この記事を読む前に
最初に正直に書きます。
「船員はNISAやれ」みたいな記事、世の中に腐るほどあります。ほとんどが胡散臭いです。アフィリエイト報酬目当てに、薄い情報をコピペで量産している記事が大半です。筆者も昔はそういう記事を警戒してきた側でした。
なので、この記事を読む前に、立ち位置を3つ開示しておきます。
- この記事本文に証券会社のアフィリエイトリンクは貼っていません(ただし関連記事として紹介しているfunejin内の他記事には、生活用品・通信サービスなどのアフィリエイトを含む場合があります)
- 筆者は陸上時代に150万円の借金を抱えていました。船員になってから1年半で完済し、現在はNISAでオルカン積立中です
- この記事は、特に学生や若手船員に向けて書いています。すでに資産形成が進んでいる方には新しい情報はないかもしれません
胡散臭いと思いながら読んでもらってかまいません。それでも何か残るところがあれば嬉しいです。
この記事はこんな方におすすめ
- 「NISAって聞くけど、なんでみんなあんなに勧めるの?」
- 「これから船員になる予定で、お金の話を整理しておきたい」
- 「船で給料貯まってるけど、何に使えばいいかわからない」
- 「投資って怖いし、よくわからないから貯金してる」
韓国で3.8万件超の被害が認定された「チョンセ」という制度の話























韓国には「チョンセ」という独特の賃貸制度があります。借りる人は大家に物件価格の6〜8割(マンションなら2,000万〜5,000万円規模)を「保証金」として預け、その代わり月々の家賃はゼロ円で住める仕組みです。契約終了時に保証金が全額返ってきます。
「家賃タダで住めるなら最高じゃん」という制度ですが、いま韓国で大問題になっています。大家が保証金を返さずに逃げる「チョンセ詐欺」が大量発生し、被害者は3.8万件超(2026年5月時点、韓国政府認定)。連続自殺まで起きていて社会問題化しています。
理由は単純で、「個人が個人に2,000万円を無担保で預ける」という仕組みが、不動産下落と詐欺の前に崩壊したからです。日本でいうと、敷金として2,000万円を大家に預けて2年後に「全額返してね」と言う感覚です。大家が経済的にコケた瞬間、借主は終わります。























日本人にとっての「資産を増やす制度的な選択肢」は何かというと、NISAです。
そして、日本のNISAは、少なくとも長期分散投資を始める制度としては、かなり恵まれた仕組みになっています。日本人は当たり前すぎて気づいていませんが、世界的に見てもこの水準の使いやすさは多くありません。
日本のNISAは世界的に見てかなり恵まれた制度です























新NISAの内容を整理するとこうです。
- 年間360万円まで投資可能(つみたて120万+成長240万)
- 生涯投資枠1,800万円
- 非課税期間が無期限
- 世界中のインデックスファンドが買える(eMAXIS Slimオルカン、S&P500など)
- 信託報酬が世界最低水準(0.05%台)
「月3万円を20年積み立てて、年平均7%で運用」と仮定すると、20年後の評価額は約1,560万円。元本は720万円なので、運用益が約840万円。この840万円の利益が全額非課税です。
特定口座だと、利益に20.315%の税金がかかるので、170万円以上が税金で消えます。NISAだとそれがゼロ円です。
NISAでオルカン20年積立シミュレーション(年7%想定)
- 月3万円 × 20年 = 元本720万円
- 評価額:約1,560万円
- 運用益:約840万円(全額非課税)
- 仮にNISAじゃなければ:税金で170万円以上が消える
ただし、ここで誤解しないでほしいのは、NISAは「利益が出たら非課税になる制度」であって、利益そのものを保証する制度ではないということです。投資である以上、短期的にマイナスになる年は普通にあります。年7%は過去30年程度の長期平均から推定した数字で、未来を保証するものではありません。
それでも長期分散投資の「枠組み」として、日本のNISAが世界的に有利な水準にあるのは事実です。
船乗りはNISAをやるのに最適な職業です























理由1:乗船中はほぼお金を使わない
船乗りの最大の特徴は、乗船中の固定費以外の出費がほぼゼロであることです。
筆者の場合、乗船中に純粋に使うお金は飲料水代の月1万円程度だけです。食費は船で出るので浮きます。家賃と通信費などの固定費は陸上と同じくかかりますが、それ以外の交際費・外食代・娯楽費がほぼ発生しません。
この生活を続けると、年間200万円を貯めるポテンシャルが普通に出てきます。陸上の同年代の会社員が、家賃・食費・交際費・通勤費でほぼ手取りが消えていくのと比べると、構造的にお金が残る職業です。
問題は、この貯まったお金を銀行口座で塩漬けにすると、20年経ってもほとんど増えないこと。仮に年200万円を20年間、銀行普通預金(年利0.02%)で貯めても、利息は数千円レベルです。同じ金額をNISAでオルカン積立に回した場合との差は、20年後で軽く1,000万円以上開きます。
理由2:時間がある(船の上は学習の宝庫)
陸上勤務の人が投資を学ぼうとすると、平日夜と休日しか時間が取れません。船乗りは、当直外の時間に勉強するなり、Kindleで投資本を読むなりできます。
最近は船にWi-Fiも入ってきて、YouTubeで投資系チャンネルを見ることもできるようになりました。筆者自身、投資を始めた最初のきっかけはYouTubeの投資解説動画です。時間があるうちにインプットして、給料が入ったら淡々と積み立てる。これができる職業は意外と少ないです。
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理由3:乗船前に設定すれば、あとは自動で積み立てが進む
これは船員ならではの大きなメリットです。
NISAでインデックスファンドを買う場合、一度自動積立を設定すれば、毎月勝手に買い付けが進みます。乗船中に通信が不安定でも、相場が荒れても、自分が何もしなくても積立は粛々と継続されます。
船員に勧めたい運用方法はこの一択です。
- 下船中にネット証券で口座開設を完了させる(マイナンバーカードと本人確認書類が必要)
- クレカ積立 or 銀行口座引き落としで毎月の自動積立を設定する
- 買い付け銘柄はeMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)か S&P500のどちらか1本
- あとは乗船してOK。何もしない
筆者も口座開設は下船中にやりました。乗船中は船内Wi-Fiで本人確認のアップロードなどをやるのが面倒なので、休暇中に1〜2時間で全部済ませてしまうのが現実的です。
船乗りで「NISAやってない人」がまだ多い理由























- そもそも知らない:船で生活してると陸の情報が入りにくい。NISAという言葉自体を聞いたことがない人もいます
- 「投資は怖い」という刷り込み:親世代が「株はギャンブル」と言ってきた影響。バブル崩壊・リーマンの記憶が強い
- 「資産形成」より「目先の娯楽」に流れがち:乗船中に時間と金が溜まるからこそ、下船日にパチンコ・スナック・オンラインカジノに流れる人が一定数います
特に3つ目は船員業界のリアルです。筆者の周りでも、乗船中のスマホからオンラインカジノに数十万円突っ込んでいた同僚がいました。乗船中はお金を使う場所がないからこそ、スマホで完結する娯楽(ギャンブル系・課金ゲーム)にお金が流れやすい構造があります。
筆者の話:陸上時代に借金150万円ありました
ここで自分の話をします。
冒頭でも書きましたが、筆者は陸上にいた頃、約150万円の借金を抱えていました。
原因は生活費と浪費です。お金の知識がなかったので、「足りないからカードで補う」を繰り返した結果、借金が膨らみました。当時の自分は「投資」「資産形成」という言葉から最も遠い場所にいました。
船員になってから状況が変わりました。乗船中はそもそもお金を使う場所がない。気づいたら借金が自然に減っていき、1年半で完済しました。
借金を返し終わってから、ようやくNISA口座を開設する余裕ができました。
陸上で借金150万円を抱えていた人間と、船員になってNISAでオルカン積立してる人間が、同一人物です。何が変わったかというと「お金を使えない環境に身を置けた」だけです。船員という職業の最大の利点は、ここにあると筆者は思っています。
仮バースで気づいたらパチンコ屋にいる、給料日に飲み歩いて気づいたら口座が空、そういう状態でも、船員として乗船さえしていれば借金は減ります。少なくとも筆者はそれで救われました。
NISAを始める前に、まず現金を残してください























NISAが有利だからといって、手元の貯金を全部投資に回すと痛い目を見ます。投資に回すのは、当面使う予定のないお金だけです。
船員は乗船中に貯金が増えやすいですが、以下のような場面では現金がすぐに必要になります。
船員がNISA前に残しておきたい現金
- 最低でも生活費3〜6ヶ月分(独身なら150万円前後が目安)
- 次の乗船までの生活費(休暇中の出費)
- 転職・退職時の予備資金
- 病気・ケガ・実家帰省などの急な出費
この現金を確保したうえで、余ったお金をNISAに回す。これが鉄則です。
ちなみに、生活防衛資金は普通預金か個人向け国債で十分です。利息はほぼ付きませんが、これは「増やすお金」ではなく「すぐ使える保険」なので、安全性と流動性を優先します。
ただし、筆者個人はもっと少なめでやっています
ここで正直に書きます。
教科書的には「3〜6ヶ月分」が定番ですが、筆者個人は概ね30万円程度を緊急用に確保して、残りは全額NISAに回しています。いわゆる「フルインベストメント」です。
理由は以下の通りです。
- 船員は船員保険があり、傷病手当金や失業給付が手厚い
- 現役世代で健康なら、収入が突然ゼロになるリスクは限定的
- クレジットカードがあれば1ヶ月程度のキャッシュフローはカバーできる
- 150万円を低利息で寝かせる機会損失が大きい(年7%運用と比較すると年10万円以上の差)
- いざとなれば投資信託は売却して現金化できる(ただし入金まで数営業日かかり、相場下落時に売ると損失が確定する点には注意)
ただしこれはアグレッシブな運用なので、誰にでもおすすめできるわけではありません。特に投資を始めたばかりの人がいきなりこれをやると、市場が下落したときに精神的に耐えられず売ってしまうリスクがあります。
現実的な進め方としては、こんな段階運用が安全だと思います。
- まずは教科書通り、生活費3〜6ヶ月分を確保してからNISA開始
- 1〜2年積立を続けて、暴落も含み損も経験する
- 「下がっても売らずに耐えられる」と確信できたら、生活防衛資金を圧縮していく
筆者も最初から30万円だったわけではなく、市場の値動きに慣れた後で段階的に圧縮しました。最初は安全寄りで始めて、経験を積んでから攻めに切り替える。これが結果的に一番リターンが安定します。
借金がある人は、まず借金返済が先です
借金がある状態でいきなりNISAを始めようとする人もいますが、これは基本的におすすめしません。
借金の金利は年5〜15%、NISAの期待リターンは年5〜7%。どう計算しても借金返済が先です。筆者も借金150万円を完済してからNISAを始めました。
ただし、住宅ローンのような低金利(1%前後)の長期借入は別です。これは「借金」というより「投資との二択」になるので、NISAと並行して進めて問題ありません。
退職金・賞与のような大金は、一括投資?それとも積立?























理論的には、長期で見れば一括投資の方が積立より期待リターンが高いと言われます。早く市場に資金を入れた方が、複利の時間が長くなるからです。
しかし実際には、一括で投資した直後に20%下落して含み損で精神が削れるパターンがあります。これに耐えられず売ってしまうと、長期投資の意味がなくなります。
船員に現実的な落とし所はこれです。
- 少額(月3〜10万円)の自動積立をベースに置く
- 退職金や大きな賞与が入ったら、1年〜2年に分けて段階的にNISAへ移す
- 「来月暴落するかも」を予測しようとしない
精神的に耐えられる範囲で、機械的に淡々と入れる。これが最適解です。
まずやることは1つだけです























具体的な手順を整理するとこうです。
- SBI証券か楽天証券のサイトで口座開設(10分)
- マイナンバーカードと本人確認書類をアップロード
- 1〜2週間で口座開設完了
- NISA口座も同時申請(無料)
- 「つみたて投資枠」で eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を毎月積立設定
- あとは何もしない(チャートも見ない)
「何もしない」が一番大事です。短期の値動きで売り買いしないことが、長期投資で勝つ唯一のコツです。
暴落したときにやることは「積立を止めない」こと























NISAを始める前に、これだけは覚えておいてください。オルカンやS&P500でも、短期的には普通にマイナスになります。
口座を開いた直後に下がることもあります。半年、1年単位で含み損になることもあります。そこで焦って売ると、長期投資の意味がありません。
リーマンショック(2008年)でもコロナショック(2020年)でも、世界株式市場はその後回復してきました。もちろん将来も同じとは限りませんが、長期投資で短期の暴落に投げ売りしないことは、過去のデータが示してきた重要な原則です。
暴落時にやってはいけないこと
- 含み損を見てすぐ売る
- SNSの暴落煽りを見て積立を止める
- 一発逆転を狙って個別株やレバレッジ商品に乗り換える
- 生活費まで投資に突っ込む
長期投資で一番大事なのは、上がった時に喜ぶことではなく、下がった時にやめないことです。だからこそ、最初から無理のない金額で自動積立にしておくのが船員には向いています。
銀行窓口で勧められたら、まずここを見てください























銀行や保険会社の商品が全部悪いわけではありません。ただし、何も分からない状態で窓口のおすすめをそのまま買うのは危険です。
筆者の身近では銀行員にカモられた船員はあまり聞きませんが、これは「最初からネット証券を選んだ層」だからです。逆に、まとまった給料や退職金を持っている船員ほど、銀行や保険外交員のターゲットになりやすい構造があります。
特に注意すべきは、外貨建て一時払い保険、毎月分配型投信、変額保険など。これらは見た目のリターンが派手ですが、手数料・為替リスク・解約時のペナルティが重く、長期で持っても割に合わないケースが多いです。
契約前に必ず見るポイント
- 購入時手数料はいくらか
- 信託報酬・保険関係費用はいくらか
- 途中解約すると元本割れしないか
- 為替リスクがあるか
- 毎月分配型なら、分配金の原資は利益なのか元本なのか
- NISAで低コスト投信を買う場合と比べて、何が優れているのか
この質問に窓口担当者が明確に答えられない商品、または自分で答えられない商品は、いったん契約しない方が安全です。
ちなみに、ネット証券(SBI・楽天)でオルカンを買う場合、信託報酬は0.05%台。銀行窓口で売られる類似商品の100分の1のコストです。これだけで20年後の資産額が数百万円違います。
まとめ:船乗りという職業は、複利と相性がいい
冒頭の韓国チョンセの話に戻ります。
3.8万件超の被害が認定されたあの問題は、「個人が制度的に守られていない国で何が起きるか」の実例でした。日本人にはそんな罠はありません。代わりに、税制面で大きく優遇されていて、全世界の株式に分散投資できて、利益が非課税になるNISAがあります。元本が保証される制度ではありませんが、長期分散投資の枠組みとしてはかなり恵まれた仕組みです。
これを使うか使わないかは、完全に本人の選択です。ただし「使わない」を選んだ場合のコストは、20年後の老後資金として直撃します。
船乗りは、世界的に見ても投資をやるのに有利な条件が揃った職業です。乗船中の余剰資金、まとまった時間、退職金。これを銀行口座の中で眠らせるか、複利の力で増やすかは、今日の判断ひとつで変わります。
筆者は陸上時代に借金150万円を抱えていた人間です。船員業界に救われた側です。だからこそ、これから船員になる学生、今まさに若手として乗船している人に伝えたいのは、「この職業の構造的なお金の貯まりやすさを、ちゃんと自分の未来に変換してください」ということです。
この記事のポイント
- 日本のNISAは世界的に見て恵まれた制度(非課税無期限・年間360万円・全世界株式が買える)
- 船乗りは乗船中の出費が月1万円程度で済み、年間200万円貯めるポテンシャルがある
- 筆者は陸上時代に借金150万円。船員になって1年半で完済し、その後NISA開始
- NISAを始める前に生活防衛資金(生活費3〜6ヶ月分)を必ず残す
- 暴落時は何もしない。積立を止めないことが長期投資の最大のコツ
- 銀行窓口の商品は「契約前に手数料・解約条件・為替リスクを必ず確認」
※この記事は筆者の調査と一般的な金融知識をもとに構成しています。投資には元本割れリスクがあります。NISAは利益を保証する制度ではなく、運用成果は市場環境に左右されます。最終的な投資判断はご自身でお願いします。また、韓国チョンセの被害状況・制度詳細は時期や情報源により異なる場合があります。