこちら。
ガット船に向いている人・向いていない人
ここまでの内容を踏まえて、ガット船の向き不向きを3つの軸で整理します。
向いている人
・少人数の距離感が平気 ── 4〜6人と常に顔を合わせる生活に耐えられるかがポイント
・月々の「稼ぎ」を最優先にしたい ── 手取り上限53万円は全船種トップ。環境より金額を重視する人には数字の裏付けがあります
向いていない人
・荷役のない船が良い ── ガット船は荷役が仕事の中心。荷役に関わりたくないならフェリーや調査船の方が合います
・WiFiや食事環境、ボーナスを重視する ── WiFi対応率41%・司厨乗船率8%・賞与1.0ヶ月はいずれも最低水準。ネット環境と食事、年収の安定が譲れない人には厳しいです
「体力がある=向いている」ではなく、少人数の閉鎖空間で人間関係のストレスをどの程度受け流せるかがガット船の向き不向きの核心です。ここが問題なければ、荷役の体力面は慣れでカバーできる範囲です。
年齢の面では、ガット船の求人は年齢上限を70歳とするものが最多(42%)で、65歳までが26%です。40代・50代からの転職でも入り口は広い船種です。
ガット船についてよくある質問
Q. ガット船とはどんな船ですか?
Q. ガット船の仕事内容は?
Q. ガット船の給料はいくらですか?
Q. ガット船の休みはどれくらいですか?
Q. ガット士になるのに資格は必要ですか?
Q. ガット船のサイズ(トン数)は?
Q. 女性でもガット船に乗れますか?
まとめ
この記事のポイント
- ガット船がきつい理由は「荷役が全部自前」「ガット士の権限が大きい」「499tを5人で回す小型船で逃げ場がない」の3つ
- 「3G(ガット・外船・漁船)に気をつけろ」は業界の定番フレーズ
- 給料は手取り下限40万円・上限53万円が中央値(求人292件)。月給の上限は26船種中トップだが、WiFi 41%・司厨 8%・労働協約 5%・女性設備 4%は主要船種で全て最下位
- ガット士・クレーン士は上限中央値62.5万円で船長を上回る。ただしクレーンの免許ではなく、航海の海技免状と海上実歴を求める求人が大半
- 賞与は中央値1.0ヶ月で最低水準。年収の目安は約520〜690万円で、賞与込みではセメント船・RORO船に抜かれる
- 乗船サイクルは45日乗船・20日休暇が中央値。90日以上は4%で1回の乗船が短いが、休暇の比率(25%)は他船種と同じ
- 2026年2〜10月、同じ求人の給与が変わったのは460件中4件。募集給与は動いていない
- 57社が求人を出しており、備考欄の情報量(17%が空欄・48%が一行だけ)に会社の透明性が表れる
- 面接でガット士の人柄と乗組員数を確認し、可能なら体験乗船をすること
















→ 未経験・無資格・借金150万から船員になった僕の3社転職記録
これから船員を目指す方は、転職の全体像も合わせて押さえておきましょう。
※この記事は筆者の3社勤務経験、現役・元船員の口コミ、および海のハローワークネット掲載求人6,708件(2026年2月28日〜10月20日の12回定点観測のユニーク求人。うちガット船292件)の独自分析をもとに構成しています。給与は求人票の「手取賃金」の下限・上限の中央値で、額面ではありません。2026年6月以降は給与欄が空欄の求人が約2割あり、集計から除いています。引用元の掲示板は現在閉鎖されています。給与・制度・会社の実態は時期や個人の状況により異なります。就職・転職の際は最新の公式情報や、会社への直接の問い合わせで確認してください。
参考:5ch船乗りなんでも相談室シリーズ(2016〜2021年の投稿を集約)




